六華 snow crystal 3

なごみ

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ママ友が出来て

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悠李は朝ごはんを済ませると、公園へ行きたがる。


公園デビューに失敗したといっても、子供はそんなことを気にしていないし、理解してもいない。


自分の行きたいところへ行き、遊びたい遊具で遊ぶ。そして、やはり子供のたくさんいるところで一緒に遊びたがる。


なので、ママ達の輪の中には嫌でも入らざるを得なくなる。


悠李はブランコに飽きると、人の集まっているお砂場へ走っていった。


「こ、こんにちは」


雪花を抱っこして、雑談しているママ達に挨拶をした。


「こんにちは~」


にこやかに挨拶は返してくれるけれど、また親しい人たちとの会話に戻る。


中々、お話の輪の中には入れてもらえず、しゃがみこんで悠李のお砂遊びを手伝った。





今日は女の子が多く、男の子は悠李の他に一人だけだった。


「いっしょにあそぼう」


男の子が悠李に話しかけた。


「いいよ。サッカーする?」


悠李が男の子を誘った。


「サッカー?   いいよ!」


よくわからないといった顔をしながらも、ニコニコと愛嬌のあるかわいい子だ。


「ママ、ボールちょうだい!」


悠李は持ってきたボールを下において、蹴った。


男の子はよくわかっていないようで、手を使ってボールを拾った。



「けるんだよ~」


男の子はボールを手でほうり投げた。


悠李も特に気にせず、ボールを追いかけてつかみ、ほうり投げた。


二人で順番にボールの投げっこをして楽しんでいた。


こんな風に身体を使って、お友達と思いっきり遊んでいる姿を見ると、とても安心する。


悠李を公園へ連れて来て、ちゃんと楽しませることが出来たのだから。


疲れるほど遊んだら、子供は満足する。今日の大変な仕事をひとつ、やり遂げたような気持ちになれる。



「おうちは公園から近いんですか?  」


男の子のママと思われる人が話しかけて来た。長い髪を素敵にアップしている都会的な美人だ。スレンダーな身体にボーダーシャツと白のコットンパンツがよく似合っていた。


「あ、はい、すぐそこのマンションです」


「あら、そうなの?  うちと同じ。お子さんのお名前なんて言うんですか?」


「悠李です。九月で三歳です」


「うちの子も今年、三歳よ。大翔って言うの。同じマンションなんて嬉しいわぁ、今度遊びに来ない?  雨の日なんかは家で相手をしてあげるの大変でしょ。悠李くんだっけ?    遊びに連れて来て」


「ありがとうございます。三月に琴似へ引っ越して来たばかりで、お友達がいなくて。誘っていただいて嬉しいです」



子供を介して、ママ達はこうしてお友達になっていく。どこのママだって子供にお友達は必要だから。


それでも、どんな母親なのかはとても重要だ。子供同士の気が合っていても、母親が合わないと誘ってはもらえない。


お昼を過ぎてママ達は子供を連れて帰って行った。


大翔くんのママが、一緒に帰らない?と誘ってくれた。悠李も大翔くんと一緒に帰ろうとしていたけれど、引き止めた。


「昼寝をしてくれないので、もう少し遊ばせてから帰ります」



佐野さんは今日も来てくれるだろうか。


悠李のためじゃなく、私が逢いたいのではないのか。


そう思って後ろめたさを感じる。


前妻の花蓮さんをあんな目に合わせておいて……。なにも反省などしていないのだ。


有紀を裏切っている。


だけど、だけど、秋までだから、許して。


あと、三ヶ月でアメリカへ行かなければいけないのだから。











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