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待望の我が子
しおりを挟む不妊治療への意欲を失いつつも、少しも諦めきれず、失意のどん底にいたわたしに掛かってきた一本の電話。
それが高木Drからの里親の依頼だった。
血の繋がっていない子を愛せるだろうか。
子育ては大変だし、お金もかかる。
不安は尽きなかったが、高木医師から見るだけでもと言われ、その誘惑に勝てなかった。
不妊治療で散々な苦労を見てきた夫は、わたしの好きなようにしていいと、思いもよらないほどの寛容さを示してくれた。
夫の了解を得ているいま、ためらう理由など何もなかった。
この子を自分の子として育ててみよう。
ふさぎ込んでいたので、ずっと外出していなかった。ペタンコのお腹は家族以外の知人に見られていない。
両親と義父母を騙すことはできないけれど、他の人にはわたしが産んだということにしておきたかった。
この子の誕生日は、三ヶ月前の三月二十三日。
名前は西野瑠奈《にしの るな》。
みめ麗しい女の子だけあってか、夫もかなり気に入ったようで、実子のように可愛がってくれる。
瑞季とはあの日に訪問して以来、連絡を取っていないから、一年近く会ってなかった。
梨々香ちゃんも一歳を過ぎて大きくなっただろうな。
未だに泣きわめいて手のかかる子なのだろうか。
ミルクをたっぷりと飲んだ瑠奈は、ベビーベッドの上でガラガラを振りながらケタケタ笑っている。
「瑠奈ちゃん、あなたは今日もいい子ちゃんねぇ」
時計を見ると午前十時になろうとしていた。
もうすぐ瑞季が梨々香ちゃんを連れてやって来る。
瑠奈を見て、なんと思うだろう。
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