Haruの星を探して

なごみ

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亡くなった親友

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「あ、、あのね、さっきの話だけど、智紀は結局なにが言いたかったの?」


「さっきの話って?  輪廻転成のことかい?」


「ううん、その話はもういいわ。次の段階に進むって話よ。私たちの経験や努力は死んでも無駄にならないって話」


「ああ、そのことか………」


無言のまま星空を見つめる智紀の目に、涙が光ってみえた。


「智紀……  もしかして、ハル君のこと考えてた?」


智紀は少しうつむくと、指でそっと目尻をぬぐった。


「鋭いな、美月は。どうしてわかった?」


「私もいま思い出してたから」


「………そうか」



ハル君は3ヶ月ほど前、交通事故で突然この世を去った。


智紀の幼なじみで、小学校から高校までずっと同じだったという。



「ごめん……。邪魔しちゃって」


「いや、いいんだ。美月と一緒にここに来られて良かったよ。宇宙って観ているだけで本当に癒されるな。ほら、猫だと星空を見あげてこんな気持ちにはなれないだろう」


「まぁ、確かにそうかもね」


「ハルはさ……」



「えっ?」


「ハルはもう次の段階に進んで頑張ってるよ」



「………別の星で?」


「どんなところかは分からないけど、いまも生きてるよ。ここではちょっと生き急ぎすぎたけど、アイツは人として十分に人生をクリア出来ていたから。もちろん、やり残したこともあっただろうけどね」


ハル君は日本を代表する陸上短距離のトップアスリートの一人だった。


並々ならぬ努力と精神力で、常に高みを目指していた。


「そうね、ハル君、本当にステキな人だった。智紀のおかげで何度か一緒に食事させてもらったけど、緊張でガチガチだった私をいつも笑顔で気遣ってくれて」


あの時のオドオドしていた自分を思い出し、恥ずかしくなる。


「心配だったなぁ。美月がハルに取られちゃうんじゃないかと思って」


「フフフッ、私はファンのままで良かったの。ハル君はスターだから住む世界が違うもの。遠くから見つめているだけで十分幸せだった。智紀のおかげで、とってもいい思い出がもらえたよ」


「残された僕たちの喪失感は大きいけどね。だけど、あいつは今また歩き始めてるよ。今度は生き急がないでゆっくり進めよって言いたいな」


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