鬼上司と秘密の同居

なの

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そんなことってある?

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結局、家に帰ってからも何もする気になれず、ボーッとしてる間に窓からは夕焼け色の空に変わっていた…
「もう寝てる時間だよね…」そう思いながら透さんに電話をかけた。

コール音が鳴り響いて、やっぱり出ないよな…と切ろうとしたら

「Hello?Hello…Who's calling, please? 」
〝どちらさまですか?〟

思わず切ってしまった…誰?誰なの?透さんじゃなかった…男の…男の人だった。透さんの番号だったよね?何度も確認した。間違ってない…

涙が浮かんできて布団を頭から被った。信じてた…信じてたよ。透さんは裏切らないって…
大崎部長の声が頭の中で何度もリプレイされる。

〝1人気に入ったのか一緒に店を出てったよ。部長もこっちに恋人がいるみたいだけど、離れちゃえばな。一晩の過ちなんてバレないだろ。まぁ…溜まってたのかもな?〟

一緒に店を出てった…
一晩の過ち…溜まってた…
どうして?なんでなの?

結局僕は、ほとんど眠れずに夜を過ごしてしまった…僕ってどうしてそうなるんだろう?浮気されやすいのかな?仕方なく行く準備をして家を出た。

こんなんだけど…仕事しないと社会人失格だし…もし透さんから…お前はいらないって言われても大丈夫なように、ちゃんと仕事して転職先、考えよう。うん。僕は大丈夫!大丈夫だよ。自分に何度も言い聞かせた。胸元でいつも揺れていた指輪を今日は外して家に置いてきた。何だかつけていたくなくて…いつもの重みがないのは少し寂しかった。

会社に着いて挨拶をしても昨日、僕が早退したことを気にしてなさそうだった。みんな人のことなんてちゃんと見てないんだなと思った。もうすぐお昼になる頃にデスクの電話が鳴った。

「はい営業部、小沢です。」
「海斗か?」
「あっはい」
「そのままで聞いてくれ…昨日の夜、電話くれたんだろ?ごめんな。出れなくて…違うやつが出て」

「あのーすみません。これから出ないといけないので失礼します」

透さんの言葉を遮り電話を切った。
言い訳のためにわざわざ電話をかけてきたの?あれから電話なんてくれなかったのに…会社に電話なんかして一体何なんなんだよ!悲しみよりも怒りの方に自分の気持ちがシフトしていった。その後すぐにメールが届いていたが読むことなくそのまま削除した…

家に帰りたくなくて残業をして21時過ぎに学さんの店に行った。

「学さん聞いてください!!」
「どうした?海斗、何かあったか?」
「透さん、浮気してます!!」

『浮気?』
学さんと悠人の声が重なった…

「そうです。浮気です!浮気!しかも今回は正真正銘の浮気です!男なんです。相手が…」

「海斗、落ち着け。わかるように説明してくれないか?」

僕は大崎部長と設楽部長代理の会話、昨日の電話のことを学さんと悠斗に聞いてもらった。
「どうして僕は浮気されるんですか?僕、そんなにダメですかね?」話してる間にどんどん落ち込んでいって、怒りよりも自己嫌悪に落ちてしまった。昨日ほとんど寝てないのにお酒を飲んだことで、急に睡魔が襲ってきて僕は…そのまま寝てしまった。


《side 学》

すっかり夢の中にいる海斗を眺めながら悠人が口を開いた。
「学さん…どう思いますか?」

「海斗の勘違いじゃないか?コイツ自己肯定感低すぎだから、どうしても悪い方向にいっちゃうんだろう。ちょっと電話してみるか…」

全く…どうしてこうも勘違いさせてしまうんだか…俺の大事な悠人は海斗が落ち込んだりするたびに、慰めたり、励ましたり、本当に大事にしている。もし誤解があるのなら、早めに解決しないと海斗は何をするかわからない所があるからな。愛情不足のせいなのかもしれないが…

