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お別れ
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会社に着くと、もうデルは着いていた。
「海斗~おはよう」
「デル…おはよう」
「どうした?元気ないな?透と喧嘩でもした?」
「ううん…そうじゃない…」
「そうか…今日から移動だからか…」
「まあ…ね。とりあえず、向こうに行く準備するね」
僕は寂しい気持ちを振り払うようにデスクの上の荷物をまとめた。
ふと引き出しを開けると自分の名刺が目に付いた。〝営業部 小沢 海斗〟「名刺は絶対に切らすなよ」そう透さんに言われて…切らさないようにしてきた。ここで3年間頑張ってきたんだ。色んな事がありすぎて感傷に浸っていると
「おはよう」いつものように透さんが入ってきた。昔はニコリともしなくて、怖くて怖くて、鬼上司と陰で呼んでいた。それが今はニコニコまではしないけど、少し表情が出てきたし、副社長…という重みもあるんだと思う。
「集合」透さんの声で覚悟を決めた。今日、辞令がおりて僕は秘書課に移動になる。
「前にも話したように、今日からデルがこの営業部に仲間入りだ。デルはきっと戦力になる。みんなも負けずによろしく頼むな。デルに拍手」大きい拍手をデルに送った。デルは少し照れた感じで「Many thanks to you all.みんな本当にありがとう」と流暢な英語で答えたものだから、ますます歓声が上がった。
「そして小沢は、今日から秘書課に移動だ。大変だと思うが頑張ってくれ。小沢にも拍手」
「3年間ありがとうございました」
僕は深く頭を下げた。なんだかやっぱり寂しい。それに…透さんの言い方も冷たかった…まぁ会社だし仕方ないよね。
みんながデルを囲んで話をしてるのを見ながら僕は最後に残った名刺をカバンの中にしまった。
荷物をまとめ終わっても、まだみんなは話をしていた。僕は小さい声でありがとうございました。と言ってダンボールを抱えてフロアーを後にした。誰にも見送られずにフロアーを出ると、なんだか悲しくなってきて持っていたダンボールにシミを1つ落とした。部屋の中はまたザワザワと話声が聞こえたが、僕が出てったことなんて誰も気づいていないんだ…そう思うと落ち込みそうな気持ちを堪えて秘書課がある階を押した。
秘書課のある階でエレベーターが開いたらそこには角谷さんが立っていた。
「小沢さん、ようこそ。今日からよろしくお願いします」
「いえっ、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「重そうだね。持つよ」
角谷さんにダンボールの荷物を持ってくれた。
わざわざ角谷さんがお迎えなんて…秘書課には、あの川上さんもいるんだよな…と思っていたら
「海斗くん?大丈夫かい?」角谷さんが足を止めて声をかけてくれた。
「すみません」
「ちょっと話しようか…こっち来て?」
給湯室に連れて行かれた。
「なんだか泣きそうな顔に見えるけどどうかしたの?」
「いえっ…すみません」
「今は、そーだな、透の叔父さんだって思って話してくれていいよ。だから教えて?何が辛いの?やっぱり秘書にはなりたくなかった?」
「いえっ…大丈夫です。本当に無理なんてしてないですから」
「海斗くんは無理しちゃうんだね。でもね…本音を出さないと、それがストレスになって病気になる人もいるんだよね。海斗くんはなんかほっとけないんだよね。どうしてかわからないけど…本当はもう社会人だから、そんな過保護にする必要なんてないのかもしれないけど…でも、透のパートナーだからかな?壊れて欲しくないんだよね」
「角谷さん…僕…弱い人間なんです。もう子供じゃないのに…子供みたいな態度取ったりしちゃって…」
「大丈夫だよ。気にしなくていいから…海斗くんの指導係は室長だから不安な事があったらすぐ聞いてね」
「ありがとうございます」
