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奈月くんの気持ち
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「そろそろ下に降りてご飯でも食べようか」
しゃがんでいた体を起こした。でもベットに座っている奈月くんは動かない。
「奈月くん?」
声をかけても1点を見つめて黙っていた。なんて声をかけようかと思ってたら
「樹さんは聞かないんですか?」
「ん?何が?」
「僕がなんで倒れたのか」
「いいよ。無理して言わなくても」
「でも…」
「いいんだ。奈月くんが苦しくなるなら聞かないよ。聞いて欲しいなら聞くけど、どうしたい?」
ベットに腰掛けてる奈月くんの目線に合うように腰を下ろしながら聞いた。
「嫌いになりますか?」
「奈月くんを?嫌いになんかならないよ」
「本当ですか?」
「本当。信じられない?」
「そんなことないけど…でも僕…」
「無理しなくていいから」
今にも泣き出しそうな奈月くんの頭を撫でた。すると樹さんと俺の首に手を回して抱きついてきた。びっくりして尻餅をついてしまったが奈月くんを抱き抱えた。俺の胸に顔を埋めて、首に回されている手は少し震えていた。俺は胡座をかいて、その上に奈月くんを乗せて背中を撫でていた。
「樹さんは怖くないです。大きくて安心します」
「そうか。そう言ってくれて嬉しいよ。大きいからって怖がられることもあるからな。奈月くんが落ち着くまでこうしてようか?」
「いいんですか?いやじゃないですか?」
「全然、むしろ嬉しいよ。頼ってもらえて」
「僕、細い人とか眼鏡かけてる人、髭がある人が怖いんです」
「俺はどれにも当てはまらないな」
「昔、嫌なことがあって…だから…」
「奈月くん思い出さなくていいから」
抱きしめる腕に力を込めた。言わなくても奈月くんの気持ちがわかった、どんなきっかけかわからないけど、きっと母親の彼氏にされたことを思い出してしまったのだろう。もしかしたらうなされたのかもしれない。健さんに会ってからだろうか奈月くんの食欲はまた一段と少なくなったとハルさんから聞いた。でもここで奈月くんが打ち明けたら少しは楽になるのかもしれない。そう思ってたら奈月くんが言い始めた。
「樹さん、僕、汚いんです」
「どういうこと?昨日ちゃんと洗ったよ」
「違うんです。僕…お母さんの彼氏に…でも嫌で嫌でたまらなくて、誰かに助けて欲しくて…でもいまだに思い出すだけで苦しくなったり、自分が自分でいられなくなりそうで怖いんです。でもそんなとき樹さんの笑った顔を思い出そうとしたんです。かっこよくて、目尻にシワができて大きな身体で僕を包んでくれる樹さんの姿を…会えてよかったって…でも、ダメだったみたいで」
思わず奈月くんの唇に唇を重ねてしまった。
「えっ」
と戸惑っている奈月くんに嫌だった?と聞くと嫌じゃないです。と答えてくれた。
「じゃあ俺が上書きしていい?」
「上書きですか?」
「そう奈月くんの嫌な思い出、全部俺との思い出にしようよ」
そう言ってもう一度、その柔らかい唇に重ねた。初めは合わせるだけのキスを繰り返し、少し口が開いた瞬間、舌を滑り込ませた。奈月くんの歯列をなぞり深いキスを交わす。奈月くんの力が抜けるのを感じて唇を離した。
「奈月くん好きだよ」
まだ言うのは早いかと思ったが、自分の気持ちを伝えると僕も、樹さんが好きです。これからも一緒にいたいです。と嬉しいことを言って抱きついてくれた。しばらく抱き合っていたらココが
「くぅーん」と鳴き始めたいつからいたのか…それとも俺たちのイチャイチャがココに伝わって奈月くんを抱きしめてる俺に嫉妬したのか…
「ココいたんだね。気が付かなかったよ」
「ココが俺を呼びに来てくれたんだ。奈月くんが心配だったんだな」
「ココありがとう」
そう言ってココを抱っこした奈月くんごと持ち上げてベッドに座らせた。
「そろそろお腹空いたか?ご飯食べに行かないか?」
「樹さん…」
「一緒に食べよう。ココも一緒にな」
「あっ」
「どうした?」
「ハリーとマックのご飯…昨日あげるねって約束したんです」
申し訳無さそうに言う奈月くんを抱きしめて大丈夫、きっとハルさんか母さんがあげてるよ。と伝えるとホッとした顔に戻った。
2人と1匹で1階に降りると足音に気がついたハリーとマックが尻尾を振って待っていた。
「ハリー、マックおはよう」優しく撫でてあげる奈月くんに笑顔が見えた。
ハルさんは奈月くん用に小さなおにぎりを用意してくれた。食べられる量が少しずつ増えてくれるといいなと思いながら、俺も大きなおにぎりを頬張った。
「奈月くん行ってくるね。帰ってきたら一緒にお風呂に入ろう」
「わかりました樹さん。行ってらっしゃい」
「奈月くん無理はしなくていいからね。あと腕が治ってからハルさんに字を教えてもらうといいよ。それまであのノートは俺が書くからね」
「いいんですか?」
「うん。さっき奈月くんの気持ち聞けたから、それで満足だよ。だけど1つお願いしてもいい?」
「なんですか?」
「行ってきますのハグさせて」
