上 下
46 / 62
第2章

第46話

しおりを挟む
「ノア、ノアしっかりしなさい」
「ノアしっかりしろ」

「先生……ノアは」 
「マーヤ様、ノアはいったい王子と何があったんだ?」
「それが全然わからなくて、ただカイルもノアに何も言わずに山にこもるって朝、出てってしまったの」
ノアは途中から息苦しそうに話したあと胸を押さえたまま目を固く閉じてしまった。診察すると呼吸はしているものの意識を失って呼びかけにも応じることなくまるで自分の殻に閉じこもってしまったような気がする。これはまずいことになるかもしれない。弟のように…ノアはまだ小さいから一刻を争うかもしれないと思った俺はカイルを今すぐに家に連れ戻すことはできないか?マーヤ様に頼むとわかりました。と言って出かけていった。

   ◇◇◇◇◇

私がこの王国に間違えられて連れて来られてすぐのことだった。私と間違えられた子は背格好が似ていた…というより顔もそっくりだ。それもそのはず私の双子の弟なのだから…見分け方は私には右目の下にほくろがあるが弟は左目の下にほくろがあることだった。まさか弟と間違えられたとは当時知らなかった私はかなり荒れた。どうして俺がこんな世界に連れて来られないと行けないのかと…でも結果として弟が相手の伴侶(虎族)だったとわかったが元の世界には戻れないと知ってかなり悲しんだし、辛かった。弟の伴侶にもかなり辛く当たったし、間違えた魔女にも罵声を浴びせてしまった。それでも俺はここで暮らさなくてはいけなくて俺はイヤイヤながらも他にも人間がいると教えてくれた。やっぱり俺は医者だからと治療をするようになった。俺と弟には親がいなかった。というより小さい頃に捨てられて施設で育ったので親の愛情を知らなかった。だからか…患者さんにも優しくできずになんだか孤独だった気がする。そんや俺に対して弟の伴侶の両親や友人達は俺にたくさんの愛情を与えてくれたおかげで今も医者としてここで暮らせているし、こんな俺にも伴侶ができた。そんなある日、たわいもないことから大喧嘩をした弟は家を出てきた。伴侶が迎えにきても帰らなくて仕方なく落ち着くまで離れて暮らしていた。ただの夫夫喧嘩だと思っていたが弟はだんだん衰弱して起き上がれなくなって伴侶が迎えにきた時にはしゃべることもままならない様子だった。その後は伴侶の側でいるうちにだんだんと元気になっていった。その後に聞いたのだ運命の伴侶は離ればなれで暮らしていると衰弱してしまうと、ひどい時には命までも奪ってしまうほどの絆が2人の間にはあるんだと。ノアがなにを俺たちに聞きたいのかはわからなかったがノアは何か勘違いしてるんじゃないのか?邪魔だから出て行くってノアのことを邪魔だと思っている人なんかいないのに……

「先生……ホルト先生?」
マーヤ様に声をかけられてハッとした。

「すみません。考え事を……」

「ノアは目が覚めますか?今クラリスにカイルを迎えをお願いしました」
疲れた顔をしているマーヤ様にカイルがきたらノアの話をしてみましょう。それと俺の弟の話をした。伴侶はどんな理由があっても離ればなれになってはならないと……

   ◇◇◇◇◇

「王子、迎えに参りました」
訓練が終わり休憩をしようとしたところにクラリスがやってきた。

「どうした?迎えって…」
こんな山奥まで俺を迎えにくるとは何事だろうと思ったら

「ノアが倒れて意識がありません。今すぐお戻りください」
は?ノアが倒れて意識がない?俺は訳がわからないまま屋敷に連れ戻された。ノアの部屋にはホルト先生も来ていてベットには青白い顔をしたノアが横になっていた。

「先生……これは?」
昨日は全く具合が悪そうじゃなかったのに……

「王子に質問したいのですがいいですか?」
ホルト先生に聞かれて頷いた。

「王子が他の人に心を惹かれたとかはないですか?」
そんな質問を言われて頭の中が真っ白になった。どう言うことだ?俺がノア以外に心惹かれることはないのに……それなのに先生はなおも続けて質問してきた。

