鬼上司と秘密の同居

なの

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人生いろいろ

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「こんばんは」
「海斗くんいらっしゃい」

笑顔で迎えてくれた社長と挨拶を交わした。

「はいはい。ほら透、バックから出して」
さっきお義母さんが預けたバックの中からは三段のお重が2つも出てきた。
1つ目には、唐揚げ、コロッケ、メンチカツ、エビフライ、卵焼き、ウインナー、カニの甲羅に乗ったグラタン、アスパラの肉巻き、ポテトサラダ、ブロッコリーなどが彩りよく詰めてあった。
もう1つのお重には、ちらし寿司にサンドウィッチ、フルーツまで…いったい何人前なのか、こんなに作るの大変だっただろうなぁーと考えていたら
「みんな見惚れてないで食べましょう。大輔さんも座って」
「いや…自分は…」
「何言ってるの。貴方とは家族みたいなものじゃない。今更、遠慮なんてしないの」

角谷大輔さん。社長…お義父さんの秘書さんだ。お義父さんの大学の後輩だった角谷さんは昔、働いていた会社が倒産、それと同時に友達に騙され連帯保証人になったものの夜逃げされて500万円の返済をすることになった。不幸なことは続くもので住んでたアパートが火災で住めなくなり、路上で生活しながら日雇いの仕事をしていた。もう人生も諦めていたときにお義父さんと出会ったそうだ。たまたま道路工事をしていた角谷さんを見かけて声をかけた。その頃お義父さんと付き合っていたお義母さんは秘書として働いていた。いつか結婚して子供が欲しいと望んでいたが、お義母さんはとにかくやきもち焼きで、お義父さんが仕事で女性と話だけでも妬いていたそうだ。なので自分が納得できる後任の秘書が見つかるまでは結婚をしないと…ただ女性は絶対に秘書にはしないと言っていた。 

お義父さんは大学の頃から真面目で几帳面だが人当たりがよく空気を読むのが上手いと感じていた角谷さんに一緒に働かないかと声をかけた。角谷さんは自分の事情を話した。そんな大企業は自分に合わないと…それなら…と自分の秘書として影で支えて欲しいと…説得を重ねた。お義母さんも角谷さんの人柄をみて自分は秘書を降りてもいいと言ってくれた。角谷さんはお義母さんから秘書の勉強をして、試験も受けた。それから30年以上も社長の秘書として影で支えてくれている。
透さんと僕の事情もわかってくれていて、この前は僕が秘書になるなら自分のノウハウを全て教えてくれると言ってくれた。

みんなでお義母さんのご飯を取り分けて食べ始めた。すると

「ところで…あれから川上さんはあどうなったの?」お義母さんがたずねた。
僕も気にはなっていたが、なかなか聞けずにいた。

「現在、再教育中でして佐伯常務の秘書として、荒木秘書と一緒にいますよ。透さんのことを好きすぎるあまりの行動とはいえ度が行き過ぎましたので…しかもまだ公表前だった社長と透さんの関係も匂わせる発言は…秘書として守秘義務を怠ったとみなしました。反省したらいいというわけではありません」そう言う角谷さんの目は鋭く、僕が怒られてるわけではないのに身震いしてしまった。

「大輔くんありがとう。でも…海斗くん怖がってるから…ふふふっ」

「すみませんでした。海斗さん、自分はつい熱が入ってしまい…」

「こちらこそ…すみません」

「海斗、角谷さんは仕事に厳しいけど優しいおじさんだから安心していいよ」背中を撫でてくれる透さんの手のひらが温かくてホッとした。

「お義母さん、この唐揚げ美味しいです。冷めてもサクサクしていて…こんなにたくさん作るの大変だったんじゃないですか?」

「料理好きなの。食べてくれる人を思い浮かべながら作ると嬉しいの。いっぱい食べてね。所で…出張はみんな行くんでしょ?海斗くん寂しかったらうちに来てもいいからね」

「ありがとうございます。部屋…掃除したいし、恥ずかしい話ですが僕、枕変わると眠れなくて…すみません」

「あらそう?でも寂しくなったら、いつでも来ていいからね」

僕はただ単に透さんの匂いがするあの布団で眠りたいのだ。寂しいなら…余計に…

「みんないっぱい食べてくれてありがとうね」
お義母さんの料理は好評で、みんなでほとんどを食べてしまった。
少し残った分は1人暮らしの角谷さんが明日の朝ごはんにするとタッパーに詰めていた。

「海斗、気をつけて帰れよ。俺もなるべく早く帰るから…」
「わかりました。気をつけて帰ってきてくださいね」

お義母さんの車で帰ろうとしたところお義父さんが「海斗くん。気をつけて帰るんだよ。」
そう言われて、お義母さんの運転で僕は先に家に帰った。



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