上 下
63 / 66
第2章

28婚約破棄

しおりを挟む
「まずはこの度のこと謝罪をさせてくれ。すまなかった。」


陛下が頭を下げる。

「父上!!」


「は?謝罪は受け取らん。話を進めろ。」
ああ、寒いわね。夏だっていうのに。


まずは皇太子の言い分を聞き、涙ながらに訴える男爵令嬢の一人劇場を見る。


「なるほどな、私のアリーがそちらの令嬢を虐げ、婚約者の責任感から話を聞き慰めていたが、そのうち心を通わせたと。」

「そうです!だから破棄を宣言したんだ!!」
私のお父様に向かって、強気ですこと。怖いわ。


「はっ!その話が真実だとしても、たかだか男爵令嬢を虐げたくらいで大げさな。私のアリーは侯爵令嬢だ。あんな大勢の前で恥をかかせられる筋合いはない!!それに、虐げたところを見たのですか?殿下は。」

ひどい…といって、殿下にもたれかかる男爵令嬢。

「え、いや、それはその…いや虐げるような女、皇太子妃にふさわしくない!親であるあなたが、権力を笠に着るから娘のアイリーンもそんな考えなんだ!!!」
ちゃんと見てください。この部屋の人たちの顔を。あなたつぶされますわよ。


「…そのような事実はございません。皆様こちらを」

オレリア様が例の記録書を配る。え?人数分?持ち歩いているの?

「いつどのようなことになるかわかりませんのでしたので準備は万端です。それくらいお二人の言動はひどいものです。」


すごい勢いでページをめくるお父様。それを横で見るお母様。目が高速で動いていらっしゃる。速読…お二人とも優秀ですのね。陛下は、頭を抱えながら読み、皇后様は、泣き疲れたのか心ここにあらずね。



「護衛である私も証言します。ここに書かれていることは事実であり、破棄されるべきは殿下の方だと」
殿下の護衛なのに、私の傍に控えてくださっているノエル様が、頼もしい。素敵。



「な!お前は私の護衛だろう!!」

「黙れ!婚約者一人幸せにできないやつが、偉そうに言うな!」
ノ、ノエル様、一応殿下ですわよ。どうどう。でも嬉しいですわ。


こめかみに青筋を立てながら、お父様が言う。

「いいことを教えてやろう、貴様の”真実の愛”とやらは浮気だ。ちなみにお前の父親と母親の”真実の愛”も浮気だぞ?だから慰謝料が発生したんだ。この馬鹿親子が!!」

「私の大事な親友、そして、私の愛する娘。私の大切な人たちを次から次へと。このお花畑家族!!」

お父様、お母様…。
ああ、もう、無礼講なのかしら…。


「不敬な!!」
顔を歪め皇太子が叫ぶ。

「エドガール、もう黙れ…皇太子有責での婚約破棄としよう。アイリーン嬢の経歴の傷になってしまうため解消、いや白紙にしたいが、あんなに多くの人の前で宣言してしまったため、どうにもならないだろう…重ね重ねすまなかった。」


皇后さまが再び、泣き崩れる。


「…慰謝料など詳しいことは、後日にしよう。なあ、テオ、こんな結果、私とて望んでいなかった。せめてもっと…。息子にチャンスを与えなかったのはお前かもしれないぞ。」


ああ、そうかもな…と悲しげに笑う陛下。


そうよね、もっと平和に皆が幸せになる未来もあったわよね。私の行動にも原因がなかったとは言えないわ。放置したのですもの。


「祝 婚約破棄」という気持ちにはならないわ…



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王妃さまは断罪劇に異議を唱える

土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。 そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。 彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。 王族の結婚とは。 王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。 王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。 ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。

裏切りの代償~嗤った幼馴染と浮気をした元婚約者はやがて~

柚木ゆず
恋愛
※6月10日、リュシー編が完結いたしました。明日11日よりフィリップ編の後編を、後編完結後はフィリップの父(侯爵家当主)のざまぁに関するお話を投稿させていただきます。  婚約者のフィリップ様はわたしの幼馴染・ナタリーと浮気をしていて、ナタリーと結婚をしたいから婚約を解消しろと言い出した。  こんなことを平然と口にできる人に、未練なんてない。なので即座に受け入れ、私達の関係はこうして終わりを告げた。 「わたくしはこの方と幸せになって、貴方とは正反対の人生を過ごすわ。……フィリップ様、まいりましょう」  そうしてナタリーは幸せそうに去ったのだけれど、それは無理だと思うわ。  だって、浮気をする人はいずれまた――

【完結】内緒で死ぬことにした  〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜

たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。 でもわたしは利用価値のない人間。 手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか? 少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。 生きることを諦めた女の子の話です ★異世界のゆるい設定です

【完結】公爵令嬢はただ静かにお茶が飲みたい

珊瑚
恋愛
穏やかな午後の中庭。 美味しいお茶とお菓子を堪能しながら他の令嬢や夫人たちと談笑していたシルヴィア。 そこに乱入してきたのはーー

【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません  

たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。 何もしていないのに冤罪で…… 死んだと思ったら6歳に戻った。 さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。 絶対に許さない! 今更わたしに優しくしても遅い! 恨みしかない、父親と殿下! 絶対に復讐してやる! ★設定はかなりゆるめです ★あまりシリアスではありません ★よくある話を書いてみたかったんです!!

悪役令嬢に転生したら病気で寝たきりだった⁉︎完治したあとは、婚約者と一緒に村を復興します!

Y.Itoda
恋愛
目を覚ましたら、悪役令嬢だった。 転生前も寝たきりだったのに。 次から次へと聞かされる、かつての自分が犯した数々の悪事。受け止めきれなかった。 でも、そんなセリーナを見捨てなかった婚約者ライオネル。 何でも治癒できるという、魔法を探しに海底遺跡へと。 病気を克服した後は、二人で街の復興に尽力する。 過去を克服し、二人の行く末は? ハッピーエンド、結婚へ!

完結 愛人と名乗る女がいる

音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、夫の恋人を名乗る女がやってきて……

義妹がすぐに被害者面をしてくるので、本当に被害者にしてあげましょう!

新野乃花(大舟)
恋愛
「フランツお兄様ぁ〜、またソフィアお姉様が私の事を…」「大丈夫だよエリーゼ、僕がちゃんと注意しておくからね」…これまでにこのような会話が、幾千回も繰り返されれきた。その度にソフィアは夫であるフランツから「エリーゼは繊細なんだから、言葉や態度には気をつけてくれと、何度も言っているだろう!!」と責められていた…。そしてついにソフィアが鬱気味になっていたある日の事、ソフィアの脳裏にあるアイディアが浮かんだのだった…! ※過去に投稿していた「孤独で虐げられる気弱令嬢は次期皇帝と出会い、溺愛を受け妃となる」のIFストーリーになります! ※カクヨムにも投稿しています!

処理中です...