愛の籠ー羽根を失った小鳥ー

第一章

平凡な暮らし

証拠品としてそれを保管する事も考えたけれど、部屋に残しておくのも気味が悪く、達筆の文字から目を逸らし、手紙を手の中でグシャリと握り潰す。

一度、様子を見てみよう。

私の名前が書いてある以上、間違いでは無さそうだし、向こうから動きがあればすぐに警察に行けるようにしないと…。





「…緋鞠ー！京きょうくんが来てるわよー！」

「っ！、はーい！」






そう決心したと同時にお母さんから声が掛かり、ビックリした猫のように飛び上がる。

それから部屋から飛び出し、転げ落ちそうな勢いで階段を駆け下りた。

何故なら、その名前を聞いたから。






「京くん！！！！」

「おっ、と…っ、緋鞠…っ、相変わらず凄い勢いだな…っ、」






玄関に立っていた彼を見た瞬間、気持ちが舞い上がり、私は腕の中に飛び込んだ。

しっかりと鍛えられた身体を持つ彼は私を難なく受け止め、抱擁を返してくれる。

艶やかで黒い髪の毛は仕事モードでオールバックになっていて、整った顔が良く見える。

鼻も高く、目も二重でぱっちりとしていて容姿端麗な彼。

京くんこと、要 京かなめ きょうは、近所に住む幼なじみのお兄さんである。

現在は25歳で、警備員の仕事をしているらしい。

小さな頃、よく遊んでくれた京くんは、今も関わりがあり、たまに仕事帰りに顔を出してくれるのだ。