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33.付与魔法
しおりを挟む「そういえば、お兄様は、どうして私が、こちらに向かっていることを知っていたのですか?」
偶然?…いや、あの時「探した」「無事でよかった」、そう、お兄様は言っていたわ。
お兄様は、一瞬、言葉を探すように目を泳がせた。
「あー、それは…うん。じゃあ、先に見せたいものがある、セバス、例のあれ持ってきて」
見せたいもの?
エミリアは首をかしげ、何が出てくるのかと、期待と不安が交錯した気持ちで兄を見つめた。やがて、執事のセバスが何か大きな箱をいくつも運び込んできた。それぞれの箱は丁寧にラッピングされており、明らかに贈り物だとわかる。次々とテーブルの上に積み重なる、え?いったいいくつあるの?
「これはね、みーんなエミリアへのプレゼントだよ。これは渡せなかった誕生日の贈り物、これは入学祝、これは私たちが初めて会った記念日、あとは…」
楽しそうに一つずつ説明をしてくださる。
「渡せなかった…」
私は目を見開き、お兄様の言葉の意味を咀嚼しようとした。どうしてこんなにも多くの贈り物が、渡されずに残っているのだろうか。そんな疑問が次々と浮かんできた。
「だって、エミリアに贈っても、エミリアに手に渡らない。奪われてしまっていたのだろう?」
手紙にも書いていないのに、なぜそれを…
「お兄様はどうして知っていらっしゃるの?」
「エミリア、私は、その、付与魔法ができるようになってね。エミリアに贈ったもの、特に身に付ける物には付与魔法をかけてある。エミリアを守ってくれるように厄除けや病除け、あとは…、い、居場所に関して、分か…るも、のにとか…あ!詳しくわかるようなものは付けていないから安心して」
「じゃあ、このネックレスにも…」
胸元のネックレスに手をやり、思わず聞き返した。
「ああ、エミリアが王都を10km離れたら反応するように作った。というか、私が付与したものを身に付けたエミリアに何かあった時には、何かしらの反応が私にわかるように作っている。だから…エミリアではない魔法を感知した時、ああこれは奪われているのかと思ったんだ。」
その言葉を聞いた瞬間、目から大粒の涙が溢れ出した。
「あああ、ごめん。泣くほど気持ち悪かった?でも、心配だったんだ…泣かないでエミリア。うん、捨てよう、全て燃やしてしまおう」
兄は慌てて私に駆け寄り、涙を拭おうとした。
「ち、違うのです。私これ全てもらっていいのですか?」
「い、いるのかい?」
驚いた様子で尋ね返すお兄様。
「もちろんです。お兄様、付与魔法を使えるのですね。高度な魔法なのに、すごいですわ。それを私のために使ってくださるなんて…プレゼントが届かないと泣いていた昔の私に教えたいです。こんなに思われているんだって」
また泣き出した私をそっとお兄様が抱きしめる。
「お兄様、ネックレスに付与魔法をかけていただき、そして私を見つけてくれてありがとうございます」
涙を拭い、精一杯の笑顔を兄に向けた。
「本当に?」
お兄様は、優しく抱きしめたまま、私の気持ちを再確認するように尋ねた。
「ええ、安心して迷子になれますわ。ふふ、かくれんぼは、すぐ見つかりそうですね」
少し冗談めかして言うと言葉に、お兄様の顔からは不安に色が無くなり、安心したように微笑んだ。これまでお兄様が私のことをどれほど大切に思ってくれていたのか、そしてどれほど心配してくれていたのかを、再び心の底から理解したのだった。
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