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第三十二章 騎士たちの宴

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「大丈夫? 二人とも……」

 アルは少しおろおろしながら、友人たちに声をかける。ルカに与えられたであろう地獄の訓練(という名目での仕返し)から帰ってきたフィアとシストは集会所のテーブルに伏せていた。余程辛い訓練を受けてきたらしく、フィアもシストも、すっかり伸びてしまっている。どうにか二人を励まそうとするが、何をどうしたら良いのかわからないレベルに疲れ果てているようで。水は飲んだ方が良いよ、とグラスを差し出したけれど二人ともそれに手を伸ばす気力すらない様子だ。なすすべもなし、といった具合である。
 シストは顔を上げて、隣で潰れているパートナーに声をかけた。

「フィア、お前、化け物か。あれだけしごかれても平然としてやがって……」

 信じられない、とシストは呟く。彼の言う通り、フィアはルカや他の騎士たちがいる前では幾らしごかれようとも涼しい顔をしていたのだ。まるでこれくらいの訓練何ともない、とでも言いたげに。シストは完全にバテきっていたというのに、フィアはいつも通りに平然としていた。……今は人並み以上にぐったりしているけれど。
 シストの言葉にフィアは顔を上げて、溜息を吐いた。そして、いつもより少し掠れた声で言った。

「人が居る所で醜態を晒したくなかった。……それだけだ」

 別に平然としていた訳ではない。シスト同様、ダメージは受けていた。しかしそれを表面に出さなかっただけ。弱っている姿を仲間に見られるのが嫌だったから。フィアがそう呟くように言うと、シストはパートナーを恨めしげに見る。

「……そのプライド、いつか自分の首を絞めるぞ」
「喋るな、俺を喋らせるな。体力使う」

 ぐったりと弱弱しい声でそういうフィア。もうこれ以上口を開く気力もないらしく、また完全に顔を伏せてしまう。冷たいテーブルが気持ち良いのか、うぅ、と小さく唸っている。フィアがこんな状況になるというのは非常に珍しい。一体どんな訓練を受けたのか、とアルは首を傾げた。
 雪狼の騎士の中でも体力のあるはずの二人がただの訓練でこんなに疲れ果てることはまずあり得ない。先刻のルカとのやり取りを見る限り、彼に散々しごかれたのだろうということは容易に予想がつくが……一体何をされたら、こんなことになるのだろうか、と純粋に疑問だった。

「フィア、何をしてきたらそうなるの……?」

 アルが恐る恐る訊ねると、フィアはシストに聞けといわんばかりにシストを指差した。躊躇いがちにシストに視線を移せば、一つ溜息を吐いてから、シストは口を開いた。

「……ランニング」
「え」

 ランニング。返ってきたのは予想外の言葉。ランニングくらいなら、いつもやらされているだろうに、とアルは黄色の瞳を瞬かせる。アルの表情を読み取ったのだろう。シストは苦笑気味にそんな軽いもんじゃないよ、と言った。

「ランニング。他の奴らの倍走らされた。挙句の果てにそのまま剣の訓練なんかさせられてさぁ。ランニングの後休憩なしで剣術、挙句ルカの相手を三回もこなせば、誰だってこうなるよ」

 そんなシストの解説に、アルは大きく目を見開いた。

「え、ルカ様の相手を、三回も、ですか?!」

 想像するだけでぞっとする。アルは自分がそんな目に遭った訳でもないのに顔を青褪めさせた。ルカはこの騎士団一の剣士だ。そんな騎士の相手を一度するだけでも、体力を使うだろうに、それを三回。殊に、フィアもシストもプライドが高い挙句、騎士としての誇りもある。訓練とはいえ、本気でかかるに決まっている。本気で強い相手と剣の手合わせ。それがどれほどに体力を削るかということは、そういった訓練をしないアルでも容易に推測できた。

「え、と元気出してください……」

 そんな仕打ちに遭った二人を励ます方法は、思いつかない。でも、このままぐったりしているのも見ていられないし何とかして元気付けなくては。アルはそう思って必死に二人に声をかける。
 その時だった。

「あらあら、お疲れのようね」

 すぐ近くでクスクスと笑い声。鈴のようなその声は、明らかに女性のもの。騎士団に所属する騎士に女性は存在しない。そんな環境で騎士にこのような声のかけ方をする人間は、一人しか居ない。それは、疲れ果てている二人にもわかったのだろう。声の主に気付いた瞬間、ぐったりしていた二人はバネ仕掛けの玩具のように勢いよく体を起こした。
 フィアとシストに声をかけたその人物は二人を見て笑っていた。人懐っこい笑みを浮かべる女性にフィアとシストは頭を下げる。

