いつだって見られている

なごみ

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見られていたなんて

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「大変な事情なのはわかりますけど、うちだってこれから日菜の大学受験だってありますし、余裕なんてないんです。絶対に貸せません!」


  あらかじめ予想でもしていたかのように、義姉の和歌子はなにを言われても落胆も見せなければ、動じるようすもない。


「余裕あるじゃないの。お義母さんから予想外の遺産があったって貴之が喜んでいたわ」


「…………」


 夫の貴之は何故こうまでして姉を助けたがるのだろう。まるで姉に認められることを生きがいにでもしているかのように。


「うちにどんなに余裕があったとしても、貸したお金を返す気持ちのない人にお金は貸せないわ。貸して欲しいのなら、以前に貸した100万円をまず返してからにしてください!」


そう言って席を立ちキッチンへ向かった。シンクに洗剤をかけ、スポンジで丁寧に磨く。


もう、話すことなどない。さっさと帰って欲しいという意思表示だ。


あきらめの悪い義姉が、いつの間にか隣に立っていた。


「清美さんって、意外と大胆よね~」


義姉が意味深なことを耳元で囁き、下から覗き込んで笑った。


 自分のほおが引き攣り、狼狽してしまったのを感じた。


「な、なにがです?  おかしなこと言うのやめてください!」


 思わず興奮して叫んでしまった。


「プッ、清美さんってすぐに顔にでるのよね。クスクスッ」


  義姉はなにが言いたいのだろう。


 「わたしね、、見ちゃったの」


  笑みを絶やさずに、冷たく見返す義姉のその言葉に戦慄を覚えた。


誰にも見られてなどいないはずだ。


これは罠だ、そうに違いない。


だけど、自分の顔からどんどん血の気が失せていくのがわかった。


「な、なにを見たっていうんです!  変なこと言わないで!」


  「じゃあ、どうしてそんなに動揺しているの?  嘘つけないのよね、清美さんって。クスクスッ」


「だから、一体何を見たっていうんです?」


「あなたの裏の顔よ!  しおらしい顔して本当にやるもんだわね。貴之が知ったらびっくり仰天よ!」


 義姉の自信に満ちた顔を見て、震えが止まらなくなる。


 不覚にも泡のついたスポンジを握りしめたまま、その場にうずくまってしまった。


「清美さん、大丈夫?   そんなにおびえることないわよ。私だって可愛い弟の家庭を壊すようなことしたくないもの。だからこれは二人だけの秘密。日菜ちゃんと健太くんにだって、こんなことが知れたら大変よ」


 だから義姉はあの時、巻いていたスカーフに手を伸ばしたのだろうか?絞めた首の痕を確認するために。











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