角谷さんと秘書課に行って、自己紹介や秘書についてのレクチャーを受けたりしてるうちにあっという間にお昼になっていた。
「海斗~おはよう」
「デル…おはよう」
「どうした?元気ないな?透と喧嘩でもした?」
「ううん…そうじゃない…」
「そうか…今日から移動だからか…」
「まあ…ね。とりあえず、向こうに行く準備するね」
僕は寂しい気持ちを振り払うようにデスクの上の荷物をまとめた。
ふと引き出しを開けると自分の名刺が目に付いた。〝営業部 小沢 海斗〟「名刺は絶対に切らすなよ」そう透さんに言われて…切らさないようにしてきた。ここで3年間頑張ってきたんだ。色んな事がありすぎて感傷に浸っていると
「おはよう」いつものように透さんが入ってきた。昔はニコリともしなくて、怖くて怖くて、鬼上司と陰で呼んでいた。それが今はニコニコまではしないけど、少し表情が出てきたし、副社長…という重みもあるんだと思う。
「集合」透さんの声で覚悟を決めた。今日、辞令がおりて僕は秘書課に移動になる。
「前にも話したように、今日からデルがこの営業部に仲間入りだ。デルはきっと戦力になる。みんなも負けずによろしく頼むな。デルに拍手」大きい拍手をデルに送った。デルは少し照れた感じで「Many thanks to you all.みんな本当にありがとう」と流暢な英語で答えたものだから、ますます歓声が上がった。
「そして小沢は、今日から秘書課に移動だ。大変だと思うが頑張ってくれ。小沢にも拍手」
「3年間ありがとうございました」
僕は深く頭を下げた。なんだかやっぱり寂しい。それに…透さんの言い方も冷たかった…まぁ会社だし仕方ないよね。
みんながデルを囲んで話をしてるのを見ながら僕は最後に残った名刺をカバンの中にしまった。
荷物をまとめ終わっても、まだみんなは話をしていた。僕は小さい声でありがとうございました。と言ってダンボールを抱えてフロアーを後にした。誰にも見送られずにフロアーを出ると、なんだか悲しくなってきて持っていたダンボールにシミを1つ落とした。部屋の中はまたザワザワと話声が聞こえたが、僕が出てったことなんて誰も気づいていないんだ…そう思うと落ち込みそうな気持ちを堪えて秘書課がある階を押した。
秘書課のある階でエレベーターが開いたらそこには角谷さんが立っていた。
「小沢さん、ようこそ。今日からよろしくお願いします」
「いえっ、こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「重そうだね。持つよ」
角谷さんにダンボールの荷物を持ってくれた。
わざわざ角谷さんがお迎えなんて…秘書課には、あの川上さんもいるんだよな…と思っていたら
「海斗くん?大丈夫かい?」角谷さんが足を止めて声をかけてくれた。
「すみません」
「ちょっと話しようか…こっち来て?」
給湯室に連れて行かれた。
「なんだか泣きそうな顔に見えるけどどうかしたの?」
「いえっ…すみません」
「今は、そーだな、透の叔父さんだって思って話してくれていいよ。だから教えて?何が辛いの?やっぱり秘書にはなりたくなかった?」
「いえっ…大丈夫です。本当に無理なんてしてないですから」
「海斗くんは無理しちゃうんだね。でもね…本音を出さないと、それがストレスになって病気になる人もいるんだよね。海斗くんはなんかほっとけないんだよね。どうしてかわからないけど…本当はもう社会人だから、そんな過保護にする必要なんてないのかもしれないけど…でも、透のパートナーだからかな?壊れて欲しくないんだよね」
「角谷さん…僕…弱い人間なんです。もう子供じゃないのに…子供みたいな態度取ったりしちゃって…」
「大丈夫だよ。気にしなくていいから…海斗くんの指導係は室長だから不安な事があったらすぐ聞いてね」
「ありがとうございます」
角谷さんと秘書課に行って、自己紹介や秘書についてのレクチャーを受けたりしてるうちにあっという間にお昼になっていた。
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