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すすり泣く声

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「ギャアアアア!」

 俺は城の玉座の間の入り口を守る魔物を一刀で切り伏せた。
 わんさかと俺に襲い掛かってきた魔物達は、全て屍に変えた。
 もう他の魔物達が寄ってくる気配はない。

 おそらく、残る魔物は・・・この城のボスであるインキュバスだけだろう。

 魔王四天王の最後の一人であるインキュバスは、男性型の淫魔だ。
 その力は女を一瞬で魅了して精と生命力を奪い、時には男さえも毒牙にかけるのだという。

 だが、俺は状態異常には強い耐性があるし、男と寝る趣味もない。

 だから、正直そんなに戦いは苦労しないと思う。

 城の魔物達も弱かったし、俺はこれまでに魔王四天王を3人も倒してきているんだ。
 なんとかなるだろう。


 そう思って、玉座の間の入り口を開けた。


・・・


 入り口を開けた時に狙われるかも、と思い警戒していたが、どうやら攻撃はないようだ。

 俺は中に入った。しかし、魔物姿は一匹も見当たらない。

 もしかしたら、インキュバスは既に逃げてしまったのかも・・・


 そんなことを考えていたら、何か物音が聞こえた。


「なんだ?」


 耳を凝らしてみると・・・どうやら誰かがすすり泣く声のようだ。

 声は玉座の間の奥・・・の更に奥から聞こえる気がする。

 俺は慎重に奥まで進み、壁際を調べた・・・すると。


「ここ、隠し通路があるぞ」


 奥の壁の一角が不自然にずれており、そこを調べたところ、壁が回転したのだ。

 通路が見えたことで、すすり泣く声もよりはっきりと聞こえるようになった。

 どうやら、この奥に声の主がいるらしい。


 俺はさらに慎重に通路を進んでいった。


・・・


 進んでいった先には、部屋があった。

 そこには大き目のベッドや机や椅子などがおいてあった。
 そして、そのベッドの上に、声の主がいたのだった。

「ひっく・・ひっく・・ひっく・・・」

 それは女の子だった。
 年は10歳くらいだろうか。栗色のロングヘア―で囚人服のようなものを着ている。
 その女の子は俺の方を見ながらしゃくりあげている。

 ・・・もしかしたら、インキュバスが連れ去ってきた女の子をここに監禁していたのかもしれない。

 そう思った俺は、女の子に優しく話しかけた。

「助けにきたよ。お兄ちゃんと一緒に帰ろう」

 だが、女の子はしゃくりあげるばかりで、まったくベッドから離れようとしなかった。

 ショックで動けないのかもしれない。
 近くまでいってみるか。

 俺は女の子が怖がらないように少しずつ話かけながら近づいていった。

 そして、俺がベッドに身を乗り出す頃には、女の子のすすり泣きは収まっていた。

 ホッとする俺に、女の子が聞いてきた。

「お兄ちゃんは勇者なの?」
「そうだよ。君を助けに来たんだ」
「本当!?」
「ああ、だから一緒に帰ろう」

 満面の笑みで女の子は喜んだ。
 よかった。これで一緒に連れて帰れそうだな。
 そう思った俺に、さらに女の子は話しかけてきた。

「勇者のお兄ちゃん!目をつぶって!」
「え?どうしたんだい?」
「お兄ちゃんにお礼をしてあげる!」
「わかったよ、ふふ」

 たぶん、ほっぺにキスでもしようとしてるんだろう。
 随分可愛らしいもんだな。

 ほっこりした俺は、女の子の言う通りに目を瞑った。

 そして・・・

ちゅうううう

「!?」

 まさかの、唇へのキス!
 思わず俺はビクっとしてしまう。
 この子、ませてるなぁ・・・

 そんな驚くべき行動を見せた彼女は、更に驚くべき行動をとった。

にゅる

「!?」

 なんと、俺の口をこじ開けて舌を入れてきたんだ。
 これは流石に予想外だった。
 唇と唇の軽いキスだと思ってたのに・・・最近の女の子は進みすぎじゃないのか!?

 正直止めようとしたが、もしかしたらショックでこういう行動を取っている可能性もある。
 俺が無理やり引きはがしたら、また泣いてしまうかも・・・

 そう思ったら、俺は止めることができなかった。
 とりあえず、女の子が満足するまで、キスをさせてやろう。

 そう思ったんだ。


 ・・・その結果、取り返しのつかないことになるとも知らずに。
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