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第1章
第37話
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カイル王子は野獣の爪が刺さり大量出血をして呼びかけにも全く反応しない一刻を争う状況だ。救助部隊の面々は魔法を使えるがそんなに魔力は強くない。それでもなんとか屋敷までもてばいい。そしたらマーヤ様が助けてくれるだろう。
カールも兄のバルトも戦闘で傷ついたが翼に簡易包帯を巻いてカールはカイルを乗せバルトは足を怪我してしまい動けない私を乗せて他のものに後処理を任せて王国へと翼を広げてくれた。いつもよりも速いスピードで動かせない翼を必死になってなんとか辿り着いた。庭につくとすでに連絡を受けて待っていたマーヤ様と使用人たちが集まっていた。
「カイル王子っ」
「カイル、ライナス」
王子の姿にみんなが息をのむのがわかった。獣の姿で戻ってくるとは思わなかったのだろう。それでも気丈にマーヤ様は治療室に運ぶように促した。
「私が付いていながら本当に申し訳ありません」
「いいのよ。ライナスのせいじゃない。バルト、カールあなたたちも処置するからそこで待っててね」
リアムに抱っこされたノアの姿が見えた。獣の姿のカイル王子を見て驚いた様子だったがすぐにカイル王子だと気がついた。
「ねぇカイくんなの?カイくん治るの?ママ治せるの?カイくん死んじゃ嫌だ~」
と大声で泣き出した。
「大丈夫よノア泣かないの。カイルも頑張ってるんだから。私もアリーサもクラリスもみんな頑張るから」
「……っわかった」
涙声で返事をしたノアは泣くのを堪えていた。治療室には入っちゃダメと言われたが部屋の前からノアは離れなかった。
私達も治癒魔法を施してもらって前よりは少し楽になったので治療室の前に行くとノアが部屋の前で蹲っていた。
「ノア、まだ治療には時間がかかるんです。だからご飯を食べましょう」
「いらない」
ノアは部屋の前から離れなかった。無理やり抱っこして連れて行こうとすると火がついたように泣きわめくので仕方がなくリアムもサイモン先生もドアの前で誰かが出てくるのを待つしかなかった。しばらくすると国王が部屋から出てきた。今の状況を聞いたんだろう。
「パパ、カイくんは?」
「あぁ頑張ってる」
「パパ、カイくん狼さんだった」
「そうだな。狼さんだよ。ノアは怖かったか?」
「んーんっ怖くない」
「そうか」
「パパ、明日学校休んでもいい?」
「あんなに頑張って行ってたのに?」
「だって僕が学校行ってる間にカイくん起きるかもしれないよ」
「あの怪我ならまだ治療に時間がかかるからノアは学校に行きなさい」
珍しく国王がノアの言うことに反対した。いつもはなんでも笑ってノアの言うことをいいよと言っていた国王のその言葉にノアは一瞬戸惑ったが次に出た言葉はわかりましたと小さな声で返事をした。
きっと国王にも思うところがあるんだろう。それとも何かマーヤ様に言われたのかもしれない。その後は国王に明日は学校だからと言われノアはご飯を食べ、お風呂に入って国王と一緒に布団に入った。
次の日からノアは人が変わったように笑わなくなって1人で寝ると言い出した。必要以上の言葉を発することもしなくなってしまった。
「行ってきます」
リアムとサイモン先生と一緒に学校に行き帰ってきたらリハビリをする。カイル王子が獣退治に出かけたときと同じルーティーンをこなしてる。ただ…
「ごちそうさまでした」
「ノア残しているぞ」
テーブルの上には半分以上のご飯が残っていた。
「もういりません。ごめんなさい。リー寝るから連れてって」
「ノア、パパと」
「大丈夫。今日も1人で寝れるから、カイくんが……なんでもないです。リー行こう」
「じゃあノア行こうか」
「はい」
ノアはそのまま抱っこされて部屋に行ってしまった。
「国王、いいんですか?」
「何がだライナス」
「ノアです。あれから3日ですよ。あんなに憔悴しきってて…リアムが言ってました。ベットに入ると狼のぬいぐるみを抱きしめてカイくん、カイくんって言ってるって…夜中も泣いているみたいです。国王にも思うところがあるのかもしれませんがノアはまだ小さいんです。あのままだと」
「わかってる。でも今、学校を休んであのドアに張り付いてても何もできないだろ。万が一、万が一だカイルがいなくなったらノアはもっと悲しむだろ?それならば……」
「それでもです。国王お分かりですか?あの日からノアは笑わなくなったんですよ。それでもいいんですか?カイル王子が目を覚ましたら……」
「難しいと言ったんだよ」
「えっ?」
「あのなんでも治せる治してきたマーヤが治癒魔法が効かないと言ってるんだ。あの野獣の爪が体に刺さったときに体内に何かの毒が入り込んだらしい。それが魔法の力では無理で、今研究者たちが原因を探している。でもどのくらい時間がかかるか…だから俺にも覚悟するようにって言ったんだよ。だからかな…ついノアに当たってしまった」
「そんな……それでもノアは国王の子どもでしょ?王子が大変なときだからこそ」
「そうだ。だからこそカイルに万が一があった時には俺たちがノアを守らなくてはいけない。でも本当に守ってあげれるのか…支えられるのか…俺だって不安なんだよ。まさかこの国で1番強いと言われてるカイルがこんな風になるなんて誰も思いもしないだろ?」
