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序章
黒い蛇•虚飾の王
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絢爛華麗な王城の中心にあり、華やかな植物のモチーフを黄金と象牙で飾り立てた謁見の間。常ならば、城主たる国主に招かれた者が恭しく首を垂れるものだが、この日ばかりは違っていた。
広い部屋の奥に、純金のメッキが施され、華美が過ぎて悪趣味な玉座がある。そこに、贅沢三昧に弛んだ身体を肘置きの間に押し込んで顎を反らす、貧相な顔立ちの中年男性がいる。彼はこの国を治める者であり、この城の主。その左側に控える、頭髪が侘しく顔色の悪い男が宰相。数段下がった場には、十余名の似通った雰囲気の男達。恐らくは王と縁戚関係にあるだろう上位貴族の当主達だ。あとは、数十人にも及ぶフルプレートの騎士団。何れも花の恩恵に預かる同じ穴の狢だ。
内輪ばかりが集う中、何処か緊迫した空気に満たされていた。異様なのは開け放たれた大扉の前に立つ長身の黒い男。不遜な態度で扉に寄り掛かり、一個の林檎を弄んでいた。傷一つなく、城で供される品質の真っ赤な林檎だ。下手側に立つ者は、己を辨え王を敬い、媚び諂わなくてはなくてはならないというのに。王にしてみれば不愉快極まりないが、男の特異性から言及はしなかった。
避けたと言う方が正しいか。
「で?私に何の用だ」
黒に覆われた男の顔は窺えないが、低くともよく通る美声だ。
「花の村に、忌花が現れたと報告があった。あれは不吉だが、花は花。自我を奪い、隣国にでも売れば震える程の高値になるだろう。ああ、余の性奴隷としてやっても良いか。兵が幾人も死んでいる。暴れられて余計な傷など付けては値が下がろう。何か良い知恵はないか?」
コツ、と靴の踵が鳴った。男が立てた音はただそれだけだった。異常を感じた近衛兵が、男と王の間に壁を作るもそこには居なかった。男は衛兵の前には居ない。では何処へ?
「ぐっ!?」
ガシャン、とけたたましい音と共に近衛の壁が弾き飛ばされ、間隙を縫うように男が優雅な所作で玉座に腰を下ろした。衛兵たちを薙倒したのは、その椅子に座していた筈の王だった。派手な装いとふくよかな体型から、まるで異国の『鞠』のよう。大きさは比較にならないので、ぶつけられた側はたまったものではない。幾ら鍛えた騎士であっても、為す術はないだろう。
王が身を起こそうと震える腕を伸ばし手を付く。すると、絨毯の上に滴り落ちる真っ赤な血。地を這う蟲のように転がる己と、我が身を傷付けられた痛みと怒りに思考が染まる。
そして、忘れてはならない事が頭から抜け落ちた。
───目の前の男が一体何者なのか。
気にするべきだったのだ。この場にあるはずのない林檎の出処を。
この場に現れる前に、この男が何をしていたのか。
今時分、この城の何処で何が行われていたのか。
「…馬鹿な!!!!何故余に逆らう⁉」
血の混じった唾を飛ばして王は激昂し、周りの騎士に剣を抜く許しを与えた。恐れを知らぬ無礼者は排除されなくてはならない。王たる者にはその資格があるのだ。王とは至高の存在なのだから。故に、その命は速やかに完遂される筈だった。
だが、いつまで経っても剣を抜く音がしない。敵に向かう靴音がしない。男は今も目の前にいる。傷一つ無い美しい顔のまま、嘲るように唇を歪めて。
「何をしている、ぐずぐずするな!この痴れ者を叩き斬れ!!」
応える者は誰もいない。宰相でさえも応えはない。その不審に、初めてそこに居る筈の部下へ目をやる。
真っ赤だった。誰も彼も真っ赤に染まっていた。ある者は首から、ある者は腹から二つに分かれて血の海に沈んでいる。王と男の二人を除き、この場に生きている者は一人もいない。
赤く濡れた絨毯の上で、王は嘗てない程の恐怖に見舞われていた。
醜く肥え太った体には、脂肪以外付いていない。自らの手で剣一つ振ったことはない。カトラリーよりも重い物は、生まれて此の方持った事がない。不相応な金襴緞子に身を包む、ただの脂肪で膨れた中年男性に過ぎなかった。
そんな王の目の前に、男がいる。王が座るべき豪奢な玉座に、王ではない男が。
冬の海を埋め尽くす流氷を彷彿とさせる冷たい瞳は薄青。毎日鏡を覗き込む顔よりも美しく、滑らかな肌の白い顔。長い睫毛も髪も黒く艶やかだ。青光りする黒い鱗に覆われた手ばかりが異様だが、弄ぶ林檎の赤い色も相俟って何処か艶めかしい。
「さて、王よ。お前の護衛はこれだけか?私に毛程の傷もつけられないようだが」
優雅に問い掛ける男には、些かの乱れもない。声も、息も、その衣も。ただその場で長い脚を組み、玉座に深く座するのみ。周りを見れば、累々たる屍の群れだ。恐怖は死体と共に積み上がり、厠で馴染みの臭いが時折鼻を掠める。
「一体何が望みだ?何が気に食わない…⁉」
「望み…か」
男は小馬鹿にしたように嗤う。
王は死にたくなかった。助かりたかった。晩餐に並ぶ家畜や魚の丸焼きの目など、気にも止めなかった。けれど、今男から少しでも目を逸らせば、物言わぬ躯の目、目、目…。こちらを見る目のなんと空虚な事か。瞬き一つせず、暗い孔のような目のなんと恐ろしい事か。
同じになりたくなかった。ただの肉の塊になりたくなかった。王なのだ。下賤な者と同じになるなど耐えられない。
「さもしい事だ」
王の思考を覗いているかのように呟き、男が林檎に歯を立てる。
刹那、ドン、と王の腹に衝撃があった。ゾクリ、と背筋を駆け抜ける悪寒。
腹が、灼ける。
腹を見れば、黒い棒が生えている。それは王の体を貫き、床に深く刺さっている。棒は蒼白い焔を纏い、見る間に勢いを増していくではない
「あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ァ!!!!」
瞬く間に身体を灼かれる。痛いのか熱いのか冷たいのかさえわからない。空気を求めて喘げば、容赦なく焔が入り込み喉が肺が灼けていく。のたうち回る身体を、更に数本の黒い何かが床に縫い止めた。その様はまるで虫の標本。
感覚が消え、意識が糸のように細くなった頃、玉座の男が殊更に優しく甘く謳うように囁いた。
「身の程知らすの痴れ者が。アレは私のものだ」
彼の言う『アレ』が何なのかは、皆目検討もつかない。だが、これだけはハッキリしている。自分は、間違えたのだ。触れてはならない物に触れた。この男の逆鱗に触れてしまった。
気に入らぬ者は、過去幾度も幾人も処刑してきた。それが己に降り掛かるなど露程も考えなかった。考える必要などなかったのだから。
城にあった全ての人間が物言わぬ肉塊と化した。他国に攻め入られたわけではなく、ただ一人の男の不興を買った事実が、この国をの名を地図から永遠に消し去った。
広い部屋の奥に、純金のメッキが施され、華美が過ぎて悪趣味な玉座がある。そこに、贅沢三昧に弛んだ身体を肘置きの間に押し込んで顎を反らす、貧相な顔立ちの中年男性がいる。彼はこの国を治める者であり、この城の主。その左側に控える、頭髪が侘しく顔色の悪い男が宰相。数段下がった場には、十余名の似通った雰囲気の男達。恐らくは王と縁戚関係にあるだろう上位貴族の当主達だ。あとは、数十人にも及ぶフルプレートの騎士団。何れも花の恩恵に預かる同じ穴の狢だ。
内輪ばかりが集う中、何処か緊迫した空気に満たされていた。異様なのは開け放たれた大扉の前に立つ長身の黒い男。不遜な態度で扉に寄り掛かり、一個の林檎を弄んでいた。傷一つなく、城で供される品質の真っ赤な林檎だ。下手側に立つ者は、己を辨え王を敬い、媚び諂わなくてはなくてはならないというのに。王にしてみれば不愉快極まりないが、男の特異性から言及はしなかった。
避けたと言う方が正しいか。
「で?私に何の用だ」
黒に覆われた男の顔は窺えないが、低くともよく通る美声だ。
「花の村に、忌花が現れたと報告があった。あれは不吉だが、花は花。自我を奪い、隣国にでも売れば震える程の高値になるだろう。ああ、余の性奴隷としてやっても良いか。兵が幾人も死んでいる。暴れられて余計な傷など付けては値が下がろう。何か良い知恵はないか?」
コツ、と靴の踵が鳴った。男が立てた音はただそれだけだった。異常を感じた近衛兵が、男と王の間に壁を作るもそこには居なかった。男は衛兵の前には居ない。では何処へ?
