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奈月へのプレゼント1

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「奈月、疲れてないか?」

「はい大丈夫です。太一さんと仲良く話ができて嬉しかったです」
そう言ってくれた奈月に狭山と2人で何を話してたの?と聞いてみると

「えっ?言わなきゃダメですか?」
と戸惑いがちに言われてしまって、今は言いたくないんだと思って、いいよ。言わなくても…ごめんごめんと言ってあげた。

本当は奈月のことは全て知りたいと思ったが、そんなに言いずらいことだったのか…まぁ狭山に後で聞いてみるか…と思うことにした。

「そういえば奈月、スマホは欲しい?これから狭山と友達になったんだからメールもしたりできるようになるし、俺ともできるぞ」
そう言うと目をキラキラさせて欲しいです。と言ったのに、すぐにやっぱりいらないです。と言い出した。

「なんで?欲しいでしょ?俺は奈月と離れてても電話で話したいんだけどな」
と言うと奈月は教えてくれた。
「僕はスマホは持っちゃいけないって…」

「なんで?もしかしてお母さん?」
あの女をお母さんと呼ぶのは嫌だけど、奈月の産みの母親には違いない。

「ダメって言われてたんです。スマホの料金を払えるお金があるなら渡せって言われてて、それにお友達もいないし連絡を取るところもなかったし」

「でも今は俺がいるし、卓也も狭山も八巻先生も、それに…母さんやハルさんだって、奈月のキプスもそろそろ外れるだろ?そしたら両手が使えるようになるから、そしたら犬や猫たちの写真も撮れるようになるよ。楽しいことばかりだよ」

「いいんですか?僕、働いてないのに」
そういう奈月を抱きしめて俺のそばにいてくれるし、ハルさんと一緒にご飯だって作ってくれる。それで十分だよ。俺からの奈月に頑張ってるプレゼントだ。と言うと嬉しそうに

「樹さんありがとうございます」
笑顔で言ってくれた奈月の頬にキスをすると耳まで真っ赤になってしまった。そんなところもメチャクチャ可愛い。

そのあと八巻先生を送りにいった卓也が戻ってきたので、俺と同じ機種の色違いを契約してもらいにいってもらった。本当は連れていきたかったが、まだ外が怖そうな奈月に無理はさせたくない。
新しいスマホが届くまで俺のスマホを触らせて使い方を教えてあげた。

「凄いですね」

「うん。奈月のスマホにもこのアプリを入れたらメッセージでやり取りできるからね。みんなにも奈月がスマホを持ったこと教えてあげないとな」
ニコニコと嬉しそうにしている奈月を見て、もっと早く買ってあげたらよかったと思った。相変わらずギプスをして書きずらいのに手紙をくれるけど、スマホになればもっと楽になるし、たくさんやり取りが残る。本当にこれからが楽しみだ。

そういえば…週明けは病院に連れて行かないといけないが大丈夫だろうか?もし可能なら狭山も連れて行った方が安心するだろうか?気がついたら奈月はハルさんと猫たちと遊んでいた。
少しずつだが猫たちも奈月に慣れてきたようだ。俺にはイマイチな反応だが、奈月がおやつだよ。と言うと尻尾を高くあげて付いていくようになったしな。奈月の笑顔をこれからも見たいと思いながら卓也の帰りを待っていた。


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