転移したら獣人たちに溺愛されました。

なの

文字の大きさ
上 下
62 / 101
第2章

第62話

しおりを挟む
俺の胸に擦り寄ってくるノアに気がついて声をかけた。

「ノア?気がついたか」
ノアはまだ開け切らない目を擦って大きなあくびをした。

「カイル……ごめんね」
「なんでノアが謝るんだ?俺のせいだろ?俺がちゃんとノアを守ってやらなかったからこんなこと……」
俺はノアを抱きしめた。ノアも俺の背中に手を回して答えてくれる。

「僕が相手じゃなかったらよかったのに、ごめんねカイルにまた迷惑かけちゃった。でも僕大丈夫だから」
どうしてノアはこうも自分に自信が持てないのか、どうしたら俺の運命だって自信を持ってもらえるんだろうか……

「ノア、ノアは俺といて幸せか?」
ついそんなことを口走ってしまった。ノアは驚いたようで目をぱちくりとまばたきしていた。
「僕は幸せだよ。カイルと一緒にいて、カイルは?カイルは幸せ?」
そんなキラキラとした瞳で言われて俺は幸せに決まってるとノアの唇に自分の唇を重ねた。ノアの温かい唇の感覚に自身が昇りそうになるのを耐えながら重ねた唇をしばらく離せなかった。
なんとか理性を総動員させノアから唇を離すと耳まで真っ赤に染まったノアが見つめてきた。
「カイルとのキス好き」
そんなことを言われたら我慢ができず襲いそうになるが必死に我慢した。何せノアはまだ精通もしていないのだから、これからゆっくりと教えていけばいい。

「俺もノアのその柔らかい唇が大好きだよ」
リップ音を鳴らして触れるだけのキスを送った。しばらく2人で抱き合っていたらノアのお腹の音が鳴った。恥ずかしがって顔を隠すノアに今、持ってきてもらおうと言ってベットから降りようとしたら、尻尾を掴まれた。
「ノア?」
振り向くと不安そうに涙を浮かべてるノアの姿があった。

「どうした?どこか痛いか?」
ノアはブンブンと首を横に振ってただ怖いと……

「怖い?」
「カイルどこも行かない?1人にしないで一緒にいて」
嗚咽を堪えながら訴えるノアを抱き上げて俺の膝に乗せた。昔のように横抱きにすると大きくなったのがよくわかる。涙で濡れた頬を舌で舐め取り、尻尾で足を撫でてやる。
「ノアを置いてどこにも行かない。ずっと一緒だ」
ノアは俺の胸に顔を埋めていた。俺のシャツを握る手が白くなるまで握りしめていたのを見て胸が苦しくなった。ノアは本当に辛くて怖かったんだろう。このままでいようと思った時ノック音がしてライナスが夕飯を持ってきてくれた。

「ノア気がついたんですね。お加減はいかがですか?辛いところは?」
矢継ぎ早に質問されてノアはびっくりしながらも大丈夫と答えてくれた。するとライナスは大きな息を吐き安心しました。と笑ってくれた。

「料理長がノアにミルク粥を作ってくれましたよ」
来た当初の頃にもよく作ってくれたものだ。ノアは牛乳が苦手だったが、これなら食べてくれると料理長が喜んでいた姿が今でも目に浮かぶ。
「久しぶりにノアに食べさせてもいいかな?」
俺は昔を思い出してノアに食べさせた。

「美味しい。懐かしい味がする」
「それを聞いたら料理長も喜びますよ」
ライナスも俺たちの様子を微笑ましく目を細めて見ていてくれた。

「ごちそうさまでした」
結局ノアは半分くらい食べてもういらないと。まぁ半分食べれればいいだろう。
「カイルのご飯は?」

「こちらですよ」
食べやすいようにサンドイッチにしてくれていた。ローストビーフや野菜や卵が入っていた。

「ノアも食べてみる?」
ノアの口元に持っていくと少し齧って、美味しいと笑ってくれた。ご飯も食べれたから大丈夫だろう。

明日にはクラスメートのことリアムやムーンのことを話さなくちゃいけないが、今日は何も思い出さずに朝までゆっくり眠ってほしいと願った。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

迷子の僕の異世界生活

クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。 通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。 その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。 冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。 神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。 2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

異世界転移で、俺と僕とのほっこり溺愛スローライフ~間に挟まる・もふもふ神の言うこと聞いて珍道中~

兎森りんこ
BL
主人公のアユムは料理や家事が好きな、地味な平凡男子だ。 そんな彼が突然、半年前に異世界に転移した。 そこで出逢った美青年エイシオに助けられ、同居生活をしている。 あまりにモテすぎ、トラブルばかりで、人間不信になっていたエイシオ。 自分に自信が全く無くて、自己肯定感の低いアユム。 エイシオは優しいアユムの料理や家事に癒やされ、アユムもエイシオの包容力で癒やされる。 お互いがかけがえのない存在になっていくが……ある日、エイシオが怪我をして!? 無自覚両片思いのほっこりBL。 前半~当て馬女の出現 後半~もふもふ神を連れたおもしろ珍道中とエイシオの実家話 予想できないクスッと笑える、ほっこりBLです。 サンドイッチ、じゃがいも、トマト、コーヒーなんでもでてきますので許せる方のみお読みください。 アユム視点、エイシオ視点と、交互に視点が変わります。 完結保証! このお話は、小説家になろう様、エブリスタ様でも掲載中です。 ※表紙絵はミドリ/緑虫様(@cklEIJx82utuuqd)からのいただきものです。

恐怖症な王子は異世界から来た時雨に癒やされる

琴葉悠
BL
十六夜時雨は諸事情から橋の上から転落し、川に落ちた。 落ちた川から上がると見知らぬ場所にいて、そこで異世界に来た事を知らされる。 異世界人は良き知らせをもたらす事から王族が庇護する役割を担っており、時雨は庇護されることに。 そこで、検査すると、時雨はDomというダイナミクスの性の一つを持っていて──

【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する

SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。 ☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます! 冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫 ——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」 元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。 ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。 その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。 ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、 ——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」 噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。 誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。 しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。 サラが未だにロイを愛しているという事実だ。 仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——…… ☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので) ☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

処理中です...