鬼上司と秘密の同居

なの

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大事にされてる

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「おはよう」
透さんの声が営業部に響いた。みんな仕事の手を止めてこっちを向いた。透さんとデルの間に挟まれた僕はみんなの視線がこわくて俯いてしまった。

「ちょっといいか?突然の報告だが…小沢が来月から秘書課に移動することが決まった。こっちの都合で報告が遅くなった。その代わりといってはなんだが、来月からは、デル・ランドルが配属される。デルは他社のマーケティング部にいたからきっといい情報をくれると思う。英語はもちろん、日本語、フランス語もできるからな。みんなよろしく頼む。デルはまだ事務作業が終わってないから終わり次第になるが…今週は日本にいる予定で出社するからみんな色々教えてやってくれ。各自、色々聞きたいだろうが、それは、仕事に支障がないように頼む。を止めて悪かったな」
僕は一応頭を下げてから席に行こうとした。

「とりあえずデルは小沢の隣でいいから、パソコンは今、総務が準備してるだろうから待っててくれ」

「かいとの席どこー」
先に歩いてた僕の隣にきたデルに自分の席を教えると早速、今日のお昼はお蕎麦が食べたい。と言い出した。蕎麦か…社食にでも連れてってあげようと思ったが、きっとみんなに取り囲まれるだろう。どうしよう…みんな仕事をしながらもデルをチラチラ見てくる人がいる。デルの存在が気になって仕方がなさそうだ。

そりゃそうだと思う。デルは背が高くて、身体の線が細い。それなのに彫刻のようなキリッとした顔立ちをしてる。遠くから見ても一目でいい男だとわかる…でもふとした仕草が妙にそそられてしまう。女性らしくとも違うが、少し儚げな印象だ。それなのに…そっちだとワイルドになるのか…見た目とのギャップが凄い。しかもデルは透さんと同じ歳とは思えないくらい若く見える。いわゆる童顔といってもいいだろう。だから僕も見た目のデルを見て透さんの…と勘違いしたんだけど、そう思ってる人っていないよな…?と少し不安になってしまった。そんなデルと一緒に僕がいるというのは、みんなが不思議に思うだろう。しかも朝の出来事を知ってる人たちもいるから…手を止めてしまってると

「かいとー寝不足?具合悪い?」デルに心配されてしまった…

「大丈夫」そう返したけどデルはなんだか疑っているようだった。

とりあえず今は何も考えず仕事しなきゃとデルに自分の受け持ちの企業や今、交渉中の企業、これからアポを取りたい所などなど資料と一緒に教えて行った。

デルは前の職場ではマーケティング部に所属していた時に、見込み顧客に対しての適切な情報やコンテンツなどの提供していた。営業とも連携していることもあったそうで、ここはこうしたら?とかここはこっちがいいんじゃないかとその企業ごとの的確なアドバイスをしてくれてとても良かった。そんなやり取りをしていたが、そろそろお昼だな…本当にお昼どうしよう…としたら透さんが僕の席にやってきた。

「お疲れ。そろそろ飯行かないか?」
「うん行く。透、俺お蕎麦が食べたい。美味しい所ある?」
「外、行くか?小沢…一緒に行くか?」
一緒に行きたいけど…周りが気になって仕方がない。ふと見ると平井と目が合った。

「僕…平井と食べに行くので、お2人で行ってください」と僕が言うと透さんは眉間に皺を寄せて平井を睨みつけた。そんな様子を見ていたデルが「じゃあひらいーも一緒に行こう」と誘ってくれた。

平井にまだ嫉妬してくれる透さんは嬉しいけど、なんだか居た堪れなかった…

どこに行こうかと思ったらデルは社食に行きたいと…きっと
大騒ぎなんだろうなぁーと思いながらも社食に行こうとした時に大崎部長に会ってしまった。

「おぉ…浅井部長、戻られたって聞きてましたよ。お疲れ様でした。向こうは大変だったんじゃないですか?それにしても…またイケメン捕まえて…もしかして…この前あったお店の子じゃないですか?」  

「いえっ彼は…」

「いいです。いいです。ここだけの話でしたね。では急ぐので…」
そう言って足早に行ってしまった。

大崎部長違うんです…透さんの相手は僕ですって言いたい。言ってしまいたい…でも弱気な僕はそんなこと言えないまま社食についた。

デルはもちろん、ざるそばで平井は唐揚げ、透さんと僕はカレーライスと安定の被りで平井に大笑いされてしまった。

僕と透さんが取りに行ってる間にデルと平井が意気投合して盛り上がってて話をしてた。
「何、話してたの?」僕が聞いて見ると

『ないしょー』と笑い合っていた。
なんで?教えてって言っても教えてくれなくて、なんだか寂しく思ってると透さんが
「2人しかわからないことでもあるのか?」なんて聞くから2人はいやっ…でもっ…と焦ってるように見えた。

すると透さんは向かいに座ってた2人に顔を近づけて「海斗はやらないからな」なんて思っても見なかった答えにドキドキしていると

「浅井部長、ご飯食べ終わったら少しいいですか?」その声に振り向いてしまった。

この前、透さんに告白したいって言ってた橋田さんだ。
「要件ならここで聞くが…」と返事を返した。
「2人きりで話したいんです。お願いします」
きっと話くらいは聞くんだろうと思ってたら。

「俺の検討違いなら悪い。告白なら受け付けないが…他の要件か?」
橋田さんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「悪いけど俺には大事にしている人がいるから…断るのに2人で話すことはできない。勘違いさせてしまうかもしれないし…悪いな。きっと他にもいい人見つかると思うぞ…」そういうと橋田さんは涙を浮かべて走って行ってしまった。

「あーあ。透、泣いてたぞ」デルの声が聞こえたが、僕って本当に大事に思われてるんだ…と橋田さんには悪いけど嬉しくなってしまった。

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