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7.何を消すのか

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 情報を共有し合い、全員は目標地点を定めた。それは、この国を抜けた先にある、とある王国。そこに、斬首刑をされた、石化術の使い手がいたらしい。
 何かしらの情報があると睨んで、そこが目的地になったのは良いものの、問題があった。

「地図貰えたんすけど……ここからだと、洞窟を通る必要があるっすね」
「洞窟…? 別に良いんじゃないの?」
「何言ってるんすか! この世界の洞窟は、モンスターで一杯なんすよ⁉︎   しかも、魔法道具がないのに、どう対抗するんすか!」

 ま、魔法道具? そんなファンタジーチックなもの、あるのかよ?

「とりあえず、まずは武器調達っす。でも、この世界の金がないんすよね…」
「それならお任せあれ。こんなこともあろうかと…持ってきました、換金機! これがあれば、なんと異世界の通貨をその世界の通貨に交換できる!」
「「おぉ~っ!」」

 スッゲェ準備良いじゃねぇか、フォールのくせに! たまには有能じゃんか!

「その前に、この世界の通貨価値を知りたいな……。よし、あの店主でちょっと試そう」

 へ、試すって何をだ? てか、どうやって換金するんだ? 俺たちの世界の通貨オズと、こっちの世界の価値が通じるわけがねぇってのに。

「≪すみません。少しよろしいでしょうか?≫」
「≪はい、いらっしゃいませ。どうされました?≫
「≪少しだけお手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか? チップを払いますので≫
「≪はい、かしこまりました。しかしながら、チップを受け取るわけにはいきません。困りごとを共に解決するのが、我々にとっての掟ですから≫」

 順調そうに会話が弾んではいるが、あの会話で一体何をする気だ? あれじゃ、オズの価値が分かりそうにないが。

「≪それでは、失礼≫
「≪え、なんですか、これ⁉︎≫


 突然フォールは、換金機からヘルメット式の装置を取り出して、店主に被せた。

「≪安心してください。少し見ていただきたい物があるだけでして。これを見るだけで良いんです≫」


 そしてフォールが店主に見せたのは、1オズ硬貨。そして、換金機が

「0.7ガルド、デス!」


 と、言い上げた。

「≪助かりました。では、少々お待ちください≫」


 フォールは店主からヘルメット式の装置を取り外し、換金機の口へ、オズを次から次へと入れた。それと同時に、たくさんの紙幣も出てきた。

「えっ、これ…ガルドっすか⁉︎」
「ガルドってなんだ?」
「この国の通貨っす! すごいっすね…本当に換金できてるっす…」
「≪じゃあ親父。ここにある果物、半分ずつくれ。これお代、釣りは要らん≫
「≪え、えぇ⁉︎   いいんですか⁉︎≫」
「≪あぁ、お礼だ。これなら、チップじゃないだろ?≫」


 店主は悩んだ顔をしていたが、フォールのウィンクを見て、果物を紙袋の中にスポスポと入れまとめた。

「≪お待たせしました。ですが、お釣りは…≫
「≪いい、いい。気にすんな。あと、売上悪そうだから、言っておくぞ。並びが悪い、ちゃんと綺麗に並べれば売れるぞ≫」
「≪え…≫」
「≪試すだけ試してみろ。じゃ、ありがとな。≫おーい、お待たせ!」


 たくさんの紙袋を抱えたフォールが、少し嬉しそうな顔をして戻ってきた。

「いやぁ! 俺たちのオズと価値がそう変わらんで良かったな。あまりに安かったり高かったりすると、帰ったときの金遣いが荒くなるからな」


 価値が低くなりすぎると、その世界でいたような散財癖が、逆に価値が高くなりすぎると、帰ったときに何でもかんでも安く思えて買ってしまう。
 そんな状況がよくあったのだろう、そのせいか余計にフォールの顔が嬉しそうに見える。

「それじゃあ、魔法道具を買うっすよ! え~っと…あそこっすね! って、定休日っすか⁉︎」
「あーあ。でも、結局はもう夕方か~」
「そうっすね。じゃあ、宿でもさが…⁉︎」


 何気なく空を見上げたエドは、急に立ち止まった。その目は、まるで恐怖心で固まる猫のように、丸くなっていた。

「どうかしたか?」
「…紅の満月っす…」
「月…あぁ、たしかに、真っ赤だが」

 別に、月が赤く光ることなんて、たまにあるじゃないか。いや、まあ、俺たちの世界の月は、こんな血みたいに真っ赤じゃないけどさ。

「紅の満月が昇る夜はは…モンスターが凶暴化する夜になるんすよ。大昔に封印された魔の魂が徘徊し、モンスターの中に入って本能を掻き立てるんすよ」
「じゃあ、今夜は寝れない…ってことか?」
「そうでもないっすよ。門番と守護兵がいれば、問題なしっす!」
「なんだ、それくらいのことで驚かないでよ」


 そんなに驚く事実でないと知り、全員は休める場所を探して歩き出した。
 すると、街のど真ん中に、レンガで作られたような、一つ目の、人型のオブジェクトのようなものが、ドデンと置かれていた。だがそれは、ところどころが欠けていた。

「ねぇ、この一つ目のオブジェクトみたいなの、何?」
「それは、さっきも話した大昔の、“龍車りゅうしゃ”っていう、魔を封じるために作られた、古代魔法道具っすよ。まあ、魔っていうのは“麒麟キリンで、ソイツに全部乗っ取られたって語り継がれてるっす」
「へぇ~…今にも動き出しそう」


 欠けているとはいえども、その見た目はまるで最近作られたように綺麗だった。
 そして、その壊れているからこその迫力は、大昔の人たちが血を流し、命をかけて戦った様子を、想起させた。

「…いわゆる、歴史的なシンボルっすね。さっ、宿探しに戻るっすよ」
「だな。さて、どんな宿なんだか」


 4人は宿探しを再開した。紅い月がうっすらと浮かぶ不吉な予感を一切気にせずに。
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