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大好きな莉子先輩
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ナースステーションへ戻る途中、一階から莉子先輩がスマホを見つめたまま階段を登って来た。
「あっ、莉子先輩! あれっ、今日も夜勤ですか?」
「うん、田島さん急用ができたからって替わってあげたの」
「わ~ やさしい~!」
「ううん、わたし夜勤のほうが好きなんだよね。日勤って人が多いじゃない。煩わしくてさ」
明るくておしゃべりな人気者でも、人間関係は難しいのだな。
「そうなんですか? 莉子先輩は誰とでも仲がよくて羨ましいと思ってたけど」
「そんなことないよ。わたし好き嫌いが激しいからさ。合わない人が一緒だと、めっちゃストレス溜まるから。北村沙織とか絶対一緒に仕事したくないし」
莉子先輩と沙織さんが犬猿の仲なのは誰でも知っている。理由はわからないけれど、以前夜勤の日につかみ合いの喧嘩をしていたことがあったらしい。
ナースステーションを通りかかった患者が気づいて止めに入ったとのことだ。
「彩矢さ、わたしのこと先輩って呼ぶのやめてくれないかな。なんかすごく歳取ってるような気にさせられるんだよね。莉子でいいから」
「でも、呼び捨てはちょっと……。莉子さんでもいいですか?」
「莉子さんより、莉子ちゃんがいいかな」
「わかりました。じゃあ莉子ちゃん!」
確かにそう呼んでみると、なんとなく莉子ちゃんが若返ったような気がした。
「そうだ、またコンサート行こうね」
「わ~ 行きたーい!!」
莉子ちゃんは韓国人アイドルグループの熱烈なファンなのだ。
私は莉子ちゃんほど熱烈とは言えないけれど、コンサートはとっても楽しい。
「チケット莉子が取っておくから」
「いつもありがとう! 莉子先輩じゃなくて、莉子ちゃん。夜勤頑張ってくださいね」
「うん、頑張るね。じゃあ、お疲れ~!」
手を振りながら莉子ちゃんは休憩室のほうへ消えて行った。
先輩と呼ぶなと言われたのはこれで二度目だから、本当に嫌だったんだな。
莉子ちゃんは今年二十五歳になると言っていたから、そういうことが気になるお年頃になったのかも知れない。
夜勤者に申し送りを済ませてロッカールームに向かっていると、藤沢有紀がドタドタ走って追いかけて来た。
「彩矢~! ねえ、ラーメン食べに行かない? 平岸にめっちゃ美味しいラーメン屋さんがあるんだって」
急いで追いかけてきたのか、鼻の頭に汗をかいていた。
有紀は看護学生のときからの同期。
ショートボブで可愛らしい顔立ちではあるけれど、かなりのポッチャリ系。
「ラーメンかぁ、うん、食べたい。でも平岸はちょっと遠すぎない?」
「大丈夫、放射線の佐野さんが車だしてくれるって。ねぇ、行こうよ。あと理学療法士の横田くんも行くんだけど、女はわたしだけだからさ」
佐野さんと横田くんなら二人とも話しやすいからいいな。
「うん、じゃあ、行く。ラーメン大好きだもん」
「やったー! じゃあ、佐野さんに伝えてくるね。佐野さん喜ぶよ~ 彩矢のこと可愛いって言ってたから」
有紀は冷やかすように言うと、またレントゲン室に向かってドタドタと走って行った。
同じ年なのに太っているせいか後ろ姿がおばさんぽく見えた。
「あっ、莉子先輩! あれっ、今日も夜勤ですか?」
「うん、田島さん急用ができたからって替わってあげたの」
「わ~ やさしい~!」
「ううん、わたし夜勤のほうが好きなんだよね。日勤って人が多いじゃない。煩わしくてさ」
明るくておしゃべりな人気者でも、人間関係は難しいのだな。
「そうなんですか? 莉子先輩は誰とでも仲がよくて羨ましいと思ってたけど」
「そんなことないよ。わたし好き嫌いが激しいからさ。合わない人が一緒だと、めっちゃストレス溜まるから。北村沙織とか絶対一緒に仕事したくないし」
莉子先輩と沙織さんが犬猿の仲なのは誰でも知っている。理由はわからないけれど、以前夜勤の日につかみ合いの喧嘩をしていたことがあったらしい。
ナースステーションを通りかかった患者が気づいて止めに入ったとのことだ。
「彩矢さ、わたしのこと先輩って呼ぶのやめてくれないかな。なんかすごく歳取ってるような気にさせられるんだよね。莉子でいいから」
「でも、呼び捨てはちょっと……。莉子さんでもいいですか?」
「莉子さんより、莉子ちゃんがいいかな」
「わかりました。じゃあ莉子ちゃん!」
確かにそう呼んでみると、なんとなく莉子ちゃんが若返ったような気がした。
「そうだ、またコンサート行こうね」
「わ~ 行きたーい!!」
莉子ちゃんは韓国人アイドルグループの熱烈なファンなのだ。
私は莉子ちゃんほど熱烈とは言えないけれど、コンサートはとっても楽しい。
「チケット莉子が取っておくから」
「いつもありがとう! 莉子先輩じゃなくて、莉子ちゃん。夜勤頑張ってくださいね」
「うん、頑張るね。じゃあ、お疲れ~!」
手を振りながら莉子ちゃんは休憩室のほうへ消えて行った。
先輩と呼ぶなと言われたのはこれで二度目だから、本当に嫌だったんだな。
莉子ちゃんは今年二十五歳になると言っていたから、そういうことが気になるお年頃になったのかも知れない。
夜勤者に申し送りを済ませてロッカールームに向かっていると、藤沢有紀がドタドタ走って追いかけて来た。
「彩矢~! ねえ、ラーメン食べに行かない? 平岸にめっちゃ美味しいラーメン屋さんがあるんだって」
急いで追いかけてきたのか、鼻の頭に汗をかいていた。
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「ラーメンかぁ、うん、食べたい。でも平岸はちょっと遠すぎない?」
「大丈夫、放射線の佐野さんが車だしてくれるって。ねぇ、行こうよ。あと理学療法士の横田くんも行くんだけど、女はわたしだけだからさ」
佐野さんと横田くんなら二人とも話しやすいからいいな。
「うん、じゃあ、行く。ラーメン大好きだもん」
「やったー! じゃあ、佐野さんに伝えてくるね。佐野さん喜ぶよ~ 彩矢のこと可愛いって言ってたから」
有紀は冷やかすように言うと、またレントゲン室に向かってドタドタと走って行った。
同じ年なのに太っているせいか後ろ姿がおばさんぽく見えた。
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