「陛下……申し訳ありません。このような情けない姿を……あぁ、お恥ずかしい」

 フィアは額に手を押しあて、呻くように言った。頬が真っ赤に染まっているのは、この暑さのためだけではないだろう。シストも恥ずかしそうに頬を掻いている。
 そう、彼らの元に来たのはこの国の女王、ディナ。この国を治める頭の良い女性だ。以前フィアが顔を合わせたディアノ同様に、左が翡翠、右が紅色の瞳。双子、というだけにディアノによく似た容姿ではあるが、ディアノよりも幼く、人懐っこい表情で、笑顔が可愛らしい女王だ。彼女がくすくすと笑う度にこげ茶色の髪がふわりと揺れる。

―― そういえば……

 ふと疑問に思ったように、フィアはディナの方を見た。不思議そうに首を傾げる彼女に、問いかける。

「何故、陛下がこのような所に……?」

 女王が騎士の棟に来ることは滅多にない。彼女には彼女の居住空間があるし、何より女王の仕事があるのだから。幼い頃から仕事に慣れている彼女でも、このような場所……騎士の棟にきて遊んでいる時間などあるはずもない。仕事ではなくとも作法の稽古だの管弦の練習だの他国との手紙のやり取りだのと多忙な彼女。それなのに、今この時間に女王が此処にいることは、不思議以外の何物でもない。

 フィアの問いに、可笑しそうに笑いながら、ディナは答えた。

「ふふ。アンバーが誘いに来たのよ。宴会を開くので良かったら陛下も参加してくださいって。喜んで、お返事しちゃったわ」

 そう言って、彼女は無邪気に微笑む。そんな彼女の返答と反応に、フィアは驚いて蒼の目を見開いた。

―― アンバー様という人がよくわからない……

 フィアは感心すると同時に少し呆れた。王族に騎士が誘いをかけるなど、恐らくほかの国、他の騎士団ではありえないことだろう。下手をすれば、除隊されかねない。
 しかし、どうやら女王本人は楽しみにしているらしい。子供のように目を輝かせながら、ほうと息を吐いた。

「私、そういったものに参加することって、あんまりないのよ」

 彼女はそう言って嬉しそうに表情を綻ばせている。彼女は元来女王というよりは、元気な町娘のような気質なのだ。時折城を抜け出しては家臣たちを心配させるという、お転婆な女性だった。そのことを思い出してか、シストもフィアも思わず笑みをこぼした。恐らく、止めたところでこの女王は宴会に参加することだろう。
 ディナは楽しみだわ、と呟いて、左右で色の違う瞳を細める。

「久しぶりに騎士の皆とも話をしたかったの。貴方たちも行くのでしょう?」

 ディナがそう言って微笑むと、フィアは頷いて、答えた。

「えぇ。そろそろ移動しようか、と」

 本当はもう少しゆっくり休んでから、と思っていたのだが、思わぬ訪問者の御蔭で疲れも何もかも吹き飛んだ。そう思いながらフィアが言うと、ディナはまぁ! と嬉しそうな声をあげた。

「じゃあ、一緒に行きましょう?」

 ディナがそう言うと、フィアとシストは頷き、同時に手を出した。そして、穏やかに微笑みながら、声を合わせて言う。

「俺たちが御一緒させていただいてよろしいのならば、喜んで」

 そんな二人を見たディナは驚いたように目を見開いたが、すぐに破顔し、二人の手を取った。嬉しそうに細められた色の違う双眸が宝石のように光った。

「ふふ。素敵な私の騎士様たちにエスコートしてもらえるの嬉しいわ。さぁ、アルも此方にいらっしゃいな」

 一緒に行きましょう? と彼女は言う。自分が仕える女王に名を呼ばれたことに驚きつつ、アルも嬉しそうに笑って頷いた。

「はい! 是非! 御一緒させてくださいっ!」

 無邪気に笑って、アルもディナたちの隣を歩く。時折廊下を歩く騎士たちに驚かれながら、三人は女王と一緒に宴会の会場に向かったのだった。

***

 フィアたちが宴会の間に着いた時には既に多くの騎士が集まっていた。賑やかな声があちらこちらから聞こえてくる。既に酒を飲んでいる者もいるようで、淡いアルコールの香りが微かに漂ってきた。大分酔っている者もいるらしく、大きな笑い声も聞こえてくる。

「万が一にも任務が入ったらどうするつもりだろう」

 フィアは少し眉を寄せて、そう呟く。恐らくないだろうが、急に任務が入ったら、みんな揃って酔っぱらって出動、なんて笑えない。呆れたような顔をしている彼に、シストはまぁまぁ、と笑いかけた。

「こういう機会も大分久しぶりだし、皆はしゃいでるんだろう」

 たまには良いじゃないか、とシストは言う。確かに普段からいつもこの調子では困るが、基本的にこの騎士団の騎士たちは生真面目でしっかり者が多い。たまに息抜きではしゃぐくらい、良いか。そう思いフィアが息を吐いた時、誰かの明るい声が聞こえた。

