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8.人間と同じ
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sideレティシア
「はぁ……」
午後の日差しが柔らかく差し込むティールームに、ため息が静かに溶け込んだ。
「どうなさいました? スヴェイン様」
私が問いかけると、彼は一瞬だけ驚いたような顔を見せたが、すぐに微笑んで椅子にもたれた。
「ああ、すまない。せっかく君とのお茶会の日なのに、ため息なんかついてしまって」
彼の声は少し疲れていて、どこか申し訳なさを含んでいる。そのお顔には確かに疲労の色が浮かんでいるけれど、こうしてお茶会の約束を守ってくれる彼の誠実さが、何よりも胸に温かく響く。
「いいえ、お仕事お忙しいのですか?」
そう尋ねると、彼は少しだけ視線を落としながら、カップを手に取った。
「仕事と言えば仕事なのだが……本当に、いいのかい? せっかくのお茶会なのに。きっとつまらない話だ」
「どんなことでも聞きたいのです。私たちは……夫婦になるのですよ。お互いに信頼し合うからこそ、夫婦なのですから」
その言葉を口にした瞬間、私の頬がほんのり熱を帯びた。思ったよりも自分の声が真剣に響いたことに、少しだけ照れてしまう。
スヴェイン様は短く笑い、まるで私をからかうような優しい目を向けてくる。
「そうだな。実は、恥ずかしい話なのだが、新しく、私の馬となったソレイユの調教が難しくてな。ちょっと手を焼いているんだ」
「辺境伯領出身のスヴェイン様が、手を焼くほどの馬なのですか?」
その言葉に、彼は少し肩をすくめながら苦笑いを浮かべた。
「ああ、前の愛馬がけがをしてリタイヤしてしまったから代わりのパートナーなのだが、前の馬との長年の癖が嫌なのか、餌も手から食べなくて……なかなか信頼関係が築けていない……。はは、ま、根気よくやるしかないな」
彼の表情からは、前の愛馬への思い出と、新しい相棒との葛藤が垣間見える。スヴェイン様がどれほど前の愛馬を大切にしていたかを知っている私には、その気持ちが痛いほどわかる気がする。
けれど、手からエサを食べないなんて……。
私だったら喜んで食べるわ! なんですの、その羨ましいシチュエーションは!
婚約者の私を差し置いて、馬がスヴェイン様を困らせる? パートナーという響きも少し嫌なのに。
「それでは、次の視察にソレイユは……」
「ああ、間に合わないだろうな。隊の他の馬で行くことにするよ」
それは少し残念な知らせだ。隊の象徴であるべき彼が、他の隊員と同じレベルの馬に乗るのは、スヴェイン様の威厳に影響するかもしれないのに……。
「……大丈夫ですわ。スヴェイン様がかけた愛情は、きっと伝わっています。ソレイユも、きっと寂しさを感じて、帰る頃には前とは違う馬になっていることでしょう。そう信じていますわ」
彼の顔がほんの少し和らぎ、優しい眼差しが私に向けられた。
「そうだといいのだが……。愛しいレティも帰るのを待ちわびてくれるか?」
その言葉に、不意打ちを受けたような気分になり、心臓が一瞬跳ねる。
「っ! もちろんですわ! 寂しいので、早く帰ってきてくださいね!」
*****
「この子がソレイユ」
スヴェイン様が、視察で留守の間、ソレイユの世話をさせてもらう許可を得た。
『レティ、怪我だけはしないでくれ』
と、何度も心配そうな顔で言われた。
全体的に筋肉が引き締まり、力強さを感じさせる体格。肩から背中にかけてのラインが美しく、力強い脚がまるで大地を踏みしめるかのような安定感を生み出している。
毛並みは光沢があり、顔立ちは優雅でありながらも力強さが感じられ、目は澄んでいて知的な印象を受ける。その全体的な雰囲気は、まさに「堂々たる存在」であり、見る者に強い印象を与えるわね。
まあ、そんなのスヴェイン様を困らせていい理由になどならない。
馬の調教などしたことがないけど、人間と一緒でしょ? 主従関係というものをしっかり教えてあげればいいの。
大丈夫、愛する婚約者の愛馬になるお前のことは、私も愛情をもって接するわ。
