19 / 74
奈月くんの気持ち
しおりを挟む
「そろそろ下に降りてご飯でも食べようか」
しゃがんでいた体を起こした。でもベットに座っている奈月くんは動かない。
「奈月くん?」
声をかけても1点を見つめて黙っていた。なんて声をかけようかと思ってたら
「樹さんは聞かないんですか?」
「ん?何が?」
「僕がなんで倒れたのか」
「いいよ。無理して言わなくても」
「でも…」
「いいんだ。奈月くんが苦しくなるなら聞かないよ。聞いて欲しいなら聞くけど、どうしたい?」
ベットに腰掛けてる奈月くんの目線に合うように腰を下ろしながら聞いた。
「嫌いになりますか?」
「奈月くんを?嫌いになんかならないよ」
「本当ですか?」
「本当。信じられない?」
「そんなことないけど…でも僕…」
「無理しなくていいから」
今にも泣き出しそうな奈月くんの頭を撫でた。すると樹さんと俺の首に手を回して抱きついてきた。びっくりして尻餅をついてしまったが奈月くんを抱き抱えた。俺の胸に顔を埋めて、首に回されている手は少し震えていた。俺は胡座をかいて、その上に奈月くんを乗せて背中を撫でていた。
「樹さんは怖くないです。大きくて安心します」
「そうか。そう言ってくれて嬉しいよ。大きいからって怖がられることもあるからな。奈月くんが落ち着くまでこうしてようか?」
「いいんですか?いやじゃないですか?」
「全然、むしろ嬉しいよ。頼ってもらえて」
「僕、細い人とか眼鏡かけてる人、髭がある人が怖いんです」
「俺はどれにも当てはまらないな」
「昔、嫌なことがあって…だから…」
「奈月くん思い出さなくていいから」
抱きしめる腕に力を込めた。言わなくても奈月くんの気持ちがわかった、どんなきっかけかわからないけど、きっと母親の彼氏にされたことを思い出してしまったのだろう。もしかしたらうなされたのかもしれない。健さんに会ってからだろうか奈月くんの食欲はまた一段と少なくなったとハルさんから聞いた。でもここで奈月くんが打ち明けたら少しは楽になるのかもしれない。そう思ってたら奈月くんが言い始めた。
「樹さん、僕、汚いんです」
「どういうこと?昨日ちゃんと洗ったよ」
「違うんです。僕…お母さんの彼氏に…でも嫌で嫌でたまらなくて、誰かに助けて欲しくて…でもいまだに思い出すだけで苦しくなったり、自分が自分でいられなくなりそうで怖いんです。でもそんなとき樹さんの笑った顔を思い出そうとしたんです。かっこよくて、目尻にシワができて大きな身体で僕を包んでくれる樹さんの姿を…会えてよかったって…でも、ダメだったみたいで」
思わず奈月くんの唇に唇を重ねてしまった。
「えっ」
と戸惑っている奈月くんに嫌だった?と聞くと嫌じゃないです。と答えてくれた。
「じゃあ俺が上書きしていい?」
「上書きですか?」
「そう奈月くんの嫌な思い出、全部俺との思い出にしようよ」
そう言ってもう一度、その柔らかい唇に重ねた。初めは合わせるだけのキスを繰り返し、少し口が開いた瞬間、舌を滑り込ませた。奈月くんの歯列をなぞり深いキスを交わす。奈月くんの力が抜けるのを感じて唇を離した。
「奈月くん好きだよ」
まだ言うのは早いかと思ったが、自分の気持ちを伝えると僕も、樹さんが好きです。これからも一緒にいたいです。と嬉しいことを言って抱きついてくれた。しばらく抱き合っていたらココが
「くぅーん」と鳴き始めたいつからいたのか…それとも俺たちのイチャイチャがココに伝わって奈月くんを抱きしめてる俺に嫉妬したのか…
「ココいたんだね。気が付かなかったよ」
「ココが俺を呼びに来てくれたんだ。奈月くんが心配だったんだな」
「ココありがとう」
そう言ってココを抱っこした奈月くんごと持ち上げてベッドに座らせた。
