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「春樹さん、あさひくん、このままで大丈夫なんでしょうか」
「そうね、まだ起きてくれないわね」
立花さんに会えないと聞いて不安になってしまったあさひくんは過呼吸を起こして、そのまま倒れてしまった。いつ起きてくれるのかわからないけど、2日も眠ったままだ。
「普通は運命の番と会うと、大体はすぐに番になるでしょ?でも幸樹さんは、あさひくんの気持ちを考えて我慢してる。自分の腕を噛んでまでラットにならないように理性抑えて…幸樹さんに会えなくなって、そしたら不安が募って、あさひくんは発作が起きたんだと思うの。運命の番は離れ離れはダメだってことの証明なんだけど」
「あさひくん、起きてくれるんでしょうか」
「自分の殻に閉じこもってしまったんだと思うの。大丈夫だといいけど、こればかりはいつ起きてくれるようになるかはわからないって…幸樹さんにあさひくんのこと連絡したら今日には帰ってくるって、目が覚めるといいけど…」
夕方、焦った様子で立花さんが帰ってきた。
「あさひは?」
「まだ眠ったまま…起きないの」
「そうか…あさひ、帰ってきたよ。これからはずっと一緒にいるから、もう何も心配することなんてないから、だから…目を覚ましてくれないか?」
静かな寝息を立てて眠っているあさひくんの頭を撫でてるけど、あさひくんは目を覚さない。
「幸樹さん、どこに行ってたの?」
「あぁ…あさひの住んでた所にな」
「あさひくんの?」
「警察官時代のつてで、あさひのことを調べてた」
「それで?」
「あさひの親代わりの叔父と叔母と会ってきた」
「大丈夫だったの?」
「向こうは、あさひのこと探してたよ。金持ちのアルファの元に行かせようと計画してたみたいでな。お金も前金で300万、もらってたらしい」
「そんな…」
「だから、そのもらってたお金と、あさひのお母さんの立替てた病院代、今までのあさひの養育費全て諸々で1,000万払ってきた。その代わり、もう2度とあさひに関わるなって誓約書にサインもさせた」
「そんな大金…多すぎでしょ」
「まぁな…おかげで貯金はパァーだ」
「立花さん、そんな…」
「足りない金は親に頭下げたよ。自分の持分じゃ足りなかったからな。でもこの時ばかりは金持ちの親がいてよかったって感謝したよ」
「幸樹さん、そこまでして」
「そりゃそうだろ。俺はあさひと番になりたい。好きだからな。でもあさひは番になるのを拒むだ。俺に相応しくないって、でもなんとなくわかったよ。お母さんが番に捨てられたのがやっぱり大きいんだろう。もしかしたら自分もそうなるかもって…そしたら、お母さんみたいになるんじゃないかって、それが多分、大きいんだろう。それとあの叔父と叔母、あさひの働いてたお金もほとんど取ってたらしいし、職場のやつに聞いてもオメガだから知らない所に行っても、そのうち捨てられるって所詮オメガは捨てられる運命だから、幸せになんかなれないって言われてたらしい」
「酷いよ」
「あぁ…そんなこと言われたら未来も希望もなくなるわな」
「これからどうするの?」
「どうやったら、あさひが俺のことわかってくれるか…いつか番になれるように努力するしかないよな」
「そうだね。きっとなれるよ。応援してるから」
そんな話をしてたとき達也が病室にやってきた。
「幸樹やっときたのか。あさひくんの様子は?」
「あさひくんは変わらない…幸樹さん、あさひくんの前の家に行ったって」
「そうなのか?」
「あぁ…行ってきて解決したよ。もう二度とあんな家には返さない。あさひの荷物も持ってきたけど、ほとんど荷物なんてなかったよ。大変な思いをして生きてたんだよ、あさひは出会えてよかったよ」
「あぁ…よかったな。それじゃああさひくんが目を覚ますように、誓いのキスでもしたらいいんじゃないか?」
「そんなこと…」
「おとぎ話の鉄板だろ?」
「おとぎ話って」
「運命の番もある意味、おとぎ話みたいなものだろ。一生に出会える人なんてごくわずかなんだから…真実の愛で目が覚めるなんて素敵じゃないか」
「そんな夢みたいなこと…あるわけないだろ?いつ目が覚めるかなんて医者のお前だってわからないのに…」
「そうなんだけどな。でも夢か夢じゃないかどうかは、試してみたらいい。じゃあ佐竹さん、春樹行くぞ。何かあったらナースコール押してくれ。それじゃあ」
そう言って、俺たちは部屋を出た。
「北見先生、いいんですか?」
「大丈夫だと思いますよ。運命の番は匂いで番だってわかるんです。だから、あさひくんが幸樹の匂いを感じとれば必ず目が覚めるって信じてます。もしそうだとしたら、学会で発表しないといけないですけどね」
「達也、あさひくん目が覚めるといいね」
「そうだな。今はみんなで信じよう。あさひくんが目を覚ましてくれることを」
