妹の彼が好き

突然の来訪

お別れしたのではなかったのか？


松岡くんの気のむいた時だけ、都合よく相手をさせられているのだろうか？


心配になって部屋を飛び出し、階下へ耳をそばだてる。


「駿くん、どうしたの？ 」


美姫の元気のない声が聞こえた。


「美姫ちゃん、ごめん。こんな時間に悪いとは思ったけど、さっきの話どうしても納得できなくて」


松岡くんの声も力なく、弱々しい。


「・・・外で話そう。ここだと話しにくいし」


美姫がヒソヒソと言って玄関のドアを開ける音がした。


「・・・うん」


ふたりの後をつけるわけにもいかず、読みかけのミステリーをまた手に取ってみたものの、全く集中できない。



なぜ松岡くんはやって来たのだろう？


松岡くんは納得できないって言ってたけれど、フラれたのは美姫のほうではなかったのか？



一時間ほどして美姫が帰って来た。


一体どんな話し合いをして来たのだろう。


気になっていても立ってもいられず、肩を落として静かに階段をあがってきた美姫に問いかけた。


「美姫ちゃん、まだお別れしてなかったの？  松岡くん、何しに来たの？」


「・・・駿くんね、まだ別れたくないって」


やはり、そうだったのか。


「早希ちゃんの部屋で話してもいい？」


そう言って美姫は私の部屋へ入ると、ベッドに倒れこんだ。


「美姫もうどうしていいのかわかんない！」


ベッドに伏せたまま美姫が呟いた。


「美姫ちゃんはどうして松岡くんと別れたくなっちゃったんだっけ？」


美姫はフラれたとばかり思っていたので、別れる理由が全くわからなくなった。


「だから、駿くんと美姫は違いすぎるの」


「でも、お互いにまだ好きなんでしょう？  違いすぎてなにが嫌なわけ？」


「美姫が楽しいって思うことと、駿くんが楽しいって思うことは全然違うの」


「どんなカップルだってそういうことがあるんじゃない？  同じ趣味じゃないとダメだっていうの？ その方がおかしいでしょ」