「そろそろお腹空いたか?ご飯食べに行かないか?」
「樹さん…」
「一緒に食べよう。ココも一緒にな」
「あっ」
「どうした?」
「ハリーとマックのご飯…昨日あげるねって約束したんです」
申し訳無さそうに言う奈月くんを抱きしめて大丈夫、きっとハルさんか母さんがあげてるよ。と伝えるとホッとした顔に戻った。
2人と1匹で1階に降りると足音に気がついたハリーとマックが尻尾を振って待っていた。
「ハリー、マックおはよう」優しく撫でてあげる奈月くんに笑顔が見えた。
ハルさんは奈月くん用に小さなおにぎりを用意してくれた。食べられる量が少しずつ増えてくれるといいなと思いながら、俺も大きなおにぎりを頬張った。
「奈月くん行ってくるね。帰ってきたら一緒にお風呂に入ろう」
「わかりました樹さん。行ってらっしゃい」
「奈月くん無理はしなくていいからね。あと腕が治ってからハルさんに字を教えてもらうといいよ。それまであのノートは俺が書くからね」
「いいんですか?」
「うん。さっき奈月くんの気持ち聞けたから、それで満足だよ。だけど1つお願いしてもいい?」
「なんですか?」
「行ってきますのハグさせて」
「はい…」
少し照れたような奈月くんを抱きしめて俺は卓也が迎えに来て車に乗り込んだ。
しゃがんでいた体を起こした。でもベットに座っている奈月くんは動かない。
「奈月くん?」
声をかけても1点を見つめて黙っていた。なんて声をかけようかと思ってたら
「樹さんは聞かないんですか?」
「ん?何が?」
「僕がなんで倒れたのか」
「いいよ。無理して言わなくても」
「でも…」
「いいんだ。奈月くんが苦しくなるなら聞かないよ。聞いて欲しいなら聞くけど、どうしたい?」
ベットに腰掛けてる奈月くんの目線に合うように腰を下ろしながら聞いた。
「嫌いになりますか?」
「奈月くんを?嫌いになんかならないよ」
「本当ですか?」
「本当。信じられない?」
「そんなことないけど…でも僕…」
「無理しなくていいから」
今にも泣き出しそうな奈月くんの頭を撫でた。すると樹さんと俺の首に手を回して抱きついてきた。びっくりして尻餅をついてしまったが奈月くんを抱き抱えた。俺の胸に顔を埋めて、首に回されている手は少し震えていた。俺は胡座をかいて、その上に奈月くんを乗せて背中を撫でていた。
「樹さんは怖くないです。大きくて安心します」
「そうか。そう言ってくれて嬉しいよ。大きいからって怖がられることもあるからな。奈月くんが落ち着くまでこうしてようか?」
「いいんですか?いやじゃないですか?」
「全然、むしろ嬉しいよ。頼ってもらえて」
「僕、細い人とか眼鏡かけてる人、髭がある人が怖いんです」
「俺はどれにも当てはまらないな」
「昔、嫌なことがあって…だから…」
「奈月くん思い出さなくていいから」
抱きしめる腕に力を込めた。言わなくても奈月くんの気持ちがわかった、どんなきっかけかわからないけど、きっと母親の彼氏にされたことを思い出してしまったのだろう。もしかしたらうなされたのかもしれない。健さんに会ってからだろうか奈月くんの食欲はまた一段と少なくなったとハルさんから聞いた。でもここで奈月くんが打ち明けたら少しは楽になるのかもしれない。そう思ってたら奈月くんが言い始めた。
「樹さん、僕、汚いんです」
「どういうこと?昨日ちゃんと洗ったよ」
「違うんです。僕…お母さんの彼氏に…でも嫌で嫌でたまらなくて、誰かに助けて欲しくて…でもいまだに思い出すだけで苦しくなったり、自分が自分でいられなくなりそうで怖いんです。でもそんなとき樹さんの笑った顔を思い出そうとしたんです。かっこよくて、目尻にシワができて大きな身体で僕を包んでくれる樹さんの姿を…会えてよかったって…でも、ダメだったみたいで」
