鬼上司と秘密の同居

なの

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ただいま

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3人で親子丼を食べた。やっぱり学さんのご飯は美味しい。

「海斗、もう少ししたら電話するぞ」そう言われて緊張してきた。本当に大丈夫だろうか?またあの彼が出るんだろうか?そう思っていたら、俺が先に電話で話してから代わるからと学さんに言われた。きっと彼、デルさんが出たら困るからだと思ったが、学さんからは思ってもみない答えだった。

「昨日、海斗がここで寝ちまっただろ?だから自宅にも帰れず悠人と一緒に寝れなかったんだぞ。俺の日々のルーティンを奪いやがって、俺の士気が下がるだろうが、一言アイツに文句を言わないと気が済まないんだよ」

…ん?悠人と寝れなかったことを怒ってたんだ。僕は咄嗟に謝ると海斗は悪くない。今回は全面的に浅井が全部悪いからって…本当にこの2人は仲がいい。学さんは悠人のことが大好きだし、大事にしてるのがよくわかる。そんな2人に聞いてみたいことがあった。

「けんかしないの?」

『けんか?』

「するに決まってるだろ。しょっちゅう言い合いになる。でも結局、学さんに言いくるめられて終わっちゃう」
そうか…きっとけんかにならないんだろうな。学さんはお店でも悠人を恋人だって言ってるし、だから常連さんは、わざわざアプローチするお客さんはいない。でも新規のお客さんは、あからさまに学さんを誘うことがあるという。その時は悠人がやきもちを焼くし、怒る。学さんもストレートに断る。一時は店に入ってきたお客さん全てに恋人宣言してたし、新規のお客さんを断って、常連や紹介のみだった時期もあった。それくらい悠人がやきもち焼きなんだよね。僕にまだ彼氏がいた頃に悠人から学さんは僕のもの。だから取らないでって言ってたくらいだもんなー。そんな昔のことを思い出してるとお店のドアが開いた。
思わず3人とも立ち上がってしまった。臨時休業の看板を出してるはずなんだけど…そう思ってたら

「Hi~あ!学、久しぶり~」そう言って学さんに抱きついた。碧い目をしたイケメンな男性がいた。

『えっ?』悠人と顔を見合わせてしまった。悠人がすぐに学さんの所に向かったと思ったら、後ろから抱きしめられた。
「海斗…色々ごめん。ただいま」

後ろを振り向くと「透さん…なんで?」

「ん?海斗の誤解を解くためにはテレビ電話なんかじゃなく直接だろ?だから帰ってきた」 

「だってまだ仕事が…」

「親父に頭を下げたよ。俺のせいで海斗の一大事だって…そしたら怒鳴られた…海斗を泣かせたら許さないって、角谷さんにも、あの人、怒ると怖いんだ…だから帰ってきた。仕事も一段落したから、あとは社長と秘書で何とかするって。だから大丈夫だよ」

「浅井、ちゃんと説明しろ。デルお前もだ!っうかなんでお前も日本に来たか説明しろ。とりあえずそこ座れ」

僕は透さんに手を引かれて隣同士で座った。僕たちの前には学さんと悠人、そして僕の隣にはなぜかデルさんが座った。
「デルお前なんで海斗の隣?」 

「だって~この子可愛いから」

「あの~透さん?」 
なぜデルさんがいるのかわからない僕は不安で透さんを見つめた。 
すると透さんはいきなり僕を抱きしめた。強く強く…僕の存在を確かめるように。そして教えてくれた。

デルさんは高校生だった時に交換留学で透さんや学さん達と仲が良くていつも一緒に遊んでたこと。
しばらくは連絡のやり取りをしてたけど、みんな仕事に忙しく連絡していなかった。

透さんがカミングアウトしたせいなのか、出張先で男性ばかりがいるお店に連れて行かれた。その時にデルさんと会ったそうだ。お互い最初はわからなかったが、デルさんが高校生の頃、日本に留学に行ったことや、その当時の話から透さんが思い出したそうだ。

デルさんは幼馴染の恋人がいたが、その恋人と別れてしまった。職場も一緒、部署も一緒だったので居た堪れずに辞めてしまい、恋人と住んでいたアパートメントも追い出され途方に暮れたデルさんは、手っ取り早くお金が稼げるとやけになってその店で働きはじめたところ、透さんに会った。透さんは僕と出会った頃を思い出して、自分のホテルに連れて寝泊まりさせてたようだ。

「海斗、デルが勝手に電話に出たせいで勘違いさせてしまって悪かった。しかもデルと店を出たことを見られてたなんてな。本当にデルとは何もないから。海斗だけだから本当に…信じてくれる?」
きっと今の言葉が本当なんだろう。でも…じゃあなんで一緒にいたの?別の部屋を取ってあげたっていいのに…こんなにも綺麗で華奢デルさんと一緒だったのなら、間違いの1つや2つ…

「かいとぉー本当にないよ!俺こう見えても男に抱かれるの無理なんだ!するのはいいんだけど、だから本当だよ。信じて!電話に出たのは前の仕事で電話を取ることが多くて…つい、取ってしまった。本当にごめんなさい」

頭を下げられてしまった。理由はわかった。でも…心の中がモヤモヤしてしまう。だって、僕は透さんといたかったのに、いられなかった。それなのにデルさんは一緒にいたんだ…そう思うだけで、ズキズキと心が痛んだ。嫉妬心でいっぱいになってしまう。今なら悠人が大好きな学さんに、やきもちを焼く気持ちが痛いほどわかる。

今までこんなにも嫉妬したり、やきもちを焼くほど人を好きになったことなんかなかった僕は、自分の気持ちに戸惑ってしまった。
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