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*** リラクトの巫女 ***
リラクト・ヒルク・アウラ。
世界地図はこの国を中心にしたものが一番多く出回っている。その理由は、国土の面積、領域の広さ、人口、経済規模といった点で、他国の追従を許さないためである。
机上に広げた地図には、リラクトのある浮遊大陸ノーラヒルクを中心に、いくつかの主要な島が描かれている。
少女、というにはどこか貫禄がある女性は、手に持つ駒で机を鳴らしている。リズムが取れてきた辺りで、その手は止まる。彼女は自分自身がどのような立場にある人間なのか、最近理解したところだった。物事を決める立場であるというのは、大きなプレッシャーとなる。
煙の出ている火種はまだいい。煙の発生源に目を凝らし、消せる準備をすれば良い。
問題は、まだ煙の出ていないものだ。
「オーガ、マントの件もあるし、”ハレルヤ”の残党も何をしでかすか分からない。そうでなくても復興作業に各国との交渉とやることがあるのに、どうしてこんなタイミングなんだ」
ヴィオレッタ・ヨウムガンドはリラクト・ヒルク・アウラの”巫女”である。その立場はクーデター前までは義憤に燃える護国の戦士としての”巫女”。今は、国の行く先に悩まさせる、国防担当としての”巫女”である。飾りとして用意された立場であったが、彼女自身はそれを是とせず、今や名実ともに国防の責を負っている。
「出せて2機」
リラクトにおいて巫女とは、国教における象徴であるとともに、今では最高司祭、なおかつ国政を担う者である。困ったことに、戦後において彼女たちの権力は一個人に与えられるものとしては著しく巨大なものとなった。彼女たちにそれを許すのは、他の人間とは明らかに違う力があるためである。
熾烈を極めた先の大戦は、リラクトに起こったクーデターによって終端を迎えた。敵国の侵攻を留めつつ、”やり過ぎていた”リラクトの中央を抑えることができたのは、一重に、”機械天使”があり、それを操る”巫女”たちが手を取り合ったからだ。と記録されている。
機械天使。
神より賜りし天の遣い。未知の機械でできた巨人は、空を駆け、地を穿つ力を持ち、そして何より、選ばれた少女以外をその身に乗せることはない。この存在があればこそ、リラクトは覇権を握り、政務の素人である彼女らが最高位に成った時も、破綻が訪れることはなかった。
ただ、長年、機械天使に乗って力を示し続けてきたヴィオレッタからすると、結局は兵器であり、駒なのだという、昔の政治家と変わらない認識に至っている。とはいえ強力な駒だ。これがあるから、リラクトは世界の天秤を傾かせ続けられる。
新しく見つかったトラブルに対して、その力を割かなければならない。
機械天使は数に限りがある。現在稼働しているのは自身の機体を含めて8機。そのうち2機はパイロットである巫女が幼く、まだ錬成段階にある。1機は「旅に出る」と言って失踪中だ。
残り5機。自分ともう一人は会議やら演説やらで予定が詰まりきっている。そうなると、1機をトラブルシュータ―として国内に残したいため、案件に出せる機体は最大2機になる。
できれば外に出す機械天使は少なくしたい。
ここで問題なのが、この新規案件の重要度が思いのほか高そうだということだ。
その案件は失敗すると、可能性として、敵国が1個師団で攻めてきた場合よりも危険になりうる。
「2機だ。この件は必ず成功させる」
ヴィオレッタは手持ちの駒の中から、ひと際装飾に凝った赤色と青色のものを取り、地図に置いた。南端の島、その少し離れたところの何もない空間。つまり、海の底に。
(数日前に発された信号、私たちの機械天使が反応を示したということは――)
新たな機械天使。1機でパワーバランスを揺るがす可能性のある存在が、唐突に現れた。”敵”に見つかる前に、リラクト――ヴィオレッタたちがそれを手に入れなければならない。
*** 星見観測所 ***
そこは地図で言えば最北端にある、小さな離島。そこに建てられた煉瓦の建物は、遥か昔に建造され、今もなお同じ役割を続けている。空を観測し、未知を追い求め、そして記録する。名をユーリィ星見観測所。
そこで働く観測員の少女、クララは望遠鏡で見つけた流星に胸を高鳴らせていた。
大きさはそれなりに大きいが、地上に落ちてくるころには小さくなっているのが常だ。しかし、それは長らく燃え続けている。光の強さが衰えることはなく、昼下がりでも輝き続けている。手元の加算時計がちょうど1分を記録した。
