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第2章

第97話

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「そういえば朝は悪かったな。ノアはあれから大丈夫そうに見えるが平気か?」
父上もノアのことを気にかけていたんだろう突然そんなことを言われて焦ってしまった。あの話の内容は2人だけの約束と話したばかりだ。初めてのぼせてしまったから恥ずかしい気持ちであの場にいられなかったみたいだったから大丈夫とだけ話しておいた。父上もそれ以上は何も言わなかった。

俺たちが会場に着くと使用人たちに混じってノアがスーツのジャケットを脱いで腕まくりをして準備している姿が見えた。俺はノアが重そうに持ってる果物が入った大きなカゴを後ろから支えた。すると後ろを振り返り俺の顔を見ると少し照れ臭そうな顔で笑っていた。
「ありがとうカイル。少し重かったから助かった」
ノアからカゴを受け取りノアの指示した場所まで持っていった。

「ノアは今日は主役なんだぞ。こんなことしなくていいのに……」
俺がそういったがノアはみんなをおもてなししたいからとまたキッチンに戻ろうとしたのを抱きしめて止めた。

「ノア、今日は主役だ。俺のそばにいてくれないと困るんだよ」
ノアにジャケットを着せて蝶ネクタイもつけてやる。リアムやライナスからもしなくていいと声をかけられてノアはようやく諦めてくれた。

「それにしても凄いな」
思わず声に出てしまったくらいこのパーティーホールはたくさんの花やバルーンが飾られて華やかになっている。きっとノアの案だろう。去年とは雰囲気が違っていた。そして玄関からこのホールにくるまでの廊下にはノアが今まで描いてくれた絵が綺麗な額縁に入れられてまるでどこかの有名な画家が描いたんじゃないかと思うくらい素敵に飾られてる。そして部屋の中は俺の絵でいっぱいだ。みんなが見たらびっくりするんじゃないだろうか……それに……

「ノアいい匂いがするな。パーティーが楽しみだ」
先ほどから俺の好物ばかりが運ばれている。キノコ料理もたくさんある。ノアが頑張って採ってくれたキノコ達だろう。今回は立食パーティーなのでそれぞれが好きな料理を食べられる。

「ねぇカイルこの料理、僕がママと作ったんだよ」
リアムが持ってきた料理を指さしたので見ると可愛らしい一口サイズのハンバーグだった。

「そうか母上と頑張ってくれたのか」
俺は嬉しかった。今日のためにキノコを採ったり料理まで、ついノアの指を見てしまったが怪我はしていなさそうで安心した。

「あれねキノコ入ってるの。ママがキノコが入ってても美味しく食べられる料理考えてくれて、一緒に作ったら食べれるようになるって言われたけど、まだ僕、食べてないの。だからねあとで一緒に食べよう」
まさかノアからキノコ料理を一緒に食べれるなんて考えもしなかった。母上は料理長と色々相談してノアが食べられるのを考えてくれたんだろう。俺はノアを抱き上げてじゃあ今すぐに味見してみよう。と誘ったのだがノアは顔を強張らせて、みんなが来たらでいい。と拒否をした。まだ食べる覚悟はできてないようだ。俺は笑ってじゃああとでな。とゆびきりげんまんをしておでこにキスをした。

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