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有紀のお見舞い
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寒い夜に歩きまわったせいか、風邪を引いた。
翌朝は咽が痛く、悪寒がしたあと熱を測ると39・6℃もあった。
身体が燃えるように熱い。
母が解熱剤とアイスノンを持ってきてくれた。
心配して病院へ連れていこうとしたけれど、寝ていたいと言って断った。
このまま死んでしまえたなら、どんなにか楽で嬉しいことだろう。
こじらせて肺炎にでもなりたいくらいだ。
親だって自殺などされるよりは、病死のほうがまだマシであろう。
でも、病院などに行かなくても、風邪は三日でほぼ症状が消えた。
治らないのは鬱傾向だけだ。
気づけば死ぬことばかり考えている。
前向きになど、どうしたらなれるというのだろう。
夕方、スマホを覗いてみると、有紀からLINEが届いていた。
佐野さんのことで無視され続けていたけれど、退職してからは時々心配して連絡をくれるようになった。
有紀はなんだかんだと言っても、結局は面倒見がよくて優しい。
朗らかで、いつでもまわりに明るさと笑いを提供することが大好きな女の子だ。
『風邪の方はよくなった? 薬局の谷さんから風邪薬を出してもらったから、これから届けに行くよ~ 』とのこと。
『もう治ったから、大丈夫。心配してくれてありがとう』
と、返信する。
『え~っ!! もう治ったの? 回復はやっ!』
今は有紀の明るさについていけない。
その明るさがうらやましく、ネガティブな性格の自分に嫌気がさす。
私は人に心配ばかりかけている。
ウトウトしていると階下から、ピンポーンと玄関のチャイムの音が聞こえた。
ドアをノックする音がして、母が部屋に入ってきた。
「彩矢、藤沢さんがお見舞いに来てくださったわよ」
もう治ったって言ったのに、有紀は相変わらずお節介だなぁ。
ルームウェアのまま降りていくと、ニコニコした有紀が玄関に立っていた。
「あっ、ほんとに治ってる~ 元気そうじゃん! ねぇ、ちょっとだけ外に出られない?」
「無理。ほんとにごめん」
煩わしく思って降りてきたけれど、ほがらかな有紀の笑顔になんとなく癒された。
「そっかぁ、残念。じゃあ、もう少し元気になった頃に来るから、それまでにちゃんと治しておいてよ」
「うん、ありがとう。ごめんね、わざわざバスで来てくれたの?」
「ううん、……佐野さんに乗せてきてもらったの」
有紀は少し戸惑ったようすで、遠慮がちに答えた。
「佐野さんに? そうなんだ。デート中に悪かったね」
「デートなんかじゃないよ。佐野さん……まだ彩矢が忘れられないみたい」
まるで私の気持ちを窺うかのように、上目遣いで見つめた。
「そ、そんなの嘘」
佐野さんは、忠告を聞かなかった私に呆れているはずだ。
「嘘じゃないよ、会って確かめたら。でも今日は無理なんでしょ。佐野さんにはまた出直して来いって言っておくね。ふふふっ」
「………」
「あっと、忘れてた。薬局でもらった風邪薬。それとコンビニで買ったデザートのおまけ付き! じゃあ、またね!」
おどけた顔をして、手を振りながら有紀は出ていった。
佐野さんが……。
佐野さんに会いたかった。
あの慈しむような目で見つめられたら、どんなに癒されることだろう。
あんなふうに傷つけておきながら、まだ頼ろうだなんて。
でも、会いたい。
佐野さんに……。
翌朝は咽が痛く、悪寒がしたあと熱を測ると39・6℃もあった。
身体が燃えるように熱い。
母が解熱剤とアイスノンを持ってきてくれた。
心配して病院へ連れていこうとしたけれど、寝ていたいと言って断った。
このまま死んでしまえたなら、どんなにか楽で嬉しいことだろう。
こじらせて肺炎にでもなりたいくらいだ。
親だって自殺などされるよりは、病死のほうがまだマシであろう。
でも、病院などに行かなくても、風邪は三日でほぼ症状が消えた。
治らないのは鬱傾向だけだ。
気づけば死ぬことばかり考えている。
前向きになど、どうしたらなれるというのだろう。
夕方、スマホを覗いてみると、有紀からLINEが届いていた。
佐野さんのことで無視され続けていたけれど、退職してからは時々心配して連絡をくれるようになった。
有紀はなんだかんだと言っても、結局は面倒見がよくて優しい。
朗らかで、いつでもまわりに明るさと笑いを提供することが大好きな女の子だ。
『風邪の方はよくなった? 薬局の谷さんから風邪薬を出してもらったから、これから届けに行くよ~ 』とのこと。
『もう治ったから、大丈夫。心配してくれてありがとう』
と、返信する。
『え~っ!! もう治ったの? 回復はやっ!』
今は有紀の明るさについていけない。
その明るさがうらやましく、ネガティブな性格の自分に嫌気がさす。
私は人に心配ばかりかけている。
ウトウトしていると階下から、ピンポーンと玄関のチャイムの音が聞こえた。
ドアをノックする音がして、母が部屋に入ってきた。
「彩矢、藤沢さんがお見舞いに来てくださったわよ」
もう治ったって言ったのに、有紀は相変わらずお節介だなぁ。
ルームウェアのまま降りていくと、ニコニコした有紀が玄関に立っていた。
「あっ、ほんとに治ってる~ 元気そうじゃん! ねぇ、ちょっとだけ外に出られない?」
「無理。ほんとにごめん」
煩わしく思って降りてきたけれど、ほがらかな有紀の笑顔になんとなく癒された。
「そっかぁ、残念。じゃあ、もう少し元気になった頃に来るから、それまでにちゃんと治しておいてよ」
「うん、ありがとう。ごめんね、わざわざバスで来てくれたの?」
「ううん、……佐野さんに乗せてきてもらったの」
有紀は少し戸惑ったようすで、遠慮がちに答えた。
「佐野さんに? そうなんだ。デート中に悪かったね」
「デートなんかじゃないよ。佐野さん……まだ彩矢が忘れられないみたい」
まるで私の気持ちを窺うかのように、上目遣いで見つめた。
「そ、そんなの嘘」
佐野さんは、忠告を聞かなかった私に呆れているはずだ。
「嘘じゃないよ、会って確かめたら。でも今日は無理なんでしょ。佐野さんにはまた出直して来いって言っておくね。ふふふっ」
「………」
「あっと、忘れてた。薬局でもらった風邪薬。それとコンビニで買ったデザートのおまけ付き! じゃあ、またね!」
おどけた顔をして、手を振りながら有紀は出ていった。
佐野さんが……。
佐野さんに会いたかった。
あの慈しむような目で見つめられたら、どんなに癒されることだろう。
あんなふうに傷つけておきながら、まだ頼ろうだなんて。
でも、会いたい。
佐野さんに……。
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