「新記録ですっ! しょちょーっ!」
望遠鏡から目を離すことはできない。そのため、声を張り上げて所長を呼ぶ。珍しいものが見えれば、必ず所長を呼ぶことになっている。科学者としてはもっとじっくり観察したいが、自分一人が見たと言い張るものよりも、権威ある人に共著者となってもらった方が、事実として認められることが多い。そういう理論で、この観測所では、観測員は何かを見つけたら、もう一人別の人間を同席させることになっている。
なお、今この観測所にいる権威のある人は、所長しかいない。副所長とか、えらい教授とか、研究員とか、そういった人はいない。クララ以外の観測員もいない。なので、所長を呼び出すしかない。
「しょちょー? 早く来てください! すごい! これゼッタイ新記録ですよ! すごい!」
白髪交じりの頭を掻きながら、初老の男性がドタドタと足音を立てる。
「クララ君、本当にスゴイものを見つけたんだろうね? この前なんてすぐ近くを浮遊してた小石を新大陸だって勘違いして――」
「そんなことよりも見てくださいっ」
クララは補助眼鏡に移動し、本体の接眼鏡を空ける。
「どれどれ……」
補助眼鏡の照準を修正する。対象はちょうど身にまとっていた火炎を振り払ったところだった。
「これは……星ではないな」
倍率の低い補助眼鏡ではよく見えないが、それでも、隕石とは違う雰囲気をまとっているのを感じる。
「あー……見失った。観測限界だ」
そういって所長は接眼鏡から目を離す。望遠鏡で落下物を観察するのは結構難しい。落下物の速度に合わせて望遠鏡の角度を微調整し続ける必要がある。その操作が追いつかなくなれば、対象を見失ってしまうことになる。また、落下する対象を見る望遠鏡の視角が水平に近くなると、その操作の難易度が極端に上昇する。とはいえ、そこまで来ると、対象のすぐ下には生活高度(大きな島が多く、人が多く生活している高度)があり、障害物の数も多くなる。どちらにしろ、観測できなくなるので、水平以下は観測限界と呼ばれている。
「すごいな。最後まで燃え尽きなかったし、あれは明らかに人工物だ。短い間だったから細部までは見られなかったが、形状は……飛行船に近い。全体が金属のようなもので出来ている。金属か……ガラスか?」
「人工物ですか……」
クララは、観測史上最大の隕石だ! と期待していたのだが、それが人工物であると聞いて落胆した。人が作ったものだとすると、その発見を発表したところで良いことがあるとは思えない。
「いや、これは落胆することではないと思うぞ。あれは、どう見ても普通じゃない」
「と、言いますと?」
「あれは、宇宙船だ」
宇宙船。
宇宙と聞いて、クララはこの星、アウラ・エアの構造を思い出す。アカデミーで天文学の講義を受けたときに聞いた話だ。
アウラ・エアに住む人類は、おおよそ多くの人が「大地」と聞いて、リラクトやエルスキー、ローレライのような「大きな島」を思浮かべる。というのも、そもそも普通の生活をしていれば、目に入る地面というものは足をつけている島であるからだ。
ではどこに「大地」があるのか。これについては、回答が二つに分かれる。「無い」と答えるもの。そして、足元を指さすもの。足元といっても、自分が今立っている場所ではなく、更に下の、雲より下の。奈落と呼ばれる領域を指さしている。
学者たちで優勢となっている説は、アウラエアは層構造の球体であるとされている。球の中心から外側に向けて、星核、表層、大気層となっており、大気層が人類の住む「島」がある領域で、大気と浮かぶ島々で構成されている。そして表層はそのほとんどが水で覆われる「海」で構成されているとされる。ただ、表層の一部分は海よりも少し高度が高く、島と同じような物質で出来ている「大地」があるとされる。星核については謎が詰まっている。
そして、この球体の星はどこにあるのか? という疑問が投げかけられると、天文学者はこう答える。
星は宇宙に浮かんでいるのだ。
その宇宙を旅する為の、物語上の飛行船が、宇宙船と呼ばれる。
つまり、宇宙船が観測されたということは、
1.どこかの国が宇宙に飛び立ち歴史に新たな1ページを書き加えた
2.物語にあるように、宇宙に科学技術を持つ生命体がいて、それがこの星に到達した
3.聖書にあるように、神様の遣いの天使がこの星に降り立った。(聖書が書かれたのが200年前らしいので、おそらく200年ぶりに)
