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熱い視線にときめいて
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職員通路を通って外へ出ると、雲ひとつない青空で、七月初旬の北海道の風はひときわ爽やかで気持ちがよかった。
「わぁ~ いいお天気! 帰って寝るの本当にもったいない」
莉子先輩はまだ諦めきれないご様子。
駐車場入口から濃紺のBMWが入って来た。
「あ~ 松田先生遅刻だ!」
莉子先輩がバックしながら駐車しているBMWをとがめるように見つめた。
昨夜の急患は緊急オペになり、松田医師が帰ったのは確か明け方だった。
松田潤一医師が車から降りて、ニタニタしながら職員通用口に向かって歩いて来た。
学生時代サッカーをやっていたというだけあって、がっちりとした体型に、身長は177~8cmといったところか?
コットンパンツにポロシャツという、飾り気のないスタイル。
おしゃれにはあまり興味がなさそう。
伸びたら仕方なく床屋に行くといった感じの髪も、洗いっぱなしに見える。
まだ、二十八歳の若い医師だ。
「おはようございます!」
「よっ、お疲れさん」
「先生、今日は十時半から木村辰雄さんのオペですよ~ 大丈夫ですかぁ?」
莉子先輩が口をとがらせて言うと、
「わかってるよ。いいからお前らは早く帰って寝ろ。じゃあな」
そう言いながら莉子先輩の肩を軽く揉んだ。
すれ違うとき、莉子先輩の後ろにいた私と目が合った。
とても熱い視線のように感じられたのは気のせい?
松田先生とは最近よく目が合って、その度にドギマギさせられる。
無言ながらもとても情熱的なメッセージが込められているような気がして……。
「まったくもう、先生はすぐさわってくるからね。肩揉んだり髪いじったりさ。気安くさわるなって」
莉子先輩はそう言いながらも、なんとなく嬉しそう。
松田先生はなぜか憎めないタイプだから。
気が短くて怒ると怖いけれど、ナース達からは意外と人気がある。
だけど残念ながらすでに結婚していて、二歳になる男の子がいる。
奥様はびっくりするような美人だ。
以前、病院の売店で子供にお菓子を買ってあげているところを偶然みかけたことがあった。
その時一緒にいた莉子先輩がこう言っていたのを思い出す。
「あの人、松田先生の奥さんだよ。医者の奥さんってさ、やっぱりみんな美人だよね」
確かに、簡単にはお目にかかれないような美しい人だった。
性格までいいのか、宗教画のモデルのような気品まで感じさせた。
思わず見とれていたら、お菓子を買い終えた奥様が顔をあげたので目が合ってしまい、慌てて視線をそらせた。
「どんなに変な医者でもさ、奥さんは必ず美人なんだよ。なんかムカつくと思わない?」
そんなことを言っていた莉子先輩だって、アイドルになれそうなくらい、可愛らしい顔立ちをしている。
田中莉子先輩は私より二歳年上で、緊急な重篤患者にもすばやく適切な対応ができる憧れの先輩だ。
院内での人望もあり、若いながらもリーダー的存在でとても頼りになる。
なので出来ることなら莉子先輩にだけは嫌われたくない。
「じゃあ、彩矢またね。お疲れ~!」
「お疲れ様でした~!」
莉子先輩と駐車場で別れた。
アパートで一人暮らしをしている莉子先輩は、自分の軽自動車を運転して帰って行った。
「わぁ~ いいお天気! 帰って寝るの本当にもったいない」
莉子先輩はまだ諦めきれないご様子。
駐車場入口から濃紺のBMWが入って来た。
「あ~ 松田先生遅刻だ!」
莉子先輩がバックしながら駐車しているBMWをとがめるように見つめた。
昨夜の急患は緊急オペになり、松田医師が帰ったのは確か明け方だった。
松田潤一医師が車から降りて、ニタニタしながら職員通用口に向かって歩いて来た。
学生時代サッカーをやっていたというだけあって、がっちりとした体型に、身長は177~8cmといったところか?
コットンパンツにポロシャツという、飾り気のないスタイル。
おしゃれにはあまり興味がなさそう。
伸びたら仕方なく床屋に行くといった感じの髪も、洗いっぱなしに見える。
まだ、二十八歳の若い医師だ。
「おはようございます!」
「よっ、お疲れさん」
「先生、今日は十時半から木村辰雄さんのオペですよ~ 大丈夫ですかぁ?」
莉子先輩が口をとがらせて言うと、
「わかってるよ。いいからお前らは早く帰って寝ろ。じゃあな」
そう言いながら莉子先輩の肩を軽く揉んだ。
すれ違うとき、莉子先輩の後ろにいた私と目が合った。
とても熱い視線のように感じられたのは気のせい?
松田先生とは最近よく目が合って、その度にドギマギさせられる。
無言ながらもとても情熱的なメッセージが込められているような気がして……。
「まったくもう、先生はすぐさわってくるからね。肩揉んだり髪いじったりさ。気安くさわるなって」
莉子先輩はそう言いながらも、なんとなく嬉しそう。
松田先生はなぜか憎めないタイプだから。
気が短くて怒ると怖いけれど、ナース達からは意外と人気がある。
だけど残念ながらすでに結婚していて、二歳になる男の子がいる。
奥様はびっくりするような美人だ。
以前、病院の売店で子供にお菓子を買ってあげているところを偶然みかけたことがあった。
その時一緒にいた莉子先輩がこう言っていたのを思い出す。
「あの人、松田先生の奥さんだよ。医者の奥さんってさ、やっぱりみんな美人だよね」
確かに、簡単にはお目にかかれないような美しい人だった。
性格までいいのか、宗教画のモデルのような気品まで感じさせた。
思わず見とれていたら、お菓子を買い終えた奥様が顔をあげたので目が合ってしまい、慌てて視線をそらせた。
「どんなに変な医者でもさ、奥さんは必ず美人なんだよ。なんかムカつくと思わない?」
そんなことを言っていた莉子先輩だって、アイドルになれそうなくらい、可愛らしい顔立ちをしている。
田中莉子先輩は私より二歳年上で、緊急な重篤患者にもすばやく適切な対応ができる憧れの先輩だ。
院内での人望もあり、若いながらもリーダー的存在でとても頼りになる。
なので出来ることなら莉子先輩にだけは嫌われたくない。
「じゃあ、彩矢またね。お疲れ~!」
「お疲れ様でした~!」
莉子先輩と駐車場で別れた。
アパートで一人暮らしをしている莉子先輩は、自分の軽自動車を運転して帰って行った。
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