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出生の秘密
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「この子のご両親はどんな方?」
こんな可愛い赤ちゃんを手放すなんて、どんな理由があったというのだろう。
「大きな声では言えませんが、父親はエリート官僚です。母親は世界的にも有名な美人バイオリニストでして、いわゆる道ならぬ恋ってヤツです。本当は素性、明かせないんですよ。今の話、内緒にしてくださいね」
見た目が美しいだけじゃなく、素晴らしいDNAを受け継いでいる子。
会ってまだ五分も経っていないというのに、もうこの子のいない生活など考えられなくなっていた。
この子はもう、わたしのものよ。
世の中、上手くいかないものだ。
多額の不妊治療費を支払って、子供を得ようと必死の女もいれば、こんな風にいとも簡単に妊娠、出産して、せっかく授かった子をサッサと里子に出す女もいる。
「その方、自分で育てようとして産んだのではなかったのでしょうか?」
「彼女は堕ろそうとしてこの病院へ来ました。説得して産んでもらったんです。僕が育てるので産んで欲しいってね」
えっ、先生が?
「高木先生が? どうしてですか? 先生には奥様もお子さんもいらっしゃるのに」
「僕、彼女の大ファンなんですよ。よくコンサートも聴きに行ってました。そんな彼女が子どもを堕ろすなんて、なんだか凄く勿体ない気がして……」
世界的に有名な美人バイオリニスト?
数名のバイオリニストの顔が浮かんだけれど。
「先生が憧れていた女性の子なのですね。じゃあ、なぜわたしに?」
「妻にどうしても無理と言われましてね。僕ひとりで育てられるわけもないんで諦めました。仕方ないです。紗良さんなら、ちゃんと育ててくれる気がして」
「そうでしたか。そんな事情が。でも、素晴らしい才能を持ったご両親から生まれた子なんですね」
頭脳明晰な父親と、美貌のバイオリニストである母親。
「そうですよ。まるでデザイナーベビーのようでしょ」
「デザイナーベビー?」
「遺伝子を操作してデザインされた子供ですよ。病気などの悪い遺伝子は排除して、誰もが羨むような容姿と能力を備えた理想の子どもです。承認されてないので今はまだ作れませんけどね」
……デザイナーベビー。
科学技術の目覚ましい進歩は、この先どこまで進んで、どこまで許されるのだろう。
こんな可愛い赤ちゃんを手放すなんて、どんな理由があったというのだろう。
「大きな声では言えませんが、父親はエリート官僚です。母親は世界的にも有名な美人バイオリニストでして、いわゆる道ならぬ恋ってヤツです。本当は素性、明かせないんですよ。今の話、内緒にしてくださいね」
見た目が美しいだけじゃなく、素晴らしいDNAを受け継いでいる子。
会ってまだ五分も経っていないというのに、もうこの子のいない生活など考えられなくなっていた。
この子はもう、わたしのものよ。
世の中、上手くいかないものだ。
多額の不妊治療費を支払って、子供を得ようと必死の女もいれば、こんな風にいとも簡単に妊娠、出産して、せっかく授かった子をサッサと里子に出す女もいる。
「その方、自分で育てようとして産んだのではなかったのでしょうか?」
「彼女は堕ろそうとしてこの病院へ来ました。説得して産んでもらったんです。僕が育てるので産んで欲しいってね」
えっ、先生が?
「高木先生が? どうしてですか? 先生には奥様もお子さんもいらっしゃるのに」
「僕、彼女の大ファンなんですよ。よくコンサートも聴きに行ってました。そんな彼女が子どもを堕ろすなんて、なんだか凄く勿体ない気がして……」
世界的に有名な美人バイオリニスト?
数名のバイオリニストの顔が浮かんだけれど。
「先生が憧れていた女性の子なのですね。じゃあ、なぜわたしに?」
「妻にどうしても無理と言われましてね。僕ひとりで育てられるわけもないんで諦めました。仕方ないです。紗良さんなら、ちゃんと育ててくれる気がして」
「そうでしたか。そんな事情が。でも、素晴らしい才能を持ったご両親から生まれた子なんですね」
頭脳明晰な父親と、美貌のバイオリニストである母親。
「そうですよ。まるでデザイナーベビーのようでしょ」
「デザイナーベビー?」
「遺伝子を操作してデザインされた子供ですよ。病気などの悪い遺伝子は排除して、誰もが羨むような容姿と能力を備えた理想の子どもです。承認されてないので今はまだ作れませんけどね」
……デザイナーベビー。
科学技術の目覚ましい進歩は、この先どこまで進んで、どこまで許されるのだろう。
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