六華 snow crystal

なごみ

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潤一のリベンジ

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「彩矢!」
 
 
呼び止められて振り向くと、先生だった。


「今日はいっしょに帰るぞ」

 
不機嫌な顔で手首をつかまれた。


「今日はまっすぐ家に帰ります!」

 
冷たく見返して手をふりほどいた。

 
いくら関係がバレているからといって、院内で手をつなぐなんて何を考えているのか。


「話があるんだよ!」

 
また、手首を強くつかんだ。


「私はないです。離してください、離してったら!」

 
職員通用口を出て、駐車場まで強引に引っ張っていかれた。

 
駐車場に数人の職員がいて、一斉に注目を浴びる。


「やめてよ、離して!」


「いいから、早く乗れ!」

 
助手席のドアを開けて無理矢理押し込まれたために、ドアの入り口におもいっきり頭をぶつけた。


「痛い!」

 
謝りもせず、自分も運転席に座るとすぐに車を発進させた。


「話ってなんですか!」

 
ぶつけた頭をさすりながら先生をにらんだ。


「あとで話す」

 
あんなに慌てさせたのに病院を出てすぐ二百メートルあたりの路肩に車を止めた。

 
バックミラーばかり気にしている。


「何してるんですか?」


「だから後で話すって」


十五分もそこで何をするわけでもなく停車していたら、急に発進した。


「どこに行くんですか?」

 
返事もせずに、二車線の道路を追い越しをかけながら、スピードをあげていった。

 
何を考えているのかさっぱりわからないと思ったら、突然クラクションを鳴らした。

 
すぐ前を走っているのは佐野さんのレクサスだった。

 

車線を変更をして、佐野さんのレクサスにしばらく横付けしてから、無謀な追い越しをかけた。


佐野さんの車から急ブレーキの音が響いた。
 
 
横付けしているときに、驚いている佐野さんと目が合った。

 
先生の意図がやっと飲み込めた。

 
佐野さんに見せつけるために、わざと私を助手席に乗せたのだ。


猛烈に腹が立った。


やることがあまりにも陰湿すぎる。




「ふん、陰険な奴だ。そんなだから好きな女に逃げられるんだ、バカめ!」

 
自分の陰険を棚に上げて先生が薄笑いを浮かべた。

 
こんな冷酷な横顔を見たのは初めてだ。何も考えずに車に乗ってしまったことを深く後悔した。


「ひどい!」

 
うるんだ目で先生をにらみつけた。


「なんで俺をにらむんだ? 殴られたのは俺だぞ。なのになんで佐野の肩を持つんだ?」

 
イライラしたようすで先生は見返した。


「もう、降ろして! 自分で帰るから降ろして!」


「なに怒ってるんだよ、そんなに佐野がよかったのか? まだ付き合ってたのか!」


「先生とは違います! 私は二股なんてかけないわ、一緒にしないで!」


シートベルトをはずして、ドアロックを解除した。


「バカ、なにするんだ、危ないだろ!」


「じゃあ、早く降ろしてよっ!」


「彩矢……。杉下のことは本当に慰めようとしただけで、下心なんてなかったよ。それを佐野のバカが勝手に誤解して。なんで俺があんな奴に殴られないといけないんだ。彩矢は俺のことなんてどうでもいいんだな」


本当にシュンとしてしまったので、少しかわいそうな気もしてきた。

 
確かに一方的に殴られたのはかわいそうかも知れない。



 
結局、何も言えなくなり、そのままホテルに行った。

 

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