「はい…」
少し照れたような奈月くんを抱きしめて俺は卓也が迎えに来て車に乗り込んだ。
しゃがんでいた体を起こした。でもベットに座っている奈月くんは動かない。
「奈月くん?」
声をかけても1点を見つめて黙っていた。なんて声をかけようかと思ってたら
「樹さんは聞かないんですか?」
「ん?何が?」
「僕がなんで倒れたのか」
「いいよ。無理して言わなくても」
「でも…」
「いいんだ。奈月くんが苦しくなるなら聞かないよ。聞いて欲しいなら聞くけど、どうしたい?」
ベットに腰掛けてる奈月くんの目線に合うように腰を下ろしながら聞いた。
「嫌いになりますか?」
「奈月くんを?嫌いになんかならないよ」
「本当ですか?」
「本当。信じられない?」
「そんなことないけど…でも僕…」
「無理しなくていいから」
今にも泣き出しそうな奈月くんの頭を撫でた。すると樹さんと俺の首に手を回して抱きついてきた。びっくりして尻餅をついてしまったが奈月くんを抱き抱えた。俺の胸に顔を埋めて、首に回されている手は少し震えていた。俺は胡座をかいて、その上に奈月くんを乗せて背中を撫でていた。
「樹さんは怖くないです。大きくて安心します」
「そうか。そう言ってくれて嬉しいよ。大きいからって怖がられることもあるからな。奈月くんが落ち着くまでこうしてようか?」
「いいんですか?いやじゃないですか?」
「全然、むしろ嬉しいよ。頼ってもらえて」
「僕、細い人とか眼鏡かけてる人、髭がある人が怖いんです」
「俺はどれにも当てはまらないな」
「昔、嫌なことがあって…だから…」
「奈月くん思い出さなくていいから」
抱きしめる腕に力を込めた。言わなくても奈月くんの気持ちがわかった、どんなきっかけかわからないけど、きっと母親の彼氏にされたことを思い出してしまったのだろう。もしかしたらうなされたのかもしれない。健さんに会ってからだろうか奈月くんの食欲はまた一段と少なくなったとハルさんから聞いた。でもここで奈月くんが打ち明けたら少しは楽になるのかもしれない。そう思ってたら奈月くんが言い始めた。
「樹さん、僕、汚いんです」
「どういうこと?昨日ちゃんと洗ったよ」
「違うんです。僕…お母さんの彼氏に…でも嫌で嫌でたまらなくて、誰かに助けて欲しくて…でもいまだに思い出すだけで苦しくなったり、自分が自分でいられなくなりそうで怖いんです。でもそんなとき樹さんの笑った顔を思い出そうとしたんです。かっこよくて、目尻にシワができて大きな身体で僕を包んでくれる樹さんの姿を…会えてよかったって…でも、ダメだったみたいで」
思わず奈月くんの唇に唇を重ねてしまった。
「えっ」
と戸惑っている奈月くんに嫌だった?と聞くと嫌じゃないです。と答えてくれた。
「じゃあ俺が上書きしていい?」
「上書きですか?」
「そう奈月くんの嫌な思い出、全部俺との思い出にしようよ」
そう言ってもう一度、その柔らかい唇に重ねた。初めは合わせるだけのキスを繰り返し、少し口が開いた瞬間、舌を滑り込ませた。奈月くんの歯列をなぞり深いキスを交わす。奈月くんの力が抜けるのを感じて唇を離した。
「奈月くん好きだよ」
まだ言うのは早いかと思ったが、自分の気持ちを伝えると僕も、樹さんが好きです。これからも一緒にいたいです。と嬉しいことを言って抱きついてくれた。しばらく抱き合っていたらココが
「くぅーん」と鳴き始めたいつからいたのか…それとも俺たちのイチャイチャがココに伝わって奈月くんを抱きしめてる俺に嫉妬したのか…
「ココいたんだね。気が付かなかったよ」
「ココが俺を呼びに来てくれたんだ。奈月くんが心配だったんだな」
「ココありがとう」
そう言ってココを抱っこした奈月くんごと持ち上げてベッドに座らせた。
「そろそろお腹空いたか?ご飯食べに行かないか?」
「樹さん…」
「一緒に食べよう。ココも一緒にな」
「あっ」
「どうした?」
「ハリーとマックのご飯…昨日あげるねって約束したんです」
申し訳無さそうに言う奈月くんを抱きしめて大丈夫、きっとハルさんか母さんがあげてるよ。と伝えるとホッとした顔に戻った。
2人と1匹で1階に降りると足音に気がついたハリーとマックが尻尾を振って待っていた。
「ハリー、マックおはよう」優しく撫でてあげる奈月くんに笑顔が見えた。
ハルさんは奈月くん用に小さなおにぎりを用意してくれた。食べられる量が少しずつ増えてくれるといいなと思いながら、俺も大きなおにぎりを頬張った。
「奈月くん行ってくるね。帰ってきたら一緒にお風呂に入ろう」
「わかりました樹さん。行ってらっしゃい」
「奈月くん無理はしなくていいからね。あと腕が治ってからハルさんに字を教えてもらうといいよ。それまであのノートは俺が書くからね」
「いいんですか?」
「うん。さっき奈月くんの気持ち聞けたから、それで満足だよ。だけど1つお願いしてもいい?」
「なんですか?」
「行ってきますのハグさせて」
「はい…」
少し照れたような奈月くんを抱きしめて俺は卓也が迎えに来て車に乗り込んだ。
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