「あ、来た来た! 陛下!」

 無邪気にディナを呼ぶ、明るい声。見れば、水兎の統率官……アンバーが手を振っている。心の底から嬉しそうな笑みを浮かべて。周囲に居る部下であろう騎士たちが慌てながら、彼の行動を諌めていた。普通の国ならば、騎士がこのような行動をとった時点でクビになっても可笑しくない。無礼だ、と憤慨する国主もいるだろう。
 しかしそうならないのがこの国であり、この国の国主、ディナ・ローディナスである。彼女は自分に向かって手を振る彼に微笑みながら手を振り返した。

「アンバー、今日はお招きありがとう! 楽しませてもらうわね」

 そう言ってまるで子供のように無邪気に笑う彼女に、フィアは目を点にする。否、彼女の性格的に怒ることはないだろうとは思っていたが……流石に、ラフ過ぎやしないか、と。

「あはは……陛下らしいなぁ」

 シストは彼女の様子を見て、くつくつと笑う。フィアもその様子を見て、呆れるを通り越して、笑ってしまった。

「僕たちも行こうか、フィア。折角だし」

 アルはぽん、とフィアの肩を叩いて言う。彼は彼で、久し振りのこんな宴会が楽しみで仕方がないのだろう。子猫のそれのような黄色の瞳がきらきらと輝いている。そんな親友に頷き返して、フィアも表情を綻ばせた。
 空いている席を見つけて座り、一息吐く。ディナは他の騎士たちに声をかけに行ってしまった。相変わらずに自由な方だ、とフィアは苦笑する。この城にはかなり多くの騎士が居るというのに、その一人一人の顔と名前、所属を覚えていて、顔を合わせると笑顔で挨拶を、言葉を交わしてくれる。そんな女王だからこそ、自分たちは、ディアロ城騎士団の騎士たちは、彼女とこの国とを守ろうと心から思えるのだろう。そんなことを考え、フィアは表情を緩める。

「……すごい人数だな」

 シストが食堂の中をぐるりと見渡して、そう呟いた。フィアもつられたように辺りを見渡してみた。シストの言葉通り、改めて見てみると、結構な数の騎士がいる。アンバーは本当に全ての部隊の者に声をかけたらしい。任務で不在の騎士以外、皆が此処に集まっているのだろう。なかなかに圧巻の光景である。

「アンバー様の顔の広さというか、行動力の凄さが窺えますねぇ」

 アルはそう呟きながら黄色い瞳をくりくりと丸くしていた。彼はあまり人が多いところに出向く習慣がないため、こういった場所に来て少々緊張している様子でもある。フィアはそんな彼の頭を軽く撫でてやった。

「お飲み物は、何をお持ちいたしましょうか?」

 給仕のメイドが微笑んで三人に訊ねる。シストは笑顔で弱めのカクテルを、と頼む。穏やかで人当たりの良い笑顔にメイドは頬を赤く染める。そして、フィアたちの方へ視線を向けて、問うた。

「そちらの方は?」
「酒は要らない、オレンジジュースで良い」
「あ、僕も同じでお願いします」

 フィアは不愛想に返し、アルが笑顔で手を上げる。そんなややちぐはぐな三人の組み合わせに少し戸惑った様子のメイドは、すぐに笑顔を浮かべて、頷いた。

「かしこまりました」

 少々お待ちください、といった彼女は一礼して、三人から離れていく。シストは机に頬杖をつきながら溜息を吐いて、言った。

「フィア、お前もう少し愛想よくしろ。騎士たるもの、女性に対してはもう少し愛想良くするべきじゃないのか?」

 シストは少し揶揄うような声で言う。フィアは視線を揺るがせて、そっと嘆息した。

「それはそう思うけれど……」

 そこで一度言葉を切った彼は不貞腐れたような顔をして、ぼそりと言った。

「……あれが精一杯だ」
「フィアは女の子相手にあんまりおしゃべりしないもんねぇ」

 アルも苦笑まじりにそう言う。フィアは元々人付き合いが得意な方ではない。女性に対しては比較的穏やかな接し方をするが、騎士たちと距離の近いメイドに対してはどう接すれば良いのか計りかねているのだろう。

「女性には親切に、っていつも口煩いくらいに言う癖に」

 不器用だなお前、とシストは笑った。フィアはむっとした顔をして視線を逸らした。

「……それとこれとは、別だ」

 確かに、フィアは守るべき女性を大切にする。敬意を払い、口調や振る舞いも気を使うべきだとも思っている。しかし、敬うのと愛想を良くするのは、別物。女性に親しく、というのも少々限界があるようだった。そんなフィアの様子に、シストは大袈裟に肩を竦め、首を振る。

