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39.仮説 side コルホネン伯爵
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ロザリーを問い詰め、エミリアの過去数年間の出来事を聞き出した。予想すらしていなかったことに、驚愕に打ちひしがれた。エミリアがそんな辛い思いをしていたとは、夢にも思わなかった…もっときちんと話を聞いていれば…
エミリアから、あの靄が、私が近づくことで一層黒々とする。人の形に見えだした。その顔が…私の亡くなった妻に似ている…そう聞いたのは、いつのことだっただろう…
もともと忙しい身であったのだが、それを言い訳にして、邸へ帰る回数を年々減らしてしまった。靄と亡くなった妻、そしてクロード。恐ろしい予想が、頭から離れなかったからだ。
そう、クロードとエミリアに向き合うことから逃げたのだ。
侯爵を継いだあの男が、執拗にエミリアを取り戻そうとしているのは知っていた。だから、監視役が必要だった。それが、ロザリーだ。
何を思い上がって、エミリアを虐げ、自分の娘を後釜に据えようとしたのか
『フルールがクロード様と結婚すれば、わ、私たちはずっとこの家に居られると…つい魔が差したのです!」
泣きながら訴えてきたが、つい、エミリアの宝石も取り上げたというのか。馬鹿馬鹿しい。その言葉には身勝手さが滲み出ていた。
同調した使用人の名前もあげさせ、共々、邸から追い出した。それでも腹の虫は収まらない…絶望だけが残る
***********
「やはりか…」
早馬できたヴァルデン侯爵からの手紙を読み終える。婚約破棄の手続きの書類が送られてくるのは、予想通りだったが、同封されていた私信には、私の心をざわつかせる仮説が書かれていた。
ああ、仮説とは書いているが、限りなく真実に近いはずだ。
なぜなら、あのヴァルデン侯爵と隣国の第5皇子の仮説だ。数年前、『隣国の魔法学院に、天才が2人現れた。』そう、社交界で有名だった2人の仮説…
反論の余地がないほど、心当たりがありすぎる。
そうか、やはり、あの黒い靄は、私の亡くなった妻が命と引き換えに生み出したものだというのか。
妻からは、魔法は使えないと聞いていたが…。手紙には、妻がエミリアと同じ闇魔法を使っていた可能性が示唆されていた。そして、その魔法はエミリアのそれとは違い、呪いの類を生み出すものであったという。
私の妻は、公爵家の令嬢でありながら、私を慕い続け、何年もかけて家族を説得し、私との結婚を実現させた。彼女が私を愛していたことに疑いを持ったことは一度もなかったし、私もまた彼女を愛していた。彼女の愛情深い眼差しに応えることが私の喜びでもあった。
だが、今となっては、私はその愛に十分に応えることができていなかったのだと痛感する。彼女が強がって「大丈夫」と言い続ける姿を見て、忙しさを理由にその言葉に甘えていた自分を責めざるを得ない。
手紙には、クロードが生まれる前年、私が、結婚記念日に家に帰れなかった日についても触れられていた。
その日、こっそり邸から抜け出し、街で酔いつぶれていた妻を介抱していたのが、クロードと同じパープルの瞳を持つ男だったと記されている。
証言者によると、品の良い女性と、身なりが不釣り合いなその男の組み合わせが印象的だったと…。クロードの瞳は珍しく、そして美しいが、それと同じ色を覚えていた者がいたとは…。どうしてそんな昔のことまで調べ上げられたのかと、私は驚かずにはいられなかった。
ああ、妻は、産むまでは、信じていたのだろう。私の子だと…そして、絶望した。
妻の絶望が、そのまま彼女自身を蝕み、最終的にあの黒い靄となって現れたのかもしれない。
エミリアから、あの靄が、私が近づくことで一層黒々とする。人の形に見えだした。その顔が…私の亡くなった妻に似ている…そう聞いたのは、いつのことだっただろう…
もともと忙しい身であったのだが、それを言い訳にして、邸へ帰る回数を年々減らしてしまった。靄と亡くなった妻、そしてクロード。恐ろしい予想が、頭から離れなかったからだ。
そう、クロードとエミリアに向き合うことから逃げたのだ。
侯爵を継いだあの男が、執拗にエミリアを取り戻そうとしているのは知っていた。だから、監視役が必要だった。それが、ロザリーだ。
何を思い上がって、エミリアを虐げ、自分の娘を後釜に据えようとしたのか
『フルールがクロード様と結婚すれば、わ、私たちはずっとこの家に居られると…つい魔が差したのです!」
泣きながら訴えてきたが、つい、エミリアの宝石も取り上げたというのか。馬鹿馬鹿しい。その言葉には身勝手さが滲み出ていた。
同調した使用人の名前もあげさせ、共々、邸から追い出した。それでも腹の虫は収まらない…絶望だけが残る
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「やはりか…」
早馬できたヴァルデン侯爵からの手紙を読み終える。婚約破棄の手続きの書類が送られてくるのは、予想通りだったが、同封されていた私信には、私の心をざわつかせる仮説が書かれていた。
ああ、仮説とは書いているが、限りなく真実に近いはずだ。
なぜなら、あのヴァルデン侯爵と隣国の第5皇子の仮説だ。数年前、『隣国の魔法学院に、天才が2人現れた。』そう、社交界で有名だった2人の仮説…
反論の余地がないほど、心当たりがありすぎる。
そうか、やはり、あの黒い靄は、私の亡くなった妻が命と引き換えに生み出したものだというのか。
妻からは、魔法は使えないと聞いていたが…。手紙には、妻がエミリアと同じ闇魔法を使っていた可能性が示唆されていた。そして、その魔法はエミリアのそれとは違い、呪いの類を生み出すものであったという。
私の妻は、公爵家の令嬢でありながら、私を慕い続け、何年もかけて家族を説得し、私との結婚を実現させた。彼女が私を愛していたことに疑いを持ったことは一度もなかったし、私もまた彼女を愛していた。彼女の愛情深い眼差しに応えることが私の喜びでもあった。
だが、今となっては、私はその愛に十分に応えることができていなかったのだと痛感する。彼女が強がって「大丈夫」と言い続ける姿を見て、忙しさを理由にその言葉に甘えていた自分を責めざるを得ない。
手紙には、クロードが生まれる前年、私が、結婚記念日に家に帰れなかった日についても触れられていた。
その日、こっそり邸から抜け出し、街で酔いつぶれていた妻を介抱していたのが、クロードと同じパープルの瞳を持つ男だったと記されている。
証言者によると、品の良い女性と、身なりが不釣り合いなその男の組み合わせが印象的だったと…。クロードの瞳は珍しく、そして美しいが、それと同じ色を覚えていた者がいたとは…。どうしてそんな昔のことまで調べ上げられたのかと、私は驚かずにはいられなかった。
ああ、妻は、産むまでは、信じていたのだろう。私の子だと…そして、絶望した。
妻の絶望が、そのまま彼女自身を蝕み、最終的にあの黒い靄となって現れたのかもしれない。
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