デザイナーベビー

なごみ

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子育ての不安

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人見知りをしない瑠奈は、ここの看護師さんたちからも可愛がられていた。


ナースステーション横の休憩室ではしゃいで遊ぶ瑠奈を見つめながら、日頃の不安を高木に打ち明けた。


「お勉強もバイオリンの練習もちっともしてくれなくて……。才能ある子なはずなのに、わたしの育て方が悪いからでしょうか?  なんだか自信なくしちゃって」


「バイオリニストの子だからって、必ずバイオリンが好きになるってわけもないでしょう。本人が興味のあることをさせてあげたらいいんじゃないかな。だけど不思議なほど紗良さんに似てるね」


「一緒に暮らしていると性格まで似るものでしょうか?  まるで子供の頃の自分を見ているみたいで、歯痒くて嫌になります」


「紗良さんはステキな女性ですよ。もっと自信を持たなきゃ。あまり子供に理想を押し付けないで。瑠奈ちゃんが幸せになれたらそれでいいじゃないですか。幸せになるために生まれて来たんだから」


幸せになるために………


高木はそんな風に慰めてくれたけれど。


素晴らしいDNAを持つ瑠奈を、平凡な娘には育てたくなかった。


何の取り柄もない、ありきたりな人生を送るなんて。


クリニックの帰り道、手をつなぎながら瑠奈に聞いてみた。


「ねぇ、瑠奈、バイオリンはやめてピアノを習ってみようか?」


本人に決めさせたら頑張れるかも知れない。


「うん!  ピアノがいい!!  瑠奈、ずっとピアノが弾きたかったの!」


飽きっぽく、新しいもの好きの瑠奈は、この提案にすぐに飛びついた。


高額なピアノを購入して、瑠奈が本当にやる気を出してくれるのかは、甚《はなは》だ疑問だった。


だけど、なにに向いてるのかなんて、やってみなければ分からないのだ。


瑠奈はまだ五歳だ。諦めるなんて早過ぎる。


そんな風に思いなおしては、希望を捨てずに沢山の習い事に挑戦させてみたけれど。


瑠奈が夢中になれるものはひとつもなかった。


興味を持ち続けられたのは、アニメとお洒落だけ。


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