僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

樹の気持ち

寝ちゃったか……奈月の寝顔を見ながら俺はつぶやいた。まさか奈月から上書きしてほしいとおねだりをされるとは思ってなかった。

でもずっと奈月はそのことを気にして1人で悩んでいたのか……俺は別に奈月と繋がれなくても奈月を手放すことはしないし、繋がる方法以外で奈月に愛を伝えていると思っていたが、やっぱり不安だったんだろう。そんな経験なんてしなければ奈月は普通に女性と恋愛していたかと思うとそれは許せないが…でも結局、俺たちはどこかで運命的に出会っていたと思う。そう思いたい。

「奈月、愛してるよ」
安心しきって寝ている頬に唇を寄せた。
奈月との初めての夜を楽しみにしながら奈月を抱きしめた。どこに連れて行ったら奈月は喜んでくれるだろう？さっきは海が見えて海鮮が美味しいところがいいなぁ～と言ってたな。それなら……部屋からも海が見えて部屋に露天風呂があるところがいいな。できれば離れみたいな場所なら奈月と愛し合って奈月の声が聞こえたとしても他の人に聞かれることはない。そして部屋食なら奈月が起き上がれなくても食べさせてあげれるな。そんなことを考えていると俺のモノが期待してきているのがわかった。やっと奈月をこの手で抱けるんだ。ずっと先だと思っていた未来がもうすぐそこにあると思うだけで期待で胸が膨らんでくる。この気持ちのまま寝ることはできなくて、結局俺は欲望を吐き出した。若くもない歳なのに奈月を思うだけで抑えられなくなる。当日は大丈夫だろうか？

やっと落ち着いて奈月の隣に寝転びながらタブレットで宿を探してみたけれど自分が思い描いているような宿は近くでは見つからなかった。確かに遠くに行ければいいが…俺の仕事もあるからせいぜい1泊しか泊まれないだろう。それだとやっぱり近場がいいんだけど、俺が希望するのは部屋に露天風呂があって、部屋食ができて、海が見える客室で…ってそこでふと思い出した。

「頼むしかないか…」
父の友達でリゾートホテルを経営してる人がいる。俺も小さいころから知ってて家族旅行はいつも彼のホテルに泊まっていた気がする。俺が大きくなったときに叔父さんに言われた言葉を思い出した。

「樹が大きくなって誰か本当に好きな人と泊まりたいホテルがあったら教えろよ。叔父さんが持ってるホテルで好きなところに泊まらせてやるから。その代わり1回だけな」
って笑って言ってた気がする。時計を見ると23時を少し回っている時間だった。こんな時間に非常識かもと思いながらおじさんにメッセージを送った。

〝お久しぶりです樹です。夜分遅くに申し訳ありません。
叔父さんにお願いがあって連絡しました。急なんですが来週の週末に泊まりたいんですが、叔父さんの持ってるホテルで条件に合うところはありますか？近場で海が見えて露天風呂がついてる客室で、できれば離れで人にあまり会わなくて、部屋で海鮮の食事ができるところって難しいですよね。欲張りすぎてごめんなさい。もしそんなホテルがあったらいつでもいいので教えてください〟
送信っと。きっと明日には叔父さんから連絡が来るかもしれない。俺の期待に合うホテルが見つかることを期待した。