「融通が利かないっていうか、何というか」
「でもフィア、メイドさんたちにもそれなりにモテるんだよね」

 前にお花貰っていたでしょう、というアルの思わぬ暴露にフィアは顔を赤くして、上ずった声で言った。

「いや、俺は別に、どちらかといえばシストの方がモテるだろう」
「話を逸らすなって。アル、詳しく」

 シストは笑みを浮かべながらアルにそう促す。え、と躊躇った顔をするアルをフィアは必死に止めた。

「やめろ!」

 アルが言ったことは事実だが、それを揶揄われるのは流石に気恥ずかしい。話すな、いや話せ、とフィアとシストの板挟みになりながら、アルは目を白黒させていた。
 そんなやり取りをしていれば、メイドたちが騎士たちのもとに飲み物を持ってきた。先刻三人に注文を取りに来た彼女より幾分年下に見える……寧ろ、まだ幼さの残る少女だ。精一杯に笑顔を浮かべているようなのだが、若干表情が硬い。

「お、お待たせいたしました……ッ!?」

 と、彼女は何かに躓いて転びかけた。丸い瞳がさらに大きく見開かれる。
 フィアは咄嗟に彼女を庇った。片手で転ばないようメイドを支え、もう一方の手で飲み物の乗ったトレイを受け止めるという離れ業を披露し、周りで歓声が上がった。パフォーマンスの一環とでも勘違いされたのか、拍手すら巻き起こる始末だ。
 フィアはふうっと一つ息を吐いた。そして自分が抱きとめている彼女に声をかける。

「……大丈夫か?」

 深い蒼の瞳で見つめられ、まだ幼いメイドは思わず固まった。すぐ近くにあるのは、雪狼一と名高い騎士の整った顔立ち。情報の処理が追いつかず黙ったままになる彼女に、フィアはもう一度声をかけた。

「怪我はないか?」
「え、あ、は、はい! 申し訳ありませんでした!」

 漸く硬直の解けた彼女はそう上ずった声をあげる。ばっと身体を起こした彼女はフィアの手からトレイを受け取り、慌てて頭を下げる。騒ぎを聞きつけた他のメイドたちも慌てて走ってきて頭を下げた。

「申し訳ありませんフィア様! 何をやっているのカレン?!」 

 そう言って、少し年上のメイドは深深と頭を下げる。彼女の話によればどうやらカレンという名らしいそのメイドはまだ新米らしく、初仕事に緊張していたようだ。彼女は叱られて、しゅんとして項垂れてしまった。フィアはその様子をじっと見つめる。

「本当に、申し訳ありません」

 消え入りそうな声で詫びるカレン。暫し悩むような顔をしたあと、フィアはそっと溜息を吐いた。そのまま、彼女の頭に手を置いて……

「誰にでも失敗はつきものだ。次から気をつければ良いだろう。とにかく、貴女に怪我がなくて、良かった。俺は全然気にしていない。だから……そんな顔をするな。折角の可愛らしい顔が台無しだ」

 さらりと、そう言い、緩く微笑んで見せる。彼の行動と表情にカレンは酷く驚いた顔をした。騎士の仲間は勿論、メイドたちの中でもフィアの無愛想さは有名らしく、他のメイドたちも唖然としている様子だ。

「……何だ」

 フィアは彼女を元気づけようとしてああいった行動をとってみたのだが、やはり恥ずかしくなったようで、プイと顔を背けてしまった。

「……あまり見るな。見世物じゃないぞ」

 言い訳めかして言うフィア。カレンはカレンでぽかんとしている。暫しそのまま固まっていたが、はっとすると顔を赤くした。

「あ、あの……あ、ありがとうございます! 本当に、申し訳ありませんでした……っ!」
勢い良く頭を下げると、カレンは風のように戻っていった。長い黒のスカートがふわりと大きく揺れる。
「……あれではまた転ぶぞ」

 カレンの様子を見ながら、ぼそりとフィアは呟く。と、フィアの肩に誰かがぽん、と手を置いた。驚いてそちらへ視線を向ければ、にやいやと笑う、相棒の顔。

「やればできるんじゃないか、フィア?」

 手の主……シストが揶揄うようにフィアに言った。アメジスト色の瞳が悪戯っぽく細められている。そんな彼の様子に、フィアは顔を赤くして、眼を背けた。そして、掠れた声で弁解する。

「ほ、放っておく訳にはいかないだろう。あんなに落ち込んでいるのに。女性に優しくするのは、騎士として当然だ」

 そう言って、フィアは小さく咳払いをする。決まり悪そうな彼を見て、シストは面白がるように笑っている。

「ははっ。そういうことにしておいてやるよ」

 そう言いながら、シストはぽんぽんとフィアの頭を撫でる。まるで子供を褒めるかのように。そんな相棒の行動にフィアはすっかり拗ねて、そっぽを向いたのだった。
 
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