「そうね、まだ起きてくれないわね」
立花さんに会えないと聞いて不安になってしまったあさひくんは過呼吸を起こして、そのまま倒れてしまった。いつ起きてくれるのかわからないけど、2日も眠ったままだ。
「普通は運命の番と会うと、大体はすぐに番になるでしょ?でも幸樹さんは、あさひくんの気持ちを考えて我慢してる。自分の腕を噛んでまでラットにならないように理性抑えて…幸樹さんに会えなくなって、そしたら不安が募って、あさひくんは発作が起きたんだと思うの。運命の番は離れ離れはダメだってことの証明なんだけど」
「あさひくん、起きてくれるんでしょうか」
「自分の殻に閉じこもってしまったんだと思うの。大丈夫だといいけど、こればかりはいつ起きてくれるようになるかはわからないって…幸樹さんにあさひくんのこと連絡したら今日には帰ってくるって、目が覚めるといいけど…」
夕方、焦った様子で立花さんが帰ってきた。
「あさひは?」
「まだ眠ったまま…起きないの」
「そうか…あさひ、帰ってきたよ。これからはずっと一緒にいるから、もう何も心配することなんてないから、だから…目を覚ましてくれないか?」
静かな寝息を立てて眠っているあさひくんの頭を撫でてるけど、あさひくんは目を覚さない。
「幸樹さん、どこに行ってたの?」
「あぁ…あさひの住んでた所にな」
「あさひくんの?」
「警察官時代のつてで、あさひのことを調べてた」
「それで?」
「あさひの親代わりの叔父と叔母と会ってきた」
「大丈夫だったの?」
「向こうは、あさひのこと探してたよ。金持ちのアルファの元に行かせようと計画してたみたいでな。お金も前金で300万、もらってたらしい」
「そんな…」
「だから、そのもらってたお金と、あさひのお母さんの立替てた病院代、今までのあさひの養育費全て諸々で1,000万払ってきた。その代わり、もう2度とあさひに関わるなって誓約書にサインもさせた」
「そんな大金…多すぎでしょ」
「まぁな…おかげで貯金はパァーだ」
「立花さん、そんな…」
「足りない金は親に頭下げたよ。自分の持分じゃ足りなかったからな。でもこの時ばかりは金持ちの親がいてよかったって感謝したよ」
「幸樹さん、そこまでして」
「そりゃそうだろ。俺はあさひと番になりたい。好きだからな。でもあさひは番になるのを拒むだ。俺に相応しくないって、でもなんとなくわかったよ。お母さんが番に捨てられたのがやっぱり大きいんだろう。もしかしたら自分もそうなるかもって…そしたら、お母さんみたいになるんじゃないかって、それが多分、大きいんだろう。それとあの叔父と叔母、あさひの働いてたお金もほとんど取ってたらしいし、職場のやつに聞いてもオメガだから知らない所に行っても、そのうち捨てられるって所詮オメガは捨てられる運命だから、幸せになんかなれないって言われてたらしい」
「酷いよ」
「あぁ…そんなこと言われたら未来も希望もなくなるわな」
「これからどうするの?」
「どうやったら、あさひが俺のことわかってくれるか…いつか番になれるように努力するしかないよな」
「そうだね。きっとなれるよ。応援してるから」
そんな話をしてたとき達也が病室にやってきた。
「幸樹やっときたのか。あさひくんの様子は?」
「あさひくんは変わらない…幸樹さん、あさひくんの前の家に行ったって」
「そうなのか?」
「あぁ…行ってきて解決したよ。もう二度とあんな家には返さない。あさひの荷物も持ってきたけど、ほとんど荷物なんてなかったよ。大変な思いをして生きてたんだよ、あさひは出会えてよかったよ」
「あぁ…よかったな。それじゃああさひくんが目を覚ますように、誓いのキスでもしたらいいんじゃないか?」
「そんなこと…」
「おとぎ話の鉄板だろ?」
「おとぎ話って」
「運命の番もある意味、おとぎ話みたいなものだろ。一生に出会える人なんてごくわずかなんだから…真実の愛で目が覚めるなんて素敵じゃないか」
「そんな夢みたいなこと…あるわけないだろ?いつ目が覚めるかなんて医者のお前だってわからないのに…」
「そうなんだけどな。でも夢か夢じゃないかどうかは、試してみたらいい。じゃあ佐竹さん、春樹行くぞ。何かあったらナースコール押してくれ。それじゃあ」
そう言って、俺たちは部屋を出た。
「北見先生、いいんですか?」
「大丈夫だと思いますよ。運命の番は匂いで番だってわかるんです。だから、あさひくんが幸樹の匂いを感じとれば必ず目が覚めるって信じてます。もしそうだとしたら、学会で発表しないといけないですけどね」
「達也、あさひくん目が覚めるといいね」
「そうだな。今はみんなで信じよう。あさひくんが目を覚ましてくれることを」
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