「そうですね。まさか一撃を喰らうとは……」
そのときリアムが慌てた様子でやってきた。
カールも兄のバルトも戦闘で傷ついたが翼に簡易包帯を巻いてカールはカイルを乗せバルトは足を怪我してしまい動けない私を乗せて他のものに後処理を任せて王国へと翼を広げてくれた。いつもよりも速いスピードで動かせない翼を必死になってなんとか辿り着いた。庭につくとすでに連絡を受けて待っていたマーヤ様と使用人たちが集まっていた。
「カイル王子っ」
「カイル、ライナス」
王子の姿にみんなが息をのむのがわかった。獣の姿で戻ってくるとは思わなかったのだろう。それでも気丈にマーヤ様は治療室に運ぶように促した。
「私が付いていながら本当に申し訳ありません」
「いいのよ。ライナスのせいじゃない。バルト、カールあなたたちも処置するからそこで待っててね」
リアムに抱っこされたノアの姿が見えた。獣の姿のカイル王子を見て驚いた様子だったがすぐにカイル王子だと気がついた。
「ねぇカイくんなの?カイくん治るの?ママ治せるの?カイくん死んじゃ嫌だ~」
と大声で泣き出した。
「大丈夫よノア泣かないの。カイルも頑張ってるんだから。私もアリーサもクラリスもみんな頑張るから」
「……っわかった」
涙声で返事をしたノアは泣くのを堪えていた。治療室には入っちゃダメと言われたが部屋の前からノアは離れなかった。
私達も治癒魔法を施してもらって前よりは少し楽になったので治療室の前に行くとノアが部屋の前で蹲っていた。
「ノア、まだ治療には時間がかかるんです。だからご飯を食べましょう」
「いらない」
ノアは部屋の前から離れなかった。無理やり抱っこして連れて行こうとすると火がついたように泣きわめくので仕方がなくリアムもサイモン先生もドアの前で誰かが出てくるのを待つしかなかった。しばらくすると国王が部屋から出てきた。今の状況を聞いたんだろう。
「パパ、カイくんは?」
「あぁ頑張ってる」
「パパ、カイくん狼さんだった」
「そうだな。狼さんだよ。ノアは怖かったか?」
「んーんっ怖くない」
「そうか」
「パパ、明日学校休んでもいい?」
「あんなに頑張って行ってたのに?」
「だって僕が学校行ってる間にカイくん起きるかもしれないよ」
「あの怪我ならまだ治療に時間がかかるからノアは学校に行きなさい」
珍しく国王がノアの言うことに反対した。いつもはなんでも笑ってノアの言うことをいいよと言っていた国王のその言葉にノアは一瞬戸惑ったが次に出た言葉はわかりましたと小さな声で返事をした。
きっと国王にも思うところがあるんだろう。それとも何かマーヤ様に言われたのかもしれない。その後は国王に明日は学校だからと言われノアはご飯を食べ、お風呂に入って国王と一緒に布団に入った。
次の日からノアは人が変わったように笑わなくなって1人で寝ると言い出した。必要以上の言葉を発することもしなくなってしまった。
「行ってきます」
リアムとサイモン先生と一緒に学校に行き帰ってきたらリハビリをする。カイル王子が獣退治に出かけたときと同じルーティーンをこなしてる。ただ…
「ごちそうさまでした」
「ノア残しているぞ」
テーブルの上には半分以上のご飯が残っていた。
「もういりません。ごめんなさい。リー寝るから連れてって」
「ノア、パパと」
「大丈夫。今日も1人で寝れるから、カイくんが……なんでもないです。リー行こう」
「じゃあノア行こうか」
「はい」
ノアはそのまま抱っこされて部屋に行ってしまった。
「国王、いいんですか?」
「何がだライナス」
「ノアです。あれから3日ですよ。あんなに憔悴しきってて…リアムが言ってました。ベットに入ると狼のぬいぐるみを抱きしめてカイくん、カイくんって言ってるって…夜中も泣いているみたいです。国王にも思うところがあるのかもしれませんがノアはまだ小さいんです。あのままだと」
「わかってる。でも今、学校を休んであのドアに張り付いてても何もできないだろ。万が一、万が一だカイルがいなくなったらノアはもっと悲しむだろ?それならば……」
「それでもです。国王お分かりですか?あの日からノアは笑わなくなったんですよ。それでもいいんですか?カイル王子が目を覚ましたら……」
「難しいと言ったんだよ」
「えっ?」
「あのなんでも治せる治してきたマーヤが治癒魔法が効かないと言ってるんだ。あの野獣の爪が体に刺さったときに体内に何かの毒が入り込んだらしい。それが魔法の力では無理で、今研究者たちが原因を探している。でもどのくらい時間がかかるか…だから俺にも覚悟するようにって言ったんだよ。だからかな…ついノアに当たってしまった」
「そんな……それでもノアは国王の子どもでしょ?王子が大変なときだからこそ」
「そうだ。だからこそカイルに万が一があった時には俺たちがノアを守らなくてはいけない。でも本当に守ってあげれるのか…支えられるのか…俺だって不安なんだよ。まさかこの国で1番強いと言われてるカイルがこんな風になるなんて誰も思いもしないだろ?」
「そうですね。まさか一撃を喰らうとは……」
そのときリアムが慌てた様子でやってきた。
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