いつだって見られている

なごみ

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40分ほどして、ロードサービスから電話が来た。


あと、10分ほどで到着できるとのことだ。


またスコップを握り、雪をかく。


10分が経過して、ロードサービスの大きな青い車が見えて来た。


汗をぬぐい、雪かきをする。


ドアが開いてロードサービスの人が降りて来た。


「すみません、お願いします」


 雪かきをやめて、挨拶をした。


「ありゃあ~、落っこちちゃったんだ。これは上げるの大変だなぁ」


「雪で後ろがよく見えなくてバックしたらこんなことになっちゃって」


「一面真っ白だもんなぁ、あれっ?  車のエンジンなんでかけてんですか?」


ロードサービスの男性に不審な目で見られ、顔が少し引きつった。


「えっ?  あ、あぁ、中に義姉が乗っているものですから」


穏やかな笑顔をみせ、平然としたようすで答えた。


ロードサービスの男性の顔が凍りついた。


「なんだって!?  ダメじゃないですか!  危ないですよ」


そう言って車のドアを開けた。


「大丈夫ですか!!」


義姉に声をかけたが、返事がなかった。


「大変だ!  一酸化炭素中毒だ、すぐに救急車よばないと」


車のエンジンを止めて、四つのドアをすべて全開にした。


眠っているように見える義姉を見て、震えが止まらなくなる。


「ご、ごめんなさい、私、雪かきに一生懸命になっていて、全然気がつかなくて」


オロオロと涙声であやまる。


「あんた、逆だよ。前じゃなくて後ろのマフラーの周りの雪をかくんだよっ!」


「義姉さん、義姉さん!」


義姉のそばに行き、肩をゆすってみるがピクリともしない。


もう絶命しているのだろうか?


「さわらない方がいいんじゃないですか?  いま救急車が来ますから。あ、息してるんだっけ?   心臓マッサージしなきゃいけないのか」


男性は慌てて後部座席に眠る義姉の容態を確かめた。


ロードサービスの男性が義姉を後部座席のシートに倒して、心臓マッサージを開始した。



ほどなくして、遠くから救急車のサイレンが聞こえて来た。





***


義姉はAEDと心臓マッサージを受けながら、救急車で病院へ搬送されたが、帰らぬ人となった。


一応、検死もされたようだが、死因はもちろん一酸化炭素中毒だ。


なんの疑いも持たれずに、計画的殺人はうまくいった。


完全犯罪など簡単ではないか。


そんな才能がある自分に恐ろしさを感じる。


私は無知で愚かで不注意な主婦ということになったが、当然のこと罪には問われなかった。



不慮の事故である。






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