転移したら獣人たちに溺愛されました。

なの

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第2章

第65話

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母上はノアがこれから先、俺のことで学校や他のところでいじめられたりしないようにと守りの魔法をかけてくれた。だからといって何事も起こらないとは限らない。それに……

「ノアに意地悪なことをした人たちは、ここの学校に行かせないようにするから安心してほしい」
と言ったらノアは俺の腕を掴んでおもいっきり揺すりはじめた。

「どうして?僕、意地悪されたけど怪我してないよ。それに……ボブとムーンは小さい頃からの幼馴染で仲良しだって言ってたよ。お友達がいなくなるのはかわいそうだよね。僕が学校に行かなければ、みんなは学校に通えるようになるの?どうしたらみんなが学校に行けるようになるの?確かに意地悪されて嫌だったし悲しかったけど、でもみんなが仲良くできる方法はないの?」

ノアは本当に心が優しい。でもここでノアの言うとおりに何もかも許していいのだろうか?それなりの罰は受けるべきだろう。それをわかってくれるには……と思案していると

「ノアおいで」
ノアはソファーに座っている父上に呼ばれて隣に座った。父上はノアの頭を撫でてから抱きしめた。

「ノア聞いてくれ、これは大きな問題なんだ。つい出来心でもノアに意地悪したのは確かだ。もう中等部だよな。小さい子どもじゃないからやっていいことと悪いことの分別はつけられるはずだ。それなのにカイルの伴侶がノアだと知って意地悪する国民は俺はいらないと思ってる。それが誰の友達だろうが大切な人であってもだ。ノアわかってくれるよな」
頭にポンと大きな手のひらを載せられるとノアは首を横に振って目からは大粒の涙をこぼしはじめた。

「僕のせいでムーンはお友達と別れちゃうの?別れないといけないの?僕がいなければみんなは幸せだったの?パパどうしたらみんなのこと許してくれる?パパ、今回は許してあげてお願いだから、もし……もし次に意地悪された時はパパの言うとおりにするからお願いします」
ノアはソファーから降りて父上に土下座した。父上も戸惑ってしまいノアを立たせようとしたがノアは絨毯を握りしめていたのを見て俺は無理やりノアを抱っこした。

「ノア聞いて、もし次に……って言ったけど、その時もし大きな怪我をしたらどうする?それこそ取り返しのつかないことになったらどうする?」
それでもノアはママが魔法をかけてくれたから大丈夫だもん。と言い張るので俺たちはますます困惑してしまった。本当にいいのだろうか?でもきっとみんなが学校に来ないと知ったらノアは何を言い出すかわからない。ノアの頑固さは昔から変わらないなと思いながら、渋々父上はノアの言うことを受け入れた。その代わりの条件がある。それは……

「みんなにはノアに謝罪をしてもらう。それができなければ追放だ。それとノアには絶対に近づかないようにしてもらうよ。それでいいな」
ノアはその言葉を聞いてようやく頷いてくれた。

夕方になり騎士団員たちに連れられてリアンヌ、ソフィア、ピーター、ボブ、そして教師のクレールがやってきた。みんな俯いて反省しているようにも見える。ノアは応接室の端っこで俺と手を繋いで立っていた。

「本日お呼びしたのは今後のことについてです。どのような判断が下されてもそれに従っていただきます。では国王、よろしくお願いいたします」
エアロンからそう声が掛かるとリアンヌの肩がビクッと上がったような気がした。
すると父上がノアに声をかけた。
「ノアパパのところにおいで」
ノアは一瞬、俺の顔を見上げてそれから父上の隣に座った。

「本当は全員、国外追放する予定だった。でもノアがそれを拒んだんだ。それでだ今後はノアに近づくな。どんなことがあってもだ。もし用事があるならばノアの護衛に声をかけろ。それと今すぐにノアに謝罪するのなら……今まで通りに学校に通ってもいいこととするがどうする?」
するとみんな一斉にノアに謝りはじめた。

「ノアごめんなさい。意地悪して……ノアが羨ましくて……」
「ノアごめんね。私達が悪かった」
「ノアすまない。まさかこんなことになるなんて……」
口々に謝る姿をノアはただ黙って見つめていた。
もしかしたらノアも許せない。許したくない気持ちがあるのかもしれない。でも大切なムーンの友達だからと自分の気持ちに嘘をついてるのかもしれないと俺は思った。

「ノア行こう」
みんなが謝っているのにノアは顔が曇ってきた。ノアは俺に近づいてきて手をぎゅっと握ってきた。俺は宥めるように手を握り返して後のことは父上に任せて応接室を後にした。
廊下に出てもノアは何も言わず俯いていた。

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