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19.リアの探索 sideヴィルフリード
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「ヴィル、思い出し笑いか?気持ち悪いぞ」
失礼な奴だ…と内心で毒づきながらも、私は平然とした顔で返答した。
「いや、馬鹿が墓穴を掘ったことを喜んでいたのさ」
「墓穴?」
セシルは首をかしげた。
「ああ、リアの婚約者のクロードだ。リアを差し置いて、継母が連れてきた娘に夢中になるなんて馬鹿だろ?リアが王都を出た理由はそれが一番大きいはずだ。まあ、彼を貶める策が無駄になったのは残念だが、おかげで卒業前にリアを保護できる」
リアに近づけなくても、金があればリアを取り巻く環境の情報は手に入る。王女だろうが公爵令息だろうが、リアにとって害になる存在には容赦しない。いずれ潰してやる。
「貶める?ああ、あれか、なるほどクロードって例の黒い靄の奴か。ちなみに、お前も妹にむちゅ…まあ、いいや…」
セシルは私の言葉に、ぼそりと呟いた。後半は、何て言ったか聞こえなかったが、今はそれどころじゃない。
私は地図に目を移し、リアの反応があった日を思い出しながら、馬車での移動時間を計算した。
「反応があった日、馬車での移動を考えると…そうだな、落ち合いそうなのはこの街か」
セシルが地図を覗き込む。
「ああ、この街か!この街は、串焼きがすごくうまいんだ。リアちゃんが見つかったら一緒に食べようぜ」
串焼き?
「…セシル、何を言っている。リアは心細さに食事も喉を通っていないかもしれない。繊細なんだぞ!それを…串焼き?お前は遊びに来たのか!今すぐ帰れ!」
セシルの言葉に私は苛立ちを覚え、声を荒げてしまった。
「そうですね。セシル殿下。不謹慎ですぞ」
セバスも静かに怒っている。
「じょ、冗談だ。いや、食べたいのは本当だけど…いやいや嘘!…怒るな、怒るな」
セシルは慌てて手を振り言い訳をし始める。まったく、この緊張感のなさには呆れるばかりだ。
***********
予想を立てた街に着き、馬車を降りる。
「セシル、セバス、手分けをして探そう。そうだな私は南に行くから、セシルは…」
さっそく探索に向かうべく指示を出す。
「あ!待った待った。よく考えたら俺、リアちゃんの特徴、何も知らねえな、はは」
セシルが突然私の言葉を遮った。
本当にお前は何をしに来た!皇子のくせに役に立たないな。
「…お嬢様は、ハニーブラウンとコーラルピンクが混ざったような髪の色をしております。この国では、珍しい色ですので、すぐにわかります。」
セバスも苛立ちを隠せない。
「ふーん、じゃあ、あそこで串焼きを頬張っている子と同じ色か?あれが、リアちゃんだったりして」
「はぁ?リアは令嬢だぞ。串焼きを頬張るわけがないだろう。馬鹿にしているのか?」
セシルが何気なく指を差した方向を見た瞬間、私の心臓が一瞬止まった。
ハニーブラウンとコーラルピンクの髪の色。幸せそうな顔をして串焼きを頬張っている…リア!
「お嬢様!」
セバスもそう言うなら間違いない。いや、私がリアを見間違えるわけがない。
リアが幸せそうであることに安堵する反面、私の知らない場所で、私の助けを必要とせずに、彼女が自分の時間を楽しんでいるという事実が、心に小さな棘を刺すように感じられた。
でも、何よりも大切なのは、リアが無事であり、笑顔であること。
私は深く息を吸い込み、隠しきれない喜びを胸に彼女の元へ向かって走り出した。
失礼な奴だ…と内心で毒づきながらも、私は平然とした顔で返答した。
「いや、馬鹿が墓穴を掘ったことを喜んでいたのさ」
「墓穴?」
セシルは首をかしげた。
「ああ、リアの婚約者のクロードだ。リアを差し置いて、継母が連れてきた娘に夢中になるなんて馬鹿だろ?リアが王都を出た理由はそれが一番大きいはずだ。まあ、彼を貶める策が無駄になったのは残念だが、おかげで卒業前にリアを保護できる」
リアに近づけなくても、金があればリアを取り巻く環境の情報は手に入る。王女だろうが公爵令息だろうが、リアにとって害になる存在には容赦しない。いずれ潰してやる。
「貶める?ああ、あれか、なるほどクロードって例の黒い靄の奴か。ちなみに、お前も妹にむちゅ…まあ、いいや…」
セシルは私の言葉に、ぼそりと呟いた。後半は、何て言ったか聞こえなかったが、今はそれどころじゃない。
私は地図に目を移し、リアの反応があった日を思い出しながら、馬車での移動時間を計算した。
「反応があった日、馬車での移動を考えると…そうだな、落ち合いそうなのはこの街か」
セシルが地図を覗き込む。
「ああ、この街か!この街は、串焼きがすごくうまいんだ。リアちゃんが見つかったら一緒に食べようぜ」
串焼き?
「…セシル、何を言っている。リアは心細さに食事も喉を通っていないかもしれない。繊細なんだぞ!それを…串焼き?お前は遊びに来たのか!今すぐ帰れ!」
セシルの言葉に私は苛立ちを覚え、声を荒げてしまった。
「そうですね。セシル殿下。不謹慎ですぞ」
セバスも静かに怒っている。
「じょ、冗談だ。いや、食べたいのは本当だけど…いやいや嘘!…怒るな、怒るな」
セシルは慌てて手を振り言い訳をし始める。まったく、この緊張感のなさには呆れるばかりだ。
***********
予想を立てた街に着き、馬車を降りる。
「セシル、セバス、手分けをして探そう。そうだな私は南に行くから、セシルは…」
さっそく探索に向かうべく指示を出す。
「あ!待った待った。よく考えたら俺、リアちゃんの特徴、何も知らねえな、はは」
セシルが突然私の言葉を遮った。
本当にお前は何をしに来た!皇子のくせに役に立たないな。
「…お嬢様は、ハニーブラウンとコーラルピンクが混ざったような髪の色をしております。この国では、珍しい色ですので、すぐにわかります。」
セバスも苛立ちを隠せない。
「ふーん、じゃあ、あそこで串焼きを頬張っている子と同じ色か?あれが、リアちゃんだったりして」
「はぁ?リアは令嬢だぞ。串焼きを頬張るわけがないだろう。馬鹿にしているのか?」
セシルが何気なく指を差した方向を見た瞬間、私の心臓が一瞬止まった。
ハニーブラウンとコーラルピンクの髪の色。幸せそうな顔をして串焼きを頬張っている…リア!
「お嬢様!」
セバスもそう言うなら間違いない。いや、私がリアを見間違えるわけがない。
リアが幸せそうであることに安堵する反面、私の知らない場所で、私の助けを必要とせずに、彼女が自分の時間を楽しんでいるという事実が、心に小さな棘を刺すように感じられた。
でも、何よりも大切なのは、リアが無事であり、笑顔であること。
私は深く息を吸い込み、隠しきれない喜びを胸に彼女の元へ向かって走り出した。
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