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米を食いたいのです!6
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「おい、こら、それ以上奥へいくな。デリンクエンツの領土も近いって言っただろう。見回りの隊に出くわしたりしたらどうするんだ。もうこの辺りは、稲は無いんじゃないか?危ないし、移動しよう」
カウルは、お父さんのようにピタッと付いてきていた。「はあい」と返事をしつつも、もう少しだけ奥を見てみたかったわたしは、目の前の葉を手で払って、さらに先へ足を踏み入れた。
「あっ痛っ」
払った筈の大きな草は、すぐにしなって戻ってきて、わたしの目の近く掠めていった。咄嗟に、目を瞑り顔を背ける。
「ゆづか!ああほら、だから言っただろう。見せてみろ。目にはいったか?」
焦ったカウルに、両頬を挟まれ、上を向かされた。目の下がじんじんと熱い。ちょっと涙目になった目を開けると、目の前に真剣な瞳をした、カウルの顔が迫っていた。
「たぶん大丈夫」
「ったく。お転婆なやつだな。この水草は育つごとに葉が鋭利になるんだ。少し血が滲んだが、薄皮を切っただけみたいだな。
ゆづかは頓着してないが、一応姫という立場なんだ、肌などはなるべく傷つけないように、気をつけてくれ」
「はい……」
カウルは親指で軽く血を拭うと、傷口をペロンと舐めた。
(……ほ……ほおおおお?!)
わたしは、びっくりして、目を見開いて固まった。
「痛むか?ちょっと我慢してくれ、ノーティー・ワンには、唾液が化膿を止め、治癒を早めるという治療法がある。お前の綺麗な肌に、傷跡が残ったら大変だ」
大真面目に語るカウルの唇がせまり、傷口に何度も舌を這わせた。チュッと皮膚がなんども吸われる。
それは、あれですね?少女漫画の世界で良く見かける、舐めときゃ治る、的なあれですね?!
「ん?なんだ。首からも血が出ているじゃないか!」
ぬるん、と首筋にも柔らかい感触がし、とうとうわたしは悲鳴をあげた。抱き締められながらそんなことをされたら、たまったもんじゃない。羞恥で体が熱い。
「ふおおおおおおおおお!!」
その声は湿地帯に響いたらしく、「ゆづか!!」「姫さん!」「姫様ーー!!」と、周囲に散っていた男達が、声を頼りに、一斉に、わたし達のいる場所まで集まってきた。
「ゆづか!!どうした?!敵か!獣か!」
デフは、どこからひとっ飛びしたのか、黄金の弓矢を手に持ち、空から落ちてきた。おお、ゼウス降臨。めちゃくちゃ格好良い。
いやしかし、今はそれどころじゃない。
いきなりの悲鳴に、カウルはびっくりしたらしく、目を丸くしていた。
「……って、総長がいるじゃないっすか。どうしました?」
カウルがついているとわかると、みんなほっと胸を撫で下ろし、取り出していた武器を手の中に治めた。
「治療をしていたら、急に叫んでな。ゆづか?痛かったのか?ごめんな」
「いや、あの……。そうなの、びっくりして、ごめんねさい」
顔は熱いまま、しどろもどろに言い訳をした。
「ひどい悲鳴だったぞ。痛みに弱いのか?でも、もう少し消毒しておいたほうがいいぞ。もうちょっとだけ我慢してくれな」
カウルは真面目な顔をして、また首に吸い付いた。
「うひゃあああああ」
擽ったい!お尻から脳天にかけて、ゾクゾクとしたものが駆け巡った。
「だっ…!もう、大丈夫ーー!」
「暴れるなって、もう少しだから」
ちゅうちゅう首を吸われて、わたしは涙目になる。助けを求めてみんなを見回すと、デフとバチッと目があった。
デフは呆れたような、気の抜けた顔をしていたが、わたしが恥ずかしがっているだけだと察すると、親が子を見守るような生暖かい顔をして、うんうんと頷いていた。
カウルは、お父さんのようにピタッと付いてきていた。「はあい」と返事をしつつも、もう少しだけ奥を見てみたかったわたしは、目の前の葉を手で払って、さらに先へ足を踏み入れた。
「あっ痛っ」
払った筈の大きな草は、すぐにしなって戻ってきて、わたしの目の近く掠めていった。咄嗟に、目を瞑り顔を背ける。
「ゆづか!ああほら、だから言っただろう。見せてみろ。目にはいったか?」
焦ったカウルに、両頬を挟まれ、上を向かされた。目の下がじんじんと熱い。ちょっと涙目になった目を開けると、目の前に真剣な瞳をした、カウルの顔が迫っていた。
「たぶん大丈夫」
「ったく。お転婆なやつだな。この水草は育つごとに葉が鋭利になるんだ。少し血が滲んだが、薄皮を切っただけみたいだな。
ゆづかは頓着してないが、一応姫という立場なんだ、肌などはなるべく傷つけないように、気をつけてくれ」
「はい……」
カウルは親指で軽く血を拭うと、傷口をペロンと舐めた。
(……ほ……ほおおおお?!)
わたしは、びっくりして、目を見開いて固まった。
「痛むか?ちょっと我慢してくれ、ノーティー・ワンには、唾液が化膿を止め、治癒を早めるという治療法がある。お前の綺麗な肌に、傷跡が残ったら大変だ」
大真面目に語るカウルの唇がせまり、傷口に何度も舌を這わせた。チュッと皮膚がなんども吸われる。
それは、あれですね?少女漫画の世界で良く見かける、舐めときゃ治る、的なあれですね?!
「ん?なんだ。首からも血が出ているじゃないか!」
ぬるん、と首筋にも柔らかい感触がし、とうとうわたしは悲鳴をあげた。抱き締められながらそんなことをされたら、たまったもんじゃない。羞恥で体が熱い。
「ふおおおおおおおおお!!」
その声は湿地帯に響いたらしく、「ゆづか!!」「姫さん!」「姫様ーー!!」と、周囲に散っていた男達が、声を頼りに、一斉に、わたし達のいる場所まで集まってきた。
「ゆづか!!どうした?!敵か!獣か!」
デフは、どこからひとっ飛びしたのか、黄金の弓矢を手に持ち、空から落ちてきた。おお、ゼウス降臨。めちゃくちゃ格好良い。
いやしかし、今はそれどころじゃない。
いきなりの悲鳴に、カウルはびっくりしたらしく、目を丸くしていた。
「……って、総長がいるじゃないっすか。どうしました?」
カウルがついているとわかると、みんなほっと胸を撫で下ろし、取り出していた武器を手の中に治めた。
「治療をしていたら、急に叫んでな。ゆづか?痛かったのか?ごめんな」
「いや、あの……。そうなの、びっくりして、ごめんねさい」
顔は熱いまま、しどろもどろに言い訳をした。
「ひどい悲鳴だったぞ。痛みに弱いのか?でも、もう少し消毒しておいたほうがいいぞ。もうちょっとだけ我慢してくれな」
カウルは真面目な顔をして、また首に吸い付いた。
「うひゃあああああ」
擽ったい!お尻から脳天にかけて、ゾクゾクとしたものが駆け巡った。
「だっ…!もう、大丈夫ーー!」
「暴れるなって、もう少しだから」
ちゅうちゅう首を吸われて、わたしは涙目になる。助けを求めてみんなを見回すと、デフとバチッと目があった。
デフは呆れたような、気の抜けた顔をしていたが、わたしが恥ずかしがっているだけだと察すると、親が子を見守るような生暖かい顔をして、うんうんと頷いていた。
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