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電話が終わって朝食を作ろうとしたら階段を降りてくる音がした。あさひが起きたと思い近づいて声をかけた。
「あさひ、おはよう。ん?」
なんだか様子がおかしい…
「どうしていないの?」目が潤んで涙が溢れた。
「あさひ?」
「どうして?一緒にいてくれるって言ったのに…目が覚めたら…幸樹さんいなかった」
「そうか、1人は寂しかったよな」
抱き上げてソファに座り、あさひを対面で抱きしめた。
運命の番と離れると不安になるらしく、この前はなかなか目が覚めなかったが…あさひは番が成立しても不安は拭えていないのか?
しばらく泣いていたあさひが顔を上げた。目はまだ潤んで、真っ赤になっていた。
「幸樹…さん。ごめんなさい」
「いいよ。俺もあさひがまだ寝てるからそのまま寝かしてて悪かったな」
「なんかよくわからないけど、目が覚めたら急に不安になっちゃったんです。そしたらベッドに1人ぼっちで…」
「そうか…いいんだよ。俺にはいっぱい甘えても。あさひの気持ち全部教えてくれていいから」
「幸樹さんがいないと寂しいんです。ずっと、ずっと一緒にいたいです」
「あぁ…一緒にいる。あさひに黙ってどこかに行ったりなんかしない。俺の仕事は家でできる仕事だから、これからはあさひにも手伝ってもらおうかな?」
「僕にもできますか?」
「できるよ。絶対に大丈夫だから。そういえば腹減ったか?簡単にホットサンドと野菜スープを作ろうと思うけど、あさひ手伝ってくれる?」
「僕、作ったことがないです」
「大丈夫。教えるから」
「あのーもしかして幸樹さんは、ご飯作れる方ですか?」
「バレた?まぁーこの歳で1人暮らしだからな、色々できるようになるさ」
「どうして、今まで誰とも結婚をしなかったんですか?」
「雪乃のことがあって俺は人を幸せにする資格がないと思ってた。だから誰とも結婚する気はなかったんだが…あさひと出会った。そしたら歳の差とかそんなのどうでもよくなったくらい、あさひのこと好きになった。でもこの歳の差は埋められないけどな」
「そうですね。17歳も離れてますよ」
「親子と間違えられそうだな」
「幸樹さんはおじさんには見えないです」
「あさひは優しいな。じゃあ作るか」
2人で作ったホットサンドと野菜スープは1人で作って食べるものとは、まるで違う優しい味がした。一緒に片付けをして、一緒に洗濯を干して、一緒に昼寝もした。あさひはずいぶんと甘えんぼうだった。もしかしたら寂しい子ども時代を過ごしていたのかもしれない。そんなあさひを俺はめちゃくちゃ甘えさせたくて、ずっと俺の側にいさせた。
あさひの叔父、叔母のこと、従業員のことは達也の病院で話をした方がいいと思った。きっと達也からも助言がもらえるだろうから。今言って、動揺するのはわかる万が一発作が起きても病院の方が安心だろう。
「あさひ、そろそろ病院行こうか?その前にこの書類に名前、書けるか?」
番契約書と婚姻届を広げると
「昨日、書けなくて…」
「大丈夫。書いてくれるね」
ボールペンを差し出すと、1文字1文字、丁寧に綺麗な字で書いてくれた。俺はその姿に涙が出そうになった。
書類を大切にジャケットの内側にしまい、車のキーを持ってあさひに手を差し出すと、俺の胸に飛び込んできた。いつもはそっと握って一緒に外に出るのに…
「あさひ?」
「もう少し、幸樹さんにぎゅってしてもらいたいっ」
外が不安なんだろう。いくら番ができたとしても、まだあさひのPTSDは完全には治っていない。病院は特に不特定多数の人が出入りするから余計に不安になったり緊張してるのだろう。少し呼吸の荒いあさひを落ち着かせるようにギュッと抱きしめて頭や背中を撫でてやる。すると先ほどまで不安そうだった顔に笑みが戻ってきて、呼吸も落ち着いてきた。しばらく抱きしめて落ち着いた頃、俺たちは病院に向かった。
「あさひ、おはよう。ん?」
なんだか様子がおかしい…
「どうしていないの?」目が潤んで涙が溢れた。
「あさひ?」
「どうして?一緒にいてくれるって言ったのに…目が覚めたら…幸樹さんいなかった」
「そうか、1人は寂しかったよな」
抱き上げてソファに座り、あさひを対面で抱きしめた。
運命の番と離れると不安になるらしく、この前はなかなか目が覚めなかったが…あさひは番が成立しても不安は拭えていないのか?
しばらく泣いていたあさひが顔を上げた。目はまだ潤んで、真っ赤になっていた。
「幸樹…さん。ごめんなさい」
「いいよ。俺もあさひがまだ寝てるからそのまま寝かしてて悪かったな」
「なんかよくわからないけど、目が覚めたら急に不安になっちゃったんです。そしたらベッドに1人ぼっちで…」
「そうか…いいんだよ。俺にはいっぱい甘えても。あさひの気持ち全部教えてくれていいから」
「幸樹さんがいないと寂しいんです。ずっと、ずっと一緒にいたいです」
「あぁ…一緒にいる。あさひに黙ってどこかに行ったりなんかしない。俺の仕事は家でできる仕事だから、これからはあさひにも手伝ってもらおうかな?」
「僕にもできますか?」
「できるよ。絶対に大丈夫だから。そういえば腹減ったか?簡単にホットサンドと野菜スープを作ろうと思うけど、あさひ手伝ってくれる?」
「僕、作ったことがないです」
「大丈夫。教えるから」
「あのーもしかして幸樹さんは、ご飯作れる方ですか?」
「バレた?まぁーこの歳で1人暮らしだからな、色々できるようになるさ」
「どうして、今まで誰とも結婚をしなかったんですか?」
「雪乃のことがあって俺は人を幸せにする資格がないと思ってた。だから誰とも結婚する気はなかったんだが…あさひと出会った。そしたら歳の差とかそんなのどうでもよくなったくらい、あさひのこと好きになった。でもこの歳の差は埋められないけどな」
「そうですね。17歳も離れてますよ」
「親子と間違えられそうだな」
「幸樹さんはおじさんには見えないです」
「あさひは優しいな。じゃあ作るか」
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あさひの叔父、叔母のこと、従業員のことは達也の病院で話をした方がいいと思った。きっと達也からも助言がもらえるだろうから。今言って、動揺するのはわかる万が一発作が起きても病院の方が安心だろう。
「あさひ、そろそろ病院行こうか?その前にこの書類に名前、書けるか?」
番契約書と婚姻届を広げると
「昨日、書けなくて…」
「大丈夫。書いてくれるね」
ボールペンを差し出すと、1文字1文字、丁寧に綺麗な字で書いてくれた。俺はその姿に涙が出そうになった。
書類を大切にジャケットの内側にしまい、車のキーを持ってあさひに手を差し出すと、俺の胸に飛び込んできた。いつもはそっと握って一緒に外に出るのに…
「あさひ?」
「もう少し、幸樹さんにぎゅってしてもらいたいっ」
外が不安なんだろう。いくら番ができたとしても、まだあさひのPTSDは完全には治っていない。病院は特に不特定多数の人が出入りするから余計に不安になったり緊張してるのだろう。少し呼吸の荒いあさひを落ち着かせるようにギュッと抱きしめて頭や背中を撫でてやる。すると先ほどまで不安そうだった顔に笑みが戻ってきて、呼吸も落ち着いてきた。しばらく抱きしめて落ち着いた頃、俺たちは病院に向かった。
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