「ノアに隠れて何かやましい事をしたことは?」
は?先生は何を言い始めたのか訳がわからなくなった俺は思わず
「先生、俺がノア以外を好きになることなんてないんだよ。ノアと出会ってからこの5年、そしてこれからもノア以外は好きにならない」
そう怒鳴った時だった。
ノアが青白い顔のままベットから起き上がった。

「カイルなんでいるの?早く行けばいいじゃん」
「ノア?」
「もっと早く知りたかったよ。そしたら僕、早く出てったのに…」
ノアが何を言っているのか俺には何もわからなかった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初恋ガチ勢

あおみなみ
キャラ文芸
「ながいながい初恋の物語」を、毎日1~3話ずつ公開予定です。  

虹ノ像

おくむらなをし
歴史・時代
明治中期、商家の娘トモと、大火で住処を失ったハルは出逢う。 おっちょこちょいなハルと、どこか冷めているトモは、次第に心を通わせていく。 ふたりの大切なひとときのお話。 ◇この物語はフィクションです。全21話、完結済み。 ◇この小説はNOVELDAYSにも掲載しています。

お願い縛っていじめて!

鬼龍院美沙子
恋愛
未亡人になって還暦も過ぎた私に再び女の幸せを愛情を嫉妬を目覚めさせてくれる独身男性がいる。

婚約破棄されたので温泉掘って彼の客を奪います

あんみつ豆腐
恋愛
利益などの観点から結婚するメリットが無いとして、ミッシェルに婚約破棄されたアリス。 彼女は、利益が原因で自分を捨てたのならば、彼から客を奪ってやるのが復讐になると考えた。

【完結】虐待された少女が公爵家の養女になりました

鈴宮ソラ
ファンタジー
 オラルト伯爵家に生まれたレイは、水色の髪と瞳という非凡な容姿をしていた。あまりに両親に似ていないため両親は彼女を幼い頃から不気味だと虐待しつづける。  レイは考える事をやめた。辛いだけだから、苦しいだけだから。心を閉ざしてしまった。    十数年後。法官として勤めるエメリック公爵によって伯爵の罪は暴かれた。そして公爵はレイの並外れた才能を見抜き、言うのだった。 「私の娘になってください。」 と。  養女として迎えられたレイは家族のあたたかさを知り、貴族の世界で成長していく。 前題 公爵家の養子になりました~最強の氷魔法まで授かっていたようです~

ハルシャギク 禁じられた遊び

あおみなみ
恋愛
1970年代半ば、F県片山市。 少し遠くの街からやってきた6歳の千尋は、 タイミングが悪く家の近所の幼稚園に入れなかったこともあり、 うまく友達ができなかった。 いつものようにひとりで砂場で遊んでいると、 2歳年上の「ユウ」と名乗る、みすぼらしい男の子に声をかけられる。 ユウは5歳年上の兄と父親の3人で暮らしていたが、 兄は手癖が悪く、父親は暴力団員ではないかといううわさがあり、 ユウ自身もあまり評判のいい子供ではなかった。 ユウは千尋のことを「チビ」と呼び、妹のようにかわいがっていたが、 2人のとある「遊び」が千尋の家族に知られ…。

ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽
恋愛
ルイーズは婚約者を幼少の頃から家族のように大切に思っていた そこに男女の情はなかったが、将来的には伴侶になるのだからとルイーズなりに尽くしてきた しかし彼にとってルイーズの献身は余計なお世話でしかなかったのだろう 婚約者の裏切りにより人生の転換期を迎えるルイーズ 婚約者との別れを選択したルイーズは完璧な侍女になることができるのか この物語は様々な人たちとの出会いによって、成長していく女の子のお話 *更新は不定期です

2024年8月の満月は…

鏡子 (きょうこ)
エッセイ・ノンフィクション
2021年12月の新月から バーチャルで2019年の12月にタイムスリップします。 新月は、何日なのか? まだ確認していません。 それまでは、モナリザの話をしますが、 しばし、お付き合い下さい。

処理中です...