さて。クララは顎に手を当て、首を傾げ、おさげを揺らした。
そして、その言葉が本当だとすると、(1以外の説が採用されたとすると)これがどんな結果に結びつくのかという想像がつくと、クララは飛び上がった。
「た、たたたたたっ、大変じゃないですか!」
その存在が記録できれば、宇宙という神秘に近づく一歩に、大きな一歩になる。
「そうだ。大変な発見だ。だが、当然だが観測の次にしなければならないことがある」
「フィールドワークですねっ! その……」
この観測所は常に人手不足なため、フィールドワークには慣れている所長が向かい、クララは留守番をしていることが多い。そもそもクララは観測員として雇われているのであって、研究者ではないため当然ではあるのだが。それでも、研究者を志している一人としては、フィールドワークについて行って、経験を積んでいきたいところである。
「それなんだが、急いで行きたいのだが、学会がな……。そこで、クララ。君に頼みたいことがある」
「!」
「今回のフィールドワーク、君に依頼したい」
「しょ、しょちょー!」
その後、クララは荷物をまとめ、所長は落下地点を計算して割り出した。
向かう先は南の島、ヒーヒーリ・ローレライ。
リラクト、エルスキーを経由して上陸し、聞き込みをすることになるから、移動にはまる2日かかる計算だ。とにかく急いで出発する必要がある。
「行ってきますっ! 学会頑張ってくださいね所長!」
大きなザックを背負ったクララは、観測所に残る所長に手を振る。クララは出発直前の飛行艇に急いで乗り込み、とりあえず一つ安心する。
一方、観測所に残った所長は、観測員を乗せた飛行艇が飛び立ち、水平線の先にある座標に向かって行ったのを尻目に、小さくため息をついた。
「すまんな」
*** とある機関 報告書 ***
『10/12 アウラ・エアの衛星軌道付近に未確認の宇宙船を発見
対象をU3に指定
10/13 U3が落下フェーズに突入
南緯14.73西経31.11に落下
対処プロトコルa2を要請
*U3...未登録機体3号
*a2...捜査部隊の派遣
宇宙・対外担当官 セルゼオ・G・ミラージュ 』
『 a2の要請を棄却する。
プロトコルa1を命令する。
U3を捜査し、危険度判定を行うこと。
参謀本部 』
リラクト・ヒルク・アウラ。
世界地図はこの国を中心にしたものが一番多く出回っている。その理由は、国土の面積、領域の広さ、人口、経済規模といった点で、他国の追従を許さないためである。
机上に広げた地図には、リラクトのある浮遊大陸ノーラヒルクを中心に、いくつかの主要な島が描かれている。
少女、というにはどこか貫禄がある女性は、手に持つ駒で机を鳴らしている。リズムが取れてきた辺りで、その手は止まる。彼女は自分自身がどのような立場にある人間なのか、最近理解したところだった。物事を決める立場であるというのは、大きなプレッシャーとなる。
煙の出ている火種はまだいい。煙の発生源に目を凝らし、消せる準備をすれば良い。
問題は、まだ煙の出ていないものだ。
「オーガ、マントの件もあるし、”ハレルヤ”の残党も何をしでかすか分からない。そうでなくても復興作業に各国との交渉とやることがあるのに、どうしてこんなタイミングなんだ」
ヴィオレッタ・ヨウムガンドはリラクト・ヒルク・アウラの”巫女”である。その立場はクーデター前までは義憤に燃える護国の戦士としての”巫女”。今は、国の行く先に悩まさせる、国防担当としての”巫女”である。飾りとして用意された立場であったが、彼女自身はそれを是とせず、今や名実ともに国防の責を負っている。
「出せて2機」
リラクトにおいて巫女とは、国教における象徴であるとともに、今では最高司祭、なおかつ国政を担う者である。困ったことに、戦後において彼女たちの権力は一個人に与えられるものとしては著しく巨大なものとなった。彼女たちにそれを許すのは、他の人間とは明らかに違う力があるためである。
熾烈を極めた先の大戦は、リラクトに起こったクーデターによって終端を迎えた。敵国の侵攻を留めつつ、”やり過ぎていた”リラクトの中央を抑えることができたのは、一重に、”機械天使”があり、それを操る”巫女”たちが手を取り合ったからだ。と記録されている。
機械天使。
神より賜りし天の遣い。未知の機械でできた巨人は、空を駆け、地を穿つ力を持ち、そして何より、選ばれた少女以外をその身に乗せることはない。この存在があればこそ、リラクトは覇権を握り、政務の素人である彼女らが最高位に成った時も、破綻が訪れることはなかった。