浅井のスマホにかけてみると

「Hello…Who's calling, please?」
〝どちらさまですか?〟
は?誰だコイツ?本当に浮気か?
つい喧嘩越しで

「Who the hell are you? 」
〝お前は誰だ〟
と聞いてしまった。

「Dell Rundle  What's your name?」
〝デル・ランドル、あなたの名前は?〟

まさかの名前だった。こいつは確か…「デル?学だけど覚えてるか?」思わず日本で話してしまった。

「学、学なの?本当に?」

「あぁ…っていうか、何でお前電話に出てんだよ。浅井の電話だろそれ」

「あっごめん。透、今シャワー浴びてて…つい…」 

「ついって…お前まさかっ…」

「違う。違う。何もないよ。あるわけない。本当だよ!あっ透が出たからに変わるね」慌てたように電話を変わった。

「え?誰?」

「俺だよ。学、どうしたもこうしたもない!何でデルが電話に出るんだ。しかもシャワーって…なんで一緒にいるんだ。お前浮気してんのか?そうならこっちにも…」

「いやいや学?何か勘違い…」

「勘違いさせてんのはどこのどいつだ!仕事なんてとっとと終わらせて今すぐ日本に帰ってこい!じゃないと海斗がまたダメになるぞ!今度は本当に無理かもな!!」

「海斗がダメって…どういうことだ?」

「はぁ?お前に電話してんのにデルが出たら普通は勘違いするじゃねぇーか」

「そうだったか…だから…でも海斗に電話しても切られるし…メールも…返信来ないんだよ」

「当たり前だろ、お前がそういう店で一緒に出てったやつがいた。溜まってたから恋人がいても一晩の過ちなんてバレないもんな。そんなことを会社で聞いちまって…不安になって電話したら男が出た。そしたらどんどん悪い方向に考えた。お前が電話なんかしてきたら言い訳だって思っちまう。コイツはそういうやつだ。自己肯定感が低すぎ落ち込んで悪い方向に考えちまう。」

「学、俺がそんなことするわけないだろ。海斗一筋なのに。デルとは確かにそういう店で会った。どうしてこんな所にいるんだと聞いたら恋人に裏切られて、住む場所も無くして、職場が一緒だったから仕方なく辞めて…そしたら人生どうでも良くなって、そういう店で働き出したって…つい海斗に重なってしまって…助けてやりたいから親父の所に連れてった。あいつはそこそこ有名な所で働いてたし、日本語も喋れるからな」

「じゃあ何で…お前と一緒に?」

「住む場所が今ないから決まるまで俺のホテルにいろって言ったんだ」

「お前、何か間違えがあったら…」

「はぁ?お前も知ってるだろ?こいつは抱く方!抱かれるのは嫌だろ!俺も海斗以外は絶対に無理!だから、そんな関係になるわけないだろう。ただの友達。それ以上には絶対にありえない」

「お前それをどうやって海斗に説明する?難しいぞ」

「海斗は?今?」

「寝てるよ。昨日ほとんど眠れなかったみたいなのに飲んじまったからな」

「あと2~3日は帰れない。デルのこともあるから…でも海斗にはちゃんと説明したい。俺が好きなのは海斗だけだって、俺は絶対に浮気しないって…でもどうやったら…」

「とりあえず今日は預かる。明日また仕事終わりに店に来るように伝える。電話じゃなく顔見て説明しろ。スマホじゃ小さいからパソコン用意するから」

「学。ごめん助かるよ」

「デルにも勘違いさせたのは怒っておけ!じゃあまた明日な」

「わかった。よろしく頼むよ」

電話を切ってから悠人にデルの説明をした。高校の時に交換留学生としてやってきたデルと俺たちは仲良くなった。俺たち以上にモテてたやつだったが幼なじみの彼氏がいるからと一途に思ってた。その彼氏に裏切られたとしたら…まぁ荒れるだろう。それにしてもアイツに見つけられたんだから…ラッキーなのか…

学さん、そのデルさんは大丈夫な人なの?浅井さん…

大丈夫だよ。浅井は海斗を裏切ったりしない。そんなことしたら、みんなが黙ってない。明日、テレビ通話してお互いの誤解が解ければいいが…見守ってやろう?

そうだね…海斗はそのまま寝かせておこうか…連れて帰るの無理だもんね。

仕方なく俺たちも店に泊まることになった。浅井、帰ったら覚えておけ!悠人と眠れなかった俺の気持ちを!!



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