いつか愛してると言える日まで

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2人の想い

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奏と2人きりになってしまった…
何をどう伝えたらいいかわからなかった…すると奏から「純平はどうして郁とオレが付き合ってるって思ったか聞いていい?」と聞かれた。

僕はあの日見た光景が、目の前に浮かんできた。
2人が抱き合ってた日のことを…
言葉にするのは…辛い…でも言葉にしないと…結城先生にも誠おじちゃんにも言葉の大切さをたくさん教えてもらった。あの頃よりは心が少しは強くなったと思う。

少しずつゆっくりとではあったけど、僕は奏にあの日見たこと、感じたことを話始めた。途中何度もつかえながらでも…奏は何も言わずに、ただ僕の話を最後まで聞いてくれた。
僕の話が終わると奏は「そっか…見てたのか…」と…
僕は居た堪れず俯いた。

そんな僕の様子に奏は焦るように「あの日はそんなんじゃない。郁人が純平が家で一緒に生活できるのが楽しみだって言われて…オレに自慢してきたんだ。郁人、めちゃくちゃ喜んでて、オレに抱きつきながら背中を叩いてきて、好きとかの感情で抱きしめたわけじゃないから。俺も純平が郁人と一緒なのは嬉しかったし、郁人はいいやつだけど何にもないし、何とも思ってないから心配すんな。」「それより純平の気持ち聞いていい?俺のこと好き?って言ってたのは本当?」

奏の琥珀色の瞳に見つめられて思わず本音が口から出た。

「僕は…ずっと奏が好きだったよ。」  

「ありがとう。オレも純平が好きだよ。先に言わせてごめん。オレかっこ悪いな。そんな勘違いにも気づかなくて。本当ごめんな。」そう言って僕を優しく抱きしめてくれた。

奏の体温が直に伝わってくる。温かくて、この前みたいに柑橘系の爽やかな匂いがしていると体の奥がムズムズする。このムズムズする感じはなんだろう?
奏は僕の首元にそっと近づいてくんくんと匂いを嗅ぎながら「純平は甘い匂いがするね。どこかで嗅いだことがあるような?どこだろう?とってもいい匂い。今までわからなかったけど…」僕はくすぐったくて笑ってしまった。

「純平……オレもっと頑張るから、純平に嫌われないように純平にもっと好きになってもらえるように…だから…純平…もう少し大きくなったら番になろう?オレも純平の事、大好きだからさ。一緒に幸せになろう。純平は番の意味わかるよね?」

僕はびっくりして…目を大きく見開いて奏を見た。

アルファとオメガは番になれる。誠おじちゃんも言ってた。でも番になったら幸せになれるの?でもお母さんは番に捨てられて…自殺したよ。小さくてあまり覚えていないし忘れてることもあるけど…奏もこの先、「」が現れたらどうするの?僕もお母さんみたいに捨てらちゃうの?そしたら僕もお母さんみたいに生きていけなくなるの?

僕と奏は運命かどうかわからない。好きだけど、もし捨てられる運命なら好きになっちゃだめなような気がしてきた。好きって言っちゃったけど…奏と僕が運命ってどうすればわかるの?誠おじちゃんならわかる?結城先生に聞いて検査したら教えてくれる?

元々ネガティブ思考の僕は番と言われて急に不安で不安で仕方がなくなってしまった。
大好きな奏に抱きしめてもらってるけど…どうしたらいいのか、また気持ちがわからなくなった。
僕はこれからどうすればいいのか?また気持ちが迷子のように彷徨さまよった。

そんな僕の気持ちなどわからない奏は抱きしめてた僕をゆっくり離して鼻先をくっつけてきた。
そして「純平、キスしていい?」と聞かれた。
「純平の気持ち嬉しくて、キスしたくなったんだけど…ダメかな?」
ダメじゃない、ダメじゃないけど…そう考えていたら唇に柔らかいものが一瞬当たった。

「ごめん。答えを聞く前にオレのファーストキス純平にあげちゃった。」…と恥ずかしそうに顔を真っ赤にした奏を見て泣きたくなった。僕は違う。僕は違うんだ。   

奏とのキスが嬉しいのに。僕も奏と同じでファーストキスだよと言いたいけど…言えない…他にもたくさん聞かれたくないこともしてる。そんな事、言えない。奏のファーストキス奪っちゃって…ごめんなさい。心の中で謝った。
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