ただ、長年、機械天使に乗って力を示し続けてきたヴィオレッタからすると、結局は兵器であり、駒なのだという、昔の政治家と変わらない認識に至っている。とはいえ強力な駒だ。これがあるから、リラクトは世界の天秤を傾かせ続けられる。
新しく見つかったトラブルに対して、その力を割かなければならない。
機械天使は数に限りがある。現在稼働しているのは自身の機体を含めて8機。そのうち2機はパイロットである巫女が幼く、まだ錬成段階にある。1機は「旅に出る」と言って失踪中だ。
残り5機。自分ともう一人は会議やら演説やらで予定が詰まりきっている。そうなると、1機をトラブルシュータ―として国内に残したいため、案件に出せる機体は最大2機になる。
できれば外に出す機械天使は少なくしたい。
ここで問題なのが、この新規案件の重要度が思いのほか高そうだということだ。
その案件は失敗すると、可能性として、敵国が1個師団で攻めてきた場合よりも危険になりうる。
「2機だ。この件は必ず成功させる」
ヴィオレッタは手持ちの駒の中から、ひと際装飾に凝った赤色と青色のものを取り、地図に置いた。南端の島、その少し離れたところの何もない空間。つまり、海の底に。
(数日前に発された信号、私たちの機械天使が反応を示したということは――)
新たな機械天使。1機でパワーバランスを揺るがす可能性のある存在が、唐突に現れた。”敵”に見つかる前に、リラクト――ヴィオレッタたちがそれを手に入れなければならない。
*** 星見観測所 ***
そこは地図で言えば最北端にある、小さな離島。そこに建てられた煉瓦の建物は、遥か昔に建造され、今もなお同じ役割を続けている。空を観測し、未知を追い求め、そして記録する。名をユーリィ星見観測所。
そこで働く観測員の少女、クララは望遠鏡で見つけた流星に胸を高鳴らせていた。
大きさはそれなりに大きいが、地上に落ちてくるころには小さくなっているのが常だ。しかし、それは長らく燃え続けている。光の強さが衰えることはなく、昼下がりでも輝き続けている。手元の加算時計がちょうど1分を記録した。
「新記録ですっ! しょちょーっ!」
望遠鏡から目を離すことはできない。そのため、声を張り上げて所長を呼ぶ。珍しいものが見えれば、必ず所長を呼ぶことになっている。科学者としてはもっとじっくり観察したいが、自分一人が見たと言い張るものよりも、権威ある人に共著者となってもらった方が、事実として認められることが多い。そういう理論で、この観測所では、観測員は何かを見つけたら、もう一人別の人間を同席させることになっている。
なお、今この観測所にいる権威のある人は、所長しかいない。副所長とか、えらい教授とか、研究員とか、そういった人はいない。クララ以外の観測員もいない。なので、所長を呼び出すしかない。
「しょちょー? 早く来てください! すごい! これゼッタイ新記録ですよ! すごい!」
白髪交じりの頭を掻きながら、初老の男性がドタドタと足音を立てる。
「クララ君、本当にスゴイものを見つけたんだろうね? この前なんてすぐ近くを浮遊してた小石を新大陸だって勘違いして――」
「そんなことよりも見てくださいっ」
クララは補助眼鏡に移動し、本体の接眼鏡を空ける。
「どれどれ……」
補助眼鏡の照準を修正する。対象はちょうど身にまとっていた火炎を振り払ったところだった。
「これは……星ではないな」
倍率の低い補助眼鏡ではよく見えないが、それでも、隕石とは違う雰囲気をまとっているのを感じる。
「あー……見失った。観測限界だ」
そういって所長は接眼鏡から目を離す。望遠鏡で落下物を観察するのは結構難しい。落下物の速度に合わせて望遠鏡の角度を微調整し続ける必要がある。その操作が追いつかなくなれば、対象を見失ってしまうことになる。また、落下する対象を見る望遠鏡の視角が水平に近くなると、その操作の難易度が極端に上昇する。とはいえ、そこまで来ると、対象のすぐ下には生活高度(大きな島が多く、人が多く生活している高度)があり、障害物の数も多くなる。どちらにしろ、観測できなくなるので、水平以下は観測限界と呼ばれている。
「すごいな。最後まで燃え尽きなかったし、あれは明らかに人工物だ。短い間だったから細部までは見られなかったが、形状は……飛行船に近い。全体が金属のようなもので出来ている。金属か……ガラスか?」
「人工物ですか……」