「ぐっ!?」
ガシャン、とけたたましい音と共に近衛の壁が弾き飛ばされ、間隙を縫うように男が優雅な所作で玉座に腰を下ろした。衛兵たちを薙倒したのは、その椅子に座していた筈の王だった。派手な装いとふくよかな体型から、まるで異国の『鞠』のよう。大きさは比較にならないので、ぶつけられた側はたまったものではない。幾ら鍛えた騎士であっても、為す術はないだろう。
王が身を起こそうと震える腕を伸ばし手を付く。すると、絨毯の上に滴り落ちる真っ赤な血。地を這う蟲のように転がる己と、我が身を傷付けられた痛みと怒りに思考が染まる。
そして、忘れてはならない事が頭から抜け落ちた。
───目の前の男が一体何者なのか。
気にするべきだったのだ。この場にあるはずのない林檎の出処を。
この場に現れる前に、この男が何をしていたのか。
今時分、この城の何処で何が行われていたのか。
「…馬鹿な!!!!何故余に逆らう⁉」
血の混じった唾を飛ばして王は激昂し、周りの騎士に剣を抜く許しを与えた。恐れを知らぬ無礼者は排除されなくてはならない。王たる者にはその資格があるのだ。王とは至高の存在なのだから。故に、その命は速やかに完遂される筈だった。
だが、いつまで経っても剣を抜く音がしない。敵に向かう靴音がしない。男は今も目の前にいる。傷一つ無い美しい顔のまま、嘲るように唇を歪めて。
「何をしている、ぐずぐずするな!この痴れ者を叩き斬れ!!」
応える者は誰もいない。宰相でさえも応えはない。その不審に、初めてそこに居る筈の部下へ目をやる。
真っ赤だった。誰も彼も真っ赤に染まっていた。ある者は首から、ある者は腹から二つに分かれて血の海に沈んでいる。王と男の二人を除き、この場に生きている者は一人もいない。
赤く濡れた絨毯の上で、王は嘗てない程の恐怖に見舞われていた。
醜く肥え太った体には、脂肪以外付いていない。自らの手で剣一つ振ったことはない。カトラリーよりも重い物は、生まれて此の方持った事がない。不相応な金襴緞子に身を包む、ただの脂肪で膨れた中年男性に過ぎなかった。
そんな王の目の前に、男がいる。王が座るべき豪奢な玉座に、王ではない男が。
冬の海を埋め尽くす流氷を彷彿とさせる冷たい瞳は薄青。毎日鏡を覗き込む顔よりも美しく、滑らかな肌の白い顔。長い睫毛も髪も黒く艶やかだ。青光りする黒い鱗に覆われた手ばかりが異様だが、弄ぶ林檎の赤い色も相俟って何処か艶めかしい。
「さて、王よ。お前の護衛はこれだけか?私に毛程の傷もつけられないようだが」
優雅に問い掛ける男には、些かの乱れもない。声も、息も、その衣も。ただその場で長い脚を組み、玉座に深く座するのみ。周りを見れば、累々たる屍の群れだ。恐怖は死体と共に積み上がり、厠で馴染みの臭いが時折鼻を掠める。
「一体何が望みだ?何が気に食わない…⁉」
「望み…か」
男は小馬鹿にしたように嗤う。
王は死にたくなかった。助かりたかった。晩餐に並ぶ家畜や魚の丸焼きの目など、気にも止めなかった。けれど、今男から少しでも目を逸らせば、物言わぬ躯の目、目、目…。こちらを見る目のなんと空虚な事か。瞬き一つせず、暗い孔のような目のなんと恐ろしい事か。
同じになりたくなかった。ただの肉の塊になりたくなかった。王なのだ。下賤な者と同じになるなど耐えられない。
「さもしい事だ」
王の思考を覗いているかのように呟き、男が林檎に歯を立てる。
刹那、ドン、と王の腹に衝撃があった。ゾクリ、と背筋を駆け抜ける悪寒。
腹が、灼ける。
腹を見れば、黒い棒が生えている。それは王の体を貫き、床に深く刺さっている。棒は蒼白い焔を纏い、見る間に勢いを増していくではない
「あ゙ぁ゙ぁ゙あ゙ァ!!!!」
瞬く間に身体を灼かれる。痛いのか熱いのか冷たいのかさえわからない。空気を求めて喘げば、容赦なく焔が入り込み喉が肺が灼けていく。のたうち回る身体を、更に数本の黒い何かが床に縫い止めた。その様はまるで虫の標本。
感覚が消え、意識が糸のように細くなった頃、玉座の男が殊更に優しく甘く謳うように囁いた。
「身の程知らすの痴れ者が。アレは私のものだ」
彼の言う『アレ』が何なのかは、皆目検討もつかない。だが、これだけはハッキリしている。自分は、間違えたのだ。触れてはならない物に触れた。この男の逆鱗に触れてしまった。
気に入らぬ者は、過去幾度も幾人も処刑してきた。それが己に降り掛かるなど露程も考えなかった。考える必要などなかったのだから。
城にあった全ての人間が物言わぬ肉塊と化した。他国に攻め入られたわけではなく、ただ一人の男の不興を買った事実が、この国をの名を地図から永遠に消し去った。
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