今日から始まる調教の日々、楽しみましょうね、ソレイユ。
「はぁ……」
午後の日差しが柔らかく差し込むティールームに、ため息が静かに溶け込んだ。
「どうなさいました? スヴェイン様」
私が問いかけると、彼は一瞬だけ驚いたような顔を見せたが、すぐに微笑んで椅子にもたれた。
「ああ、すまない。せっかく君とのお茶会の日なのに、ため息なんかついてしまって」
彼の声は少し疲れていて、どこか申し訳なさを含んでいる。そのお顔には確かに疲労の色が浮かんでいるけれど、こうしてお茶会の約束を守ってくれる彼の誠実さが、何よりも胸に温かく響く。
「いいえ、お仕事お忙しいのですか?」
そう尋ねると、彼は少しだけ視線を落としながら、カップを手に取った。
「仕事と言えば仕事なのだが……本当に、いいのかい? せっかくのお茶会なのに。きっとつまらない話だ」
「どんなことでも聞きたいのです。私たちは……夫婦になるのですよ。お互いに信頼し合うからこそ、夫婦なのですから」
その言葉を口にした瞬間、私の頬がほんのり熱を帯びた。思ったよりも自分の声が真剣に響いたことに、少しだけ照れてしまう。
スヴェイン様は短く笑い、まるで私をからかうような優しい目を向けてくる。
「そうだな。実は、恥ずかしい話なのだが、新しく、私の馬となったソレイユの調教が難しくてな。ちょっと手を焼いているんだ」
「辺境伯領出身のスヴェイン様が、手を焼くほどの馬なのですか?」
その言葉に、彼は少し肩をすくめながら苦笑いを浮かべた。
「ああ、前の愛馬がけがをしてリタイヤしてしまったから代わりのパートナーなのだが、前の馬との長年の癖が嫌なのか、餌も手から食べなくて……なかなか信頼関係が築けていない……。はは、ま、根気よくやるしかないな」
彼の表情からは、前の愛馬への思い出と、新しい相棒との葛藤が垣間見える。スヴェイン様がどれほど前の愛馬を大切にしていたかを知っている私には、その気持ちが痛いほどわかる気がする。
けれど、手からエサを食べないなんて……。
私だったら喜んで食べるわ! なんですの、その羨ましいシチュエーションは!
婚約者の私を差し置いて、馬がスヴェイン様を困らせる? パートナーという響きも少し嫌なのに。
「それでは、次の視察にソレイユは……」
「ああ、間に合わないだろうな。隊の他の馬で行くことにするよ」
それは少し残念な知らせだ。隊の象徴であるべき彼が、他の隊員と同じレベルの馬に乗るのは、スヴェイン様の威厳に影響するかもしれないのに……。
「……大丈夫ですわ。スヴェイン様がかけた愛情は、きっと伝わっています。ソレイユも、きっと寂しさを感じて、帰る頃には前とは違う馬になっていることでしょう。そう信じていますわ」
彼の顔がほんの少し和らぎ、優しい眼差しが私に向けられた。
「そうだといいのだが……。愛しいレティも帰るのを待ちわびてくれるか?」
その言葉に、不意打ちを受けたような気分になり、心臓が一瞬跳ねる。
「っ! もちろんですわ! 寂しいので、早く帰ってきてくださいね!」
*****
「この子がソレイユ」
スヴェイン様が、視察で留守の間、ソレイユの世話をさせてもらう許可を得た。
『レティ、怪我だけはしないでくれ』
と、何度も心配そうな顔で言われた。
全体的に筋肉が引き締まり、力強さを感じさせる体格。肩から背中にかけてのラインが美しく、力強い脚がまるで大地を踏みしめるかのような安定感を生み出している。
毛並みは光沢があり、顔立ちは優雅でありながらも力強さが感じられ、目は澄んでいて知的な印象を受ける。その全体的な雰囲気は、まさに「堂々たる存在」であり、見る者に強い印象を与えるわね。
まあ、そんなのスヴェイン様を困らせていい理由になどならない。
馬の調教などしたことがないけど、人間と一緒でしょ? 主従関係というものをしっかり教えてあげればいいの。
大丈夫、愛する婚約者の愛馬になるお前のことは、私も愛情をもって接するわ。
今日から始まる調教の日々、楽しみましょうね、ソレイユ。
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