クララは、観測史上最大の隕石だ! と期待していたのだが、それが人工物であると聞いて落胆した。人が作ったものだとすると、その発見を発表したところで良いことがあるとは思えない。
「いや、これは落胆することではないと思うぞ。あれは、どう見ても普通じゃない」
「と、言いますと?」
「あれは、宇宙船だ」
宇宙船。
宇宙と聞いて、クララはこの星、アウラ・エアの構造を思い出す。アカデミーで天文学の講義を受けたときに聞いた話だ。
アウラ・エアに住む人類は、おおよそ多くの人が「大地」と聞いて、リラクトやエルスキー、ローレライのような「大きな島」を思浮かべる。というのも、そもそも普通の生活をしていれば、目に入る地面というものは足をつけている島であるからだ。
ではどこに「大地」があるのか。これについては、回答が二つに分かれる。「無い」と答えるもの。そして、足元を指さすもの。足元といっても、自分が今立っている場所ではなく、更に下の、雲より下の。奈落と呼ばれる領域を指さしている。
学者たちで優勢となっている説は、アウラエアは層構造の球体であるとされている。球の中心から外側に向けて、星核、表層、大気層となっており、大気層が人類の住む「島」がある領域で、大気と浮かぶ島々で構成されている。そして表層はそのほとんどが水で覆われる「海」で構成されているとされる。ただ、表層の一部分は海よりも少し高度が高く、島と同じような物質で出来ている「大地」があるとされる。星核については謎が詰まっている。
そして、この球体の星はどこにあるのか? という疑問が投げかけられると、天文学者はこう答える。
星は宇宙に浮かんでいるのだ。
その宇宙を旅する為の、物語上の飛行船が、宇宙船と呼ばれる。
つまり、宇宙船が観測されたということは、
1.どこかの国が宇宙に飛び立ち歴史に新たな1ページを書き加えた
2.物語にあるように、宇宙に科学技術を持つ生命体がいて、それがこの星に到達した
3.聖書にあるように、神様の遣いの天使がこの星に降り立った。(聖書が書かれたのが200年前らしいので、おそらく200年ぶりに)
さて。クララは顎に手を当て、首を傾げ、おさげを揺らした。
そして、その言葉が本当だとすると、(1以外の説が採用されたとすると)これがどんな結果に結びつくのかという想像がつくと、クララは飛び上がった。
「た、たたたたたっ、大変じゃないですか!」
その存在が記録できれば、宇宙という神秘に近づく一歩に、大きな一歩になる。
「そうだ。大変な発見だ。だが、当然だが観測の次にしなければならないことがある」
「フィールドワークですねっ! その……」
この観測所は常に人手不足なため、フィールドワークには慣れている所長が向かい、クララは留守番をしていることが多い。そもそもクララは観測員として雇われているのであって、研究者ではないため当然ではあるのだが。それでも、研究者を志している一人としては、フィールドワークについて行って、経験を積んでいきたいところである。
「それなんだが、急いで行きたいのだが、学会がな……。そこで、クララ。君に頼みたいことがある」
「!」
「今回のフィールドワーク、君に依頼したい」
「しょ、しょちょー!」
その後、クララは荷物をまとめ、所長は落下地点を計算して割り出した。
向かう先は南の島、ヒーヒーリ・ローレライ。
リラクト、エルスキーを経由して上陸し、聞き込みをすることになるから、移動にはまる2日かかる計算だ。とにかく急いで出発する必要がある。
「行ってきますっ! 学会頑張ってくださいね所長!」
大きなザックを背負ったクララは、観測所に残る所長に手を振る。クララは出発直前の飛行艇に急いで乗り込み、とりあえず一つ安心する。
一方、観測所に残った所長は、観測員を乗せた飛行艇が飛び立ち、水平線の先にある座標に向かって行ったのを尻目に、小さくため息をついた。
「すまんな」
*** とある機関 報告書 ***
『10/12 アウラ・エアの衛星軌道付近に未確認の宇宙船を発見
対象をU3に指定
10/13 U3が落下フェーズに突入
南緯14.73西経31.11に落下
対処プロトコルa2を要請
*U3...未登録機体3号
*a2...捜査部隊の派遣
宇宙・対外担当官 セルゼオ・G・ミラージュ 』
『 a2の要請を棄却する。
プロトコルa1を命令する。
U3を捜査し、危険度判定を行うこと。
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