鬼上司と秘密の同居

なの

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愛されてる

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透さんは役員会の為にいつもより早く用意をし始めた。ネイビーのスリーピースだ。

「海斗、ネクタイ選んでくれないか?」
「いいですよ。これかな?こっちがいいかな?」
たくさんあるネクタイから僕は「これがいいです」ブラウンのネクタイを取り出した。
「いいな。これで今日も頑張れる」

「じゃあ行ってくる。海斗も気をつけてな」
「わかりました。いってらっしゃい」
今日は少し長めのハグとキスをして透さんを見送った。

「よし!僕も準備しよ」

なんだか、そわそわしながら会社に向かって歩いてると
「小沢…おはよう」
「あっ、平井おはよう」
普通に話かけてくれた平井に会った。

「あのさー色々悪かったな。昨日は大丈夫だったか?」
「うん。大丈夫だったよ」
「これからも、よろしくな」
「こちらこそ」
そんなたわいもない話をしながら会社に入ると、何だかざわついていた。もしかして川上さんが話しちゃったのかな?と思っていたら

「なんか今日って臨時の役員会でしょ?」
「何かあったのかな?」
「えー知らないの?昨日、川上さん、浅井部長に迫ってたみたいよ~でも一撃されてたって。常務もいたみたいよ」
「それで役員会なの?」
「降格かな?」
「そうなの?やっぱり降格なのかな?」

そんな会話があちこちで繰り広げられていた。思わず苦笑いをしてしまう。

「小沢…昨日のことが原因か?」
「少しはあるかもしれないけど、僕も詳しく聞いてないんだ。教えてくれないだろうし…」
「そうか…今日は部長いないんだ。朝礼は課長の桜さんかな?」
「そうかもね!」
「課長までいなくなる役員会ではないよな?上田さんの朝礼だと俺嫌だな。何言われるかわからないもん…」
「そうだねっ…」

そう思ってた僕たちだったが嫌な予想が当たってしまった…

「今日は部長も課長も臨時の役員会でいないので、朝礼は俺が代わりに勤めます。みんなよろしく」
そう言ったのは上田さんだった。

あの時からあまり関わることがなくて安心していた。しかも透さんがあと後、急に席替えしようと言い出して、僕は上田さんと席が離れて安心していたのに…また何か言われるのかもしれないかも…と不安な気持ちになった。もしみんなの前で何か言われても今日だけ、今だけだから我慢しないと…そう思ってたら…

「小沢…今週の予定は?今週の目標があるならみんなの前で言ってみろ。ほらっ早く言えよ」

やっぱり僕のこと標的にするんだろうなこの人は…
「あっ…はい。今週はアポの資料作成と…」僕が話始めていた時だった…

「あぁ…話中だった?みんな、おはよう。俺のこと知ってる人なんてほぼ、いないよね~朝礼中だった?」

「おはようございます。失礼ですが…ここは営業部です。しかも朝礼中なんですが…部外者が勝手に入って来られては…困ります。どちらに用事なんでしょうか?」そう言う上田さんに

「はっはっはっ…部外者とは…俺、ここの会社にとっては、なくてはならない重要人物なんだけど?」

「すみません。存じ上げないです…」

営業部に入ってきた人は、あのオーナーの里中さんだった…どうして里中さんが?今ここにいるの?役員会に行くんじゃないの?なんでわざわざ?営業部の中も何だかざわついている。そうか…みんなは里中さんが、この会社の顧問弁護士だとは知らないのかもしれない…僕も言われるまで知らなかったんだから…

「浅井部長が臨時の役員会でしょ。課長も急遽、出ることになったから今日の朝礼は上田さん、きみになるでしょう?なんか部長、心配していてね。きみ、ちょっとある人物に対しての言動が行き過ぎだと耳にしたから。ちょっと覗いてみることにしたんだよ」

「みんなー。浅井部長からの伝言だけど、特にいつも通りでいいって言ってたから。今日もよろしくだって言ってたよ」

「あの…申し訳ないのですが名前を教えてくれませんか?」

「ん?あぁ…里中です。ここの顧問弁護士をしています」

「えっ?弁護士…さん?」

「そう。だから色々と気をつけた方がいいよ。上田くん!」
上田さんの肩を叩いて里中さんは笑顔で出ていった。 

そうか…透さんは僕がきっとこうことになるのはわかっていたのかも知れない。僕って…頼りないのかな?そう思ってたら

「小沢…お前って愛されてるんだな。やっぱり敵わないわ」そう言った平井に、つい苦笑いをしてしまった。そうなんだ…そうか僕…透さんから愛されてるんだ!そう思うと何だか幸せな気分のままパソコンに視線を向けた。
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