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25.お母様への報告 sideフルール
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「お母様、大事な話があるの」
私はクロード様と一緒にお母様の部屋に入り、切り出した。今日は、私たちの関係が進んだことを伝えるための大切な日。クロードと思いが通じ合ったことを報告すれば、きっとお母様も喜んでくれるはずだ。そう確信していた。
クロードが私の手を優しく握りしめてくれるのを感じながら、お母様の前で話を進めた。しかし、私たちの話を聞いていたお母様の表情が、徐々に曇っていくのが目に見えた。期待していた反応とは違い、その変化に私は不安を感じ始めた。
「…クロード。あなた本当にフルールと結婚したいのよね」
お母様の声は、どこか緊張した響きを含んでいた。その問いかけに、クロードは私の方を一瞬見つめ、しっかりとした声で答えた。
「はい、もちろんです。フルールには、一度、男爵家に戻ってもらうことにはなりますが、必ず結婚します!」
クロード様の力強い言葉に胸が高鳴った。しかし、「男爵家に戻らなければならない」という言葉も耳に飛び込んできた。私は思わず顔をしかめた。男爵家に戻る? それって面倒だわ。どうしてそんなことをしなければならないのか、一瞬、納得できなかったけれど、状況を考えれば仕方ないのかもしれない。
「そう…、旦那様を説得するのは任せていいのかしら。あなたは、フルールを、いえ、フルールと私を守ってくれる?」
「ええ、母上が危惧していることは分かるつもりです。父は亡くなった友人の娘であるエミリアを大事に思っていました。エミリアと私が婚姻するのを心待ちにしていたことも知っています。でも、私は…。必ず説得して見せます。父だって最終的には、息子の幸せを願ってくれる。そう信じています。」
やっぱりお父様の説得が難関よね。お父様がどれほどあの女を大切に思っているかは私も知っている。だからこそ、厄介だわ。
お母様が、少し考え込むようにしてから言葉を続けた。
「それならいいの。来月は、あなたの誕生日ね。旦那様も帰ってくる…」
「その前に、手紙を送ろうと思っています。父も時間があった方が冷静に話し合いに臨んでくれるはずですし。」
「そうだわ!誕生日には友人も呼んで、婚約発表を行いましょう!」
婚約発表、まさに私が夢見ていた瞬間だ。皆に祝福されて、綺麗なドレスを着て…ああ、考えるだけで胸が高鳴るわ。クロードも同じ気持ちだったのか、嬉しそうに頷いた。
「そうだね!いいアイディアだ。父には早めに帰ってきてもらって…エミリアもその場にいたら、円満な解消だったってみんなに分かってもらえるね、きっと。」
本当、諦めて早く帰ってくればいいのに
「浮かれるのは後よ。その書いた手紙、私にも見せてちょうだい。上手く伝えないと大変なことになるわ…」
お母様が慎重に話す姿に、少しだけ不安がよぎったけれど、私はそれを打ち消した。お母様ったら心配性なんだから。愛し合う二人がいるのよ。しかも、私たちは貴族同志。あの女には両親がいないんだから、そんなに揉めるはずがないじゃない。
…いや、待って。確か、あの女には義兄がいるって聞いたことがあったような気がする。でも、そんなことはどうでもいい。交流もないんだから、その義兄と疎遠に違いないわ。だから問題なんてないはず。
私は再び自分の中で希望を膨らませ、婚約発表のことを考えた。ああ、婚約発表が待ち遠しい。私はきっと、誰よりも美しく、幸せな瞬間を迎えることができるはずだわ。
私はクロード様と一緒にお母様の部屋に入り、切り出した。今日は、私たちの関係が進んだことを伝えるための大切な日。クロードと思いが通じ合ったことを報告すれば、きっとお母様も喜んでくれるはずだ。そう確信していた。
クロードが私の手を優しく握りしめてくれるのを感じながら、お母様の前で話を進めた。しかし、私たちの話を聞いていたお母様の表情が、徐々に曇っていくのが目に見えた。期待していた反応とは違い、その変化に私は不安を感じ始めた。
「…クロード。あなた本当にフルールと結婚したいのよね」
お母様の声は、どこか緊張した響きを含んでいた。その問いかけに、クロードは私の方を一瞬見つめ、しっかりとした声で答えた。
「はい、もちろんです。フルールには、一度、男爵家に戻ってもらうことにはなりますが、必ず結婚します!」
クロード様の力強い言葉に胸が高鳴った。しかし、「男爵家に戻らなければならない」という言葉も耳に飛び込んできた。私は思わず顔をしかめた。男爵家に戻る? それって面倒だわ。どうしてそんなことをしなければならないのか、一瞬、納得できなかったけれど、状況を考えれば仕方ないのかもしれない。
「そう…、旦那様を説得するのは任せていいのかしら。あなたは、フルールを、いえ、フルールと私を守ってくれる?」
「ええ、母上が危惧していることは分かるつもりです。父は亡くなった友人の娘であるエミリアを大事に思っていました。エミリアと私が婚姻するのを心待ちにしていたことも知っています。でも、私は…。必ず説得して見せます。父だって最終的には、息子の幸せを願ってくれる。そう信じています。」
やっぱりお父様の説得が難関よね。お父様がどれほどあの女を大切に思っているかは私も知っている。だからこそ、厄介だわ。
お母様が、少し考え込むようにしてから言葉を続けた。
「それならいいの。来月は、あなたの誕生日ね。旦那様も帰ってくる…」
「その前に、手紙を送ろうと思っています。父も時間があった方が冷静に話し合いに臨んでくれるはずですし。」
「そうだわ!誕生日には友人も呼んで、婚約発表を行いましょう!」
婚約発表、まさに私が夢見ていた瞬間だ。皆に祝福されて、綺麗なドレスを着て…ああ、考えるだけで胸が高鳴るわ。クロードも同じ気持ちだったのか、嬉しそうに頷いた。
「そうだね!いいアイディアだ。父には早めに帰ってきてもらって…エミリアもその場にいたら、円満な解消だったってみんなに分かってもらえるね、きっと。」
本当、諦めて早く帰ってくればいいのに
「浮かれるのは後よ。その書いた手紙、私にも見せてちょうだい。上手く伝えないと大変なことになるわ…」
お母様が慎重に話す姿に、少しだけ不安がよぎったけれど、私はそれを打ち消した。お母様ったら心配性なんだから。愛し合う二人がいるのよ。しかも、私たちは貴族同志。あの女には両親がいないんだから、そんなに揉めるはずがないじゃない。
…いや、待って。確か、あの女には義兄がいるって聞いたことがあったような気がする。でも、そんなことはどうでもいい。交流もないんだから、その義兄と疎遠に違いないわ。だから問題なんてないはず。
私は再び自分の中で希望を膨らませ、婚約発表のことを考えた。ああ、婚約発表が待ち遠しい。私はきっと、誰よりも美しく、幸せな瞬間を迎えることができるはずだわ。
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