【完結】全てを滅するのは、どうかしら

楽歩

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53.末路 sideヴィルフリード

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リアがこの地にやってきて、半年がたった。

学院での日々は短く、その多くを授業に参加することなく過ごしたリアだが、課題と論文の提出をもって無事に卒業を果たした。それも当然の結果だ。私のリアの賢さと才気は、誰にも劣らない。


リアの賢さを、私利私欲のために利用したフルールとかいう女。


調査書によると、始めは質素に暮らしていたようだが、クロードを追い出した後、まるで解き放たれたかのように、金を浪費し始めたようだ。かつての生活の制約から解放された反動なのか、贅沢品に溺れ、次々と高価な衣服や宝飾品を手に入れていった。

それまでの慎ましさはどこへ消えたのか、新しく始めた職も長続きせず、やがて伯爵から与えられた多額の金も底をつき、最後には家まで売り払ってしまったという。

平民としてなら一生余裕で暮らせた金額だっただろうに。愚かな女だ。


今は、裕福な男爵に取り入り、愛人をやっているそうだが、そのうち富と権力を求めて正妻の座を奪い取りたくなるだろう。身を滅ぼすのも時間の問題だな。あの女は知らないだろうが、男爵は婿養子なのだから。



そのフルールの母親は、賠償金が払えていないようだ。コルホネン伯爵は、領地に拠点を移すため、賠償金の証文を金貸しに二束三文で売ったらしい。
今は、娘を探しながら逃げ回っているらしいが、そのうち掴まって、確実に金を稼げる仕事場に放り込まれるだろう。居場所を私が教えてもいいのだが、リアを苦しめたんだ、もう少し掴まる恐怖を味わえばいい。


クロードは今、酒場で知り合った女と暮らしている。女は妊娠をしているそうだ。
クロードの子か?はっ、やっていることが母親と同じだな。

とにかくその女に発破をかけられ、働いているらしい。川の氾濫で崩れた橋の修復作業を手伝っていると聞いた。意外にも性に合っているようで腹立たしいが、リアが、平民になったのは自分のせいかもしれないと気に病んでいたから、構わない。体を使って働けるほど元気なことを伝えたら、罪の意識は薄れるだろう。


コルホネン伯爵は、かつての威厳を失い、急速に老け込んだと噂されている。ほとんど領地の邸からも出ない。
もう、夜会で見かけることもないだろう。彼は愛する妻の愛情に甘え、支えようとしなかった。その結果がこれだ。同情の余地など微塵もない。



あの、王都の雨の件については、セシルに頼んでリューグランド国を経由し、親書を送った。
内容は単純明快だ――雨を何とかする代わりに、こちらの条件を飲めと。もちろん、雨が降り続ける原因に、エミリアが関わっている可能性については一切触れなかった。当然だ。

卒業するまで、あの王女と公爵令息は互いに言葉を交わすことも、接触することも禁じられたと聞く。彼らが駆け落ちでもするのではないかと危惧したのだろうか。学院では、周囲の者たちも彼らに対して腫れ物に触るように接していたという。

卒業と同時にあの二人はそれぞれ別の相手と結婚。


何かとリアに絡んでいた王女が、この国から消えたのも清々するし、傲慢な結婚相手に振り回される公爵令息の情けない顔を夜会で見るのも楽しみだ。
他国に恩が売れたと、セシルの父親の皇帝が喜んでいるらしいと聞いた。



エミリアを傷つけた最たる者たちは、概ねこれでいいとしよう。しかし、学院でエミリアの陰口を言った者、王女たちに同調した者がまだ残っている。


許しはしない

卒業したら終わりではないのだ

なぜなら、私たちは貴族なのだから

彼らにその報いを受けさせる時が来た時、私は迷わずその手を下してやる。






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