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さようなら、小樽の街
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実家の母に、どうしても今すぐに帰りたいから迎えに来てと、泣きながら電話をした。
悠李の必要なものをバッグに詰めていると、潤一が帰ってきた。
「どうした? これから出かけるのか?」
「お世話になりました。実家に帰ります」
泣き顔を見られたくなくて、うつむきながら荷物を詰めた。
「どうしたんだよ、急に?」
「莉子ちゃんから聞きました。子どもが出来たこと。産んでもいいって言われたって。莉子ちゃんは産むつもりだそうです」
「………」
潤一が無表情のまま、無言で立ちすくんでいる。
「お義母さんにも、悠李は潤一さんの子どもではないことを伝えました」
「なんだって! どうしてそんなことまで言ったんだよっ!!」
顔色を変えて激怒した。
「知らないで悠李のこと可愛がってるお義母さんに申し訳なくて、最後に言えたからよかった」
悠李の衣類を紙袋に入れ、入りきれなかった衣類やおもちゃを段ボールに詰めた。
「彩矢、ちょっと待てよ。まだ別れるって決めたわけじゃないんだから」
私の決心は変わらないけれど、引き止めてもらえるだけでもありがたいと思った。
「莉子ちゃんと幸せになってください。潤一さんが別れないって言っても、お義母さんは絶対に許してくれませんから」
青ざめた潤一をみて、義母を説得するのは不可能であるように感じた。
スマホが鳴った。母からだった。
今、マンションの駐車場に着いたとの連絡だった。
「すぐに降りていくから、下で待っていて」とだけ言って、電話を切った。
「彩矢、悪かったよ。すぐに佐野のところへ行かせてやれば良かったって後悔してる」
潤一がやるせないようすで抱きしめた。
こうして抱きしめられることも最後なのだと思うと、あまりの淋しさに胸がつぶれそうになる。
「潤一さんのおかげで悠李が産めたから、それだけで感謝してる。それに短い間だったけど、夫婦になれて幸せだった」
そうだ、私は悠李を産むためだけに結婚してもらったのだ。
「彩矢……。ごめん、幸せにしてやれなくて」
悠李をベビーカーに乗せると、潤一が段ボールの荷物を持ってくれた。
エレベーターで一階まで下がるとエントランスの椅子に母が座って待っていた。
「彩矢、今度はいったい何があったの?」
母はまた問題ごとか、もうたくさん! と言わんばかりだ。
「ごめんなさい。帰ってから話すから」
「お義母さん、すみません」
潤一も決まりの悪い顔で頭をさげた。
マンションから一歩出ると、生暖かい風が悠李のサラサラの髪をなびかせた。
さようなら、潤一さん。
さようなら、小樽の街。
悠李の必要なものをバッグに詰めていると、潤一が帰ってきた。
「どうした? これから出かけるのか?」
「お世話になりました。実家に帰ります」
泣き顔を見られたくなくて、うつむきながら荷物を詰めた。
「どうしたんだよ、急に?」
「莉子ちゃんから聞きました。子どもが出来たこと。産んでもいいって言われたって。莉子ちゃんは産むつもりだそうです」
「………」
潤一が無表情のまま、無言で立ちすくんでいる。
「お義母さんにも、悠李は潤一さんの子どもではないことを伝えました」
「なんだって! どうしてそんなことまで言ったんだよっ!!」
顔色を変えて激怒した。
「知らないで悠李のこと可愛がってるお義母さんに申し訳なくて、最後に言えたからよかった」
悠李の衣類を紙袋に入れ、入りきれなかった衣類やおもちゃを段ボールに詰めた。
「彩矢、ちょっと待てよ。まだ別れるって決めたわけじゃないんだから」
私の決心は変わらないけれど、引き止めてもらえるだけでもありがたいと思った。
「莉子ちゃんと幸せになってください。潤一さんが別れないって言っても、お義母さんは絶対に許してくれませんから」
青ざめた潤一をみて、義母を説得するのは不可能であるように感じた。
スマホが鳴った。母からだった。
今、マンションの駐車場に着いたとの連絡だった。
「すぐに降りていくから、下で待っていて」とだけ言って、電話を切った。
「彩矢、悪かったよ。すぐに佐野のところへ行かせてやれば良かったって後悔してる」
潤一がやるせないようすで抱きしめた。
こうして抱きしめられることも最後なのだと思うと、あまりの淋しさに胸がつぶれそうになる。
「潤一さんのおかげで悠李が産めたから、それだけで感謝してる。それに短い間だったけど、夫婦になれて幸せだった」
そうだ、私は悠李を産むためだけに結婚してもらったのだ。
「彩矢……。ごめん、幸せにしてやれなくて」
悠李をベビーカーに乗せると、潤一が段ボールの荷物を持ってくれた。
エレベーターで一階まで下がるとエントランスの椅子に母が座って待っていた。
「彩矢、今度はいったい何があったの?」
母はまた問題ごとか、もうたくさん! と言わんばかりだ。
「ごめんなさい。帰ってから話すから」
「お義母さん、すみません」
潤一も決まりの悪い顔で頭をさげた。
マンションから一歩出ると、生暖かい風が悠李のサラサラの髪をなびかせた。
さようなら、潤一さん。
さようなら、小樽の街。
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