思わず奈月くんの唇に唇を重ねてしまった。
「えっ」
と戸惑っている奈月くんに嫌だった?と聞くと嫌じゃないです。と答えてくれた。
「じゃあ俺が上書きしていい?」
「上書きですか?」
「そう奈月くんの嫌な思い出、全部俺との思い出にしようよ」
そう言ってもう一度、その柔らかい唇に重ねた。初めは合わせるだけのキスを繰り返し、少し口が開いた瞬間、舌を滑り込ませた。奈月くんの歯列をなぞり深いキスを交わす。奈月くんの力が抜けるのを感じて唇を離した。
「奈月くん好きだよ」
まだ言うのは早いかと思ったが、自分の気持ちを伝えると僕も、樹さんが好きです。これからも一緒にいたいです。と嬉しいことを言って抱きついてくれた。しばらく抱き合っていたらココが
「くぅーん」と鳴き始めたいつからいたのか…それとも俺たちのイチャイチャがココに伝わって奈月くんを抱きしめてる俺に嫉妬したのか…
「ココいたんだね。気が付かなかったよ」
「ココが俺を呼びに来てくれたんだ。奈月くんが心配だったんだな」
「ココありがとう」
そう言ってココを抱っこした奈月くんごと持ち上げてベッドに座らせた。
「そろそろお腹空いたか?ご飯食べに行かないか?」
「樹さん…」
「一緒に食べよう。ココも一緒にな」
「あっ」
「どうした?」
「ハリーとマックのご飯…昨日あげるねって約束したんです」
申し訳無さそうに言う奈月くんを抱きしめて大丈夫、きっとハルさんか母さんがあげてるよ。と伝えるとホッとした顔に戻った。
2人と1匹で1階に降りると足音に気がついたハリーとマックが尻尾を振って待っていた。
「ハリー、マックおはよう」優しく撫でてあげる奈月くんに笑顔が見えた。
ハルさんは奈月くん用に小さなおにぎりを用意してくれた。食べられる量が少しずつ増えてくれるといいなと思いながら、俺も大きなおにぎりを頬張った。
「奈月くん行ってくるね。帰ってきたら一緒にお風呂に入ろう」
「わかりました樹さん。行ってらっしゃい」
「奈月くん無理はしなくていいからね。あと腕が治ってからハルさんに字を教えてもらうといいよ。それまであのノートは俺が書くからね」
「いいんですか?」
「うん。さっき奈月くんの気持ち聞けたから、それで満足だよ。だけど1つお願いしてもいい?」
「なんですか?」
「行ってきますのハグさせて」
「はい…」
少し照れたような奈月くんを抱きしめて俺は卓也が迎えに来て車に乗り込んだ。
157
お気に入りに追加
276
あなたにおすすめの小説
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

【完結】テルの異世界転換紀?!転がり落ちたら世界が変わっていた。
カヨワイさつき
BL
小学生の頃両親が蒸発、その後親戚中をたらいまわしにされ住むところも失った田辺輝(たなべ てる)は毎日切り詰めた生活をしていた。複数のバイトしていたある日、コスプレ?した男と出会った。
異世界ファンタジー、そしてちょっぴりすれ違いの恋愛。
ドワーフ族に助けられ家族として過ごす"テル"。本当の両親は……。
そして、コスプレと思っていた男性は……。
イケメン俳優は万年モブ役者の鬼門です
はねビト
BL
演技力には自信があるけれど、地味な役者の羽月眞也は、2年前に共演して以来、大人気イケメン俳優になった東城湊斗に懐かれていた。
自分にはない『華』のある東城に対するコンプレックスを抱えるものの、どうにも東城からのお願いには弱くて……。
ワンコ系年下イケメン俳優×地味顔モブ俳優の芸能人BL。
外伝完結、続編連載中です。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる