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15.四面楚歌
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ーsideオレリアー
「あなたは、しばらく謹慎よ!!」
剥がしては貼られていく学院内の新聞
必死になって剥がしている姿が、余計に真実味を帯びると王太子殿下もお姉さまも剥がすのを手伝ってくれなくなった…
学院の噂は、やがてそれぞれの親の耳に入り、お茶会から帰ってきたお母様は、大恥をかいたと憤怒している。
王太子殿下とお姉さまは素知らぬふり。お母さまは、私の話を少しも聞いてくれない。
「なぜ誰も味方になってくれないの?」
*****
部屋で一人で夕食をとった後、仕事から帰ってきたお父様に執務室に来るようにと言われた…
「はぁ、オレリア、お前は姉が王太子の婚約者だと忘れたのか?」
‥‥。
「公爵家令息に懸想するなど。相手はホフマン令嬢だぞ!わかっているのか?」
「わかっています!!だからこそですわ!!あんな金に物を言わせるような家の令嬢より私の方がヴィクター様にふさわしいわ!!」
「…ああ、そうか…。お前が何も分かっていないことが分かった。いや、ミレーナもか?」
それはまずいな…と、お父様がぶつぶつ言いだした。
「王太子殿下もお姉さまも、ヴィクター様とセレナ様が結婚したらこの先もずっとセレナ様と顔を合わせることになる。あんな生意気な女見たくないって、ヴィクター様との縁が切れていなくなるといいって、そう嫌そうにおっしゃっていたわ。だから私、みんなのためにもヴィクター様の近くからいなくなればいいと…」
「それで?」
お父様の声が低く冷たい。
「誰よりも慕ってくれる人と共にいることがヴィクター様の幸せだと。私の方がヴィクター様をお慕いしていますわ」
呆れとも怒りともとれる表情でお父様が話し出す。
「よく聞け。ホフマン令嬢は、王太子殿下の元婚約者候補だ。」
そうよ!そして選ばれたのは、お姉さまだわ。
「ミレーナが婚約者になった要因は、王太子が気に入ったその一点だけだ。他の二人よりもすべてが劣っているのだ。親の私が一番わかっている。」
え?
「お前が何を聞いたかわからないが、同じ伯爵家でも資産はもちろん権力…表も裏も我が伯爵家は足元にも及ばない。王家が本来婚約者にと望んでいたのは、おそらくホフマン伯爵令嬢だ。令嬢が本心では婚約者になりたくないのを王家は知っていたから、あまり強く出なかっただけだ。敵に回すからな。」
お金の力で婚約者候補にねじ込ませたって…
「ああ、まずい。ミレーナも王太子殿下もこの件に加担しているとみて良さそうだ。だが、そうであっては困る…」
「お父様…私はこれからどうすれば…」
「万が一、伯爵家から名誉棄損で訴えられたら…我が伯爵家の資産で慰謝料など払いきれるかどうか…そうなったらお前の姉も終わりだ。借金、汚名まみれの伯爵家の娘など王太子の婚約者ではいられない。‥決して、事実と認めるな!!なんとしてでもごまかすんだ。」
そ、そんな…
部屋に戻り呆然としていると、再びお父様に呼ばれた。
「…今から、ホフマン伯爵家が親子で来るそうだ。いいか、絶対事実を話すのではないぞ!!!」
「あなたは、しばらく謹慎よ!!」
剥がしては貼られていく学院内の新聞
必死になって剥がしている姿が、余計に真実味を帯びると王太子殿下もお姉さまも剥がすのを手伝ってくれなくなった…
学院の噂は、やがてそれぞれの親の耳に入り、お茶会から帰ってきたお母様は、大恥をかいたと憤怒している。
王太子殿下とお姉さまは素知らぬふり。お母さまは、私の話を少しも聞いてくれない。
「なぜ誰も味方になってくれないの?」
*****
部屋で一人で夕食をとった後、仕事から帰ってきたお父様に執務室に来るようにと言われた…
「はぁ、オレリア、お前は姉が王太子の婚約者だと忘れたのか?」
‥‥。
「公爵家令息に懸想するなど。相手はホフマン令嬢だぞ!わかっているのか?」
「わかっています!!だからこそですわ!!あんな金に物を言わせるような家の令嬢より私の方がヴィクター様にふさわしいわ!!」
「…ああ、そうか…。お前が何も分かっていないことが分かった。いや、ミレーナもか?」
それはまずいな…と、お父様がぶつぶつ言いだした。
「王太子殿下もお姉さまも、ヴィクター様とセレナ様が結婚したらこの先もずっとセレナ様と顔を合わせることになる。あんな生意気な女見たくないって、ヴィクター様との縁が切れていなくなるといいって、そう嫌そうにおっしゃっていたわ。だから私、みんなのためにもヴィクター様の近くからいなくなればいいと…」
「それで?」
お父様の声が低く冷たい。
「誰よりも慕ってくれる人と共にいることがヴィクター様の幸せだと。私の方がヴィクター様をお慕いしていますわ」
呆れとも怒りともとれる表情でお父様が話し出す。
「よく聞け。ホフマン令嬢は、王太子殿下の元婚約者候補だ。」
そうよ!そして選ばれたのは、お姉さまだわ。
「ミレーナが婚約者になった要因は、王太子が気に入ったその一点だけだ。他の二人よりもすべてが劣っているのだ。親の私が一番わかっている。」
え?
「お前が何を聞いたかわからないが、同じ伯爵家でも資産はもちろん権力…表も裏も我が伯爵家は足元にも及ばない。王家が本来婚約者にと望んでいたのは、おそらくホフマン伯爵令嬢だ。令嬢が本心では婚約者になりたくないのを王家は知っていたから、あまり強く出なかっただけだ。敵に回すからな。」
お金の力で婚約者候補にねじ込ませたって…
「ああ、まずい。ミレーナも王太子殿下もこの件に加担しているとみて良さそうだ。だが、そうであっては困る…」
「お父様…私はこれからどうすれば…」
「万が一、伯爵家から名誉棄損で訴えられたら…我が伯爵家の資産で慰謝料など払いきれるかどうか…そうなったらお前の姉も終わりだ。借金、汚名まみれの伯爵家の娘など王太子の婚約者ではいられない。‥決して、事実と認めるな!!なんとしてでもごまかすんだ。」
そ、そんな…
部屋に戻り呆然としていると、再びお父様に呼ばれた。
「…今から、ホフマン伯爵家が親子で来るそうだ。いいか、絶対事実を話すのではないぞ!!!」
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