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第2章

第45話

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「カイルいいのか?ノアに何も言わずに出てきたりして」

「仕方がないだろ。ノアは俺が大嫌いなんだって。流石の俺でも真正面からはっきり言われたらへこむわ」
そう言われて俺は半年……いやそれ以上になるかもしれないが山に籠ることを勝手に決めたのだ。父上と母上には怒られたが仕方がない。ノアには何も言わずに出てきてしまった。今までそんなことをしたことなかった。けど……

   ◇◇◇◇◇

「カイルが僕のこと嫌いなんじゃん。僕がカイルを嫌いだなんて言って誤魔化してるけどさ。そんなに僕が嫌いならどこでも……誰とでも行っちゃえばいいんだ。カイルなんて大っ嫌い」

あんなことをノアの口から聞くとは思ってなかった…
どうしてこうなった?ノアと出会って5年、ノアのことだけを考えて毎日を過ごしてきたのにどうしてこうなったのか全く分からなかった…

「カイル、俺はお前に言ったよな?あの戦いで大怪我してノアに助けてもらったときに絶対に幸せにしろって言ったのになんでこうもすれ違ってばかりなんだよ」

「わからないんだノアの気持ちが……」
そう。俺は必死になってこの5年の日々を思い出してみた。ノアが変わったのはいつだ?何がきっかけだった?そう思って思い出したのは去年の俺の誕生日パーティーが終わってから変わった気がする。

その日の俺は久しぶりに会う友達や親戚にと挨拶回りが忙しかった。その中には女性もいたが…俺はあまり話をしてなかったと記憶してるが…ノアはあのときどこにいた?1人でいたのか?誰かに何か言われてる様子はなかったと……思うが。

それから数日たってからだノアが今までカイくんって呼んでいたのがカイルと呼ぶようになったのは、それとパパ、ママをお父さん、お母さんと呼ぶように変わった。その時に聞いたらクラスの友達はみんなそう呼んでるから。俺のことも、くん付けは恥ずかしいでしょ?と言っていた気がした。そのときの俺はノアも恥ずかしいと思うほど成長したんだと嬉しく思っていたが…本当は違うのか?本当の理由は他にあるのかもしれないが、それをノアに今さら聞けない。今のこんな情けない俺ではノアの元には帰れない。

そういえば昨日は本当に無事でよかった。
いつも通りノアはリアムと一緒に帰ってくると思っていた。朝、怒らせてしまったから機嫌取りに姉上が言っていたクレープ屋に連れて行こう思ったが下校の時間を過ぎてしまったからカールと一緒にノアを探していたらリアムが1人で歩いているのが見えた。後ろには女の子たちも一緒だ。ノアの姿が見えずにイライラした気持ちでリアムの元に降りてもらった。聞いたらノアはムーンと2人だけでクレープ屋に行ってしまったと。しかも女の子達が俺に会いたがってるから屋敷に連れて行けと……まさかそんなに嫌われてるのかと思ったが、最近街ではよくない噂もあった。嫌がる女の子を路地裏に連れ込んだりしている輩がいると、もしノアに何かあったらと思ったが俺が着いた時にはそれが現実になっていた。牛族の2人がノアとムーンを連れ去ろうとしている姿が見えた。他にもたくさん見ていた奴らがいたが牛族でも大柄な2人を止めることができないのだろう。みんな遠巻きに見ていただけだった。
俺がノアの元に行く途中で
「カイル助けて」
とノアの小さな声が聞こえたと思ったらそのまま意識をなくしてしまった。

その2人はカールとリアムに取り押さえられた。ムーンは泣きながら何度も謝ってくれたが、きっとノアが無理矢理誘ったんだろう。それに2人はお金もなかったからクレープも食べられなかったと。リアムに頼んでムーンにクレープを買ってやり家に送り届けるように伝え俺とカールは屋敷に戻った。

屋敷に着くまでノアは嫌だ嫌だと手足をバタバタさせながらうなされていた。俺は昔の時のように両手と尻尾でノアを包み込んでこめかみにキスをした。するとこわばっていた表情が徐々に穏やかになってきた。

「触られて嫌だったんだな」

「そうだな」
俺が大怪我から回復した時に母上から聞いたことがある。俺たちは運命だから他の人が触ったりすると嫌悪感を感じるようになるから気をつけなさいと。俺はノアに出会ってから他の人と……なんて考えたこともなかった。ただあと10年以上も耐えられるのかと思ったがなんとか我慢している。きっとノアも同じ気持ちなんだと思って俺だけがノアに触るのを許されているようで嬉しかったのに……

悶々とした気持ちの中、俺が山に籠ってカールと訓練に打ち込んでいたころ屋敷ではノアが大変なことになってるなんて思いもしなかった。
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