転移したら獣人たちに溺愛されました。

なの

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第2章

第40話

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「ノアはまだ嫌いなのか?もう中等部になったんだから」
「そんなこと言ったって嫌いなものは嫌いなんだってば、そんなのわかってるでしょ」
「でも、そんなまずい食べ物じゃないだろ」
「僕はなの、ねぇお母さん、カイルがうるさい」

「まぁまぁなんなの朝から?ノアもカイルも大きな声出して」
「カイルがまた僕にキノコを食べさせようとするんだよ。嫌いだっていつも言ってるのに、せっかくニール(料理長)が僕にはコーンスープ作ってくれたのにさ」
「だが、好き嫌いは」
「もう、うるさいな学校に行ってくる」
「ノア待ってください~」
「リアムは毎日、毎日ついてこなくていいから」
「ノアじゃあ俺と学校に……」
「カイルとは行かない絶対に!お母さん行ってきます」
バタンと大きな音を立てて家を出ていった。

「カイル、なんでそんなに無理やり食べさせようとしたの?」
「だって母上、山にはたくさん美味しいキノコがあるのにノアは食べられないんですよ」
「しょうがないじゃない。ほら覚えてる?ノアが小さい頃みんなでオムライスを食べたとき残したじゃない。初めての病院で泣いて、あなたにも泣かされて疲れたからだってそのとき思ったらマッシュルームが入ってて苦手なんだって後でわかったじゃない?それからみんなでキノコは食べさせないようにしたのよ。だってノアに嫌われたくなかったから…そんな甘やかしてきたんだものの好きになるわけないじゃない。なのに今さら」 

「でも母上、ノアももう中等部になったんです。大きくなったんですから」

「それでも苦手なものは変わらないわよ。ほら、あなたも準備しないとカールが迎えに来るわよ。今日も騎士たちと訓練でしょ?」 

「はい。わかりました行ってきます」

ノアと出会ってからもう5年の月日が経った。ノアは今まで〝くん〟を付けて呼んでくれていたが去年くらいからだろうか?カイルと呼び捨てになった。周りの友達の影響からかお父さん、お母さんと呼ぶようになってもう〝くん〟を付けて呼ばれる獣人はこの屋敷にはいなくなった。それに…最近特に口答えが酷い俺の言うこと全てに反論してくる。色々不安になってホルト先生に聞きにいくと笑いながら
「ようやくノアも反抗期がきたかぁー大人に近づいてるなっ」
と言っていたのだ。俺はまだまだノアを愛でて可愛がりたいのに…

それにだ、夜は1人で寝るようになってしまった。それでもあの頃と同じようにあの狼のぬいぐるみを抱いて寝ている姿はまだまだ子どもなんだけどな。

そういえばノアの足はすっかり良くなって走ることも飛び跳ねることもできるようになった。気づけば1人でどこにでも行ってしまう。しかも逃げ足も速い。まぁそれはムーンとのかけっこをしていたからだろう。でもそれが出来るようになったのは……やっぱりあの日からだろう。


俺が野獣との闘いで負傷して助けられた時の記憶はノアにはなかったが…熱も下がり元気なのでいつものようにリハビリをしようと平行棒の前の椅子に座らせると足を動かして立とうとしていたノアが
「カイくん足、全然痛くない。僕、立てるよ」

そう言って棒に掴まらずに立ってしまった。それだけではなく支えがなくても1人で歩けたのだ。
リアムもライナスもサイモン先生も思わず驚いて何も言えなかった。

「ねぇカイくん僕の足、治ったね」
そう笑顔で言ったノアを抱き上げた。
「ノア凄い、凄いぞ。歩けるようになったな」 

そのとき母上が光の粒が全てを治してくれたんじゃないかと言ってたな。あの頃の俺は凄く幸せだった。なのに最近の俺は……

「…っル…イっル…カイル、オイ」
「うわぁ~びっくりした。なんだカールか」
「なんだじゃないだろ?何回呼ばせんだ」
「悪い…」
「さっきマーヤ様に聞いたぞ、また喧嘩したって?」
「喧嘩じゃない」
「喧嘩みたいなもんだろ。お前はそんなにノアに嫌われたいのか」
「そんなわけっ」
「そうだろ?毎回、毎回ノアに嫌われることして運命なのに嫌われることばっかだろ。そんなんじゃ伴侶になんかなれないぞ。それに……」 
「それに?」 

「お前知らないの?ノアは昔から可愛かっただろ?それが今はどうだ、もっと可愛くなってんだぞ。男の子や女の子からモテたらどーする?彼氏や彼女なんかできたら」
「そんなの許すわけないだろう?」
「お前が許さなくてもノアに恋心が生まれる可能性だってあるってことだ。嫌われないようにしろよ。それより準備は?早く行くぞ」
「わかった」
俺はカールの背中に乗って練習場に着くまで考えていた。


ノアが恋……考えてもなかった。俺の伴侶だとまだ8歳だったノアに出会って、いつかは俺と…と考えてたけど、運命もまだわからないノアはもしかしたら好きな人ができるかもしれない?もうすでにいるかも?冗談じゃない。今まで俺がノアのためにしたことはなんだったんだ。怪我をしないように、病気をしないように、いつでもどこにいてもノアのことを1番に考えてあげているのに…でも俺が優しくしないとノアは優しくしてくれる人の元に行く可能性もあるのか?それは困る。大いに困る。俺の伴侶だからとわからせる方法はないのか…どうしたら俺のノアへの愛をわかってもらえるのか……でも悩んでも答えなんか出なかった。ただ、あの頃のようにノアを抱きしめて眠れたら、きっとそれだけで俺は幸せだろう。

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