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第1章

第33話

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病院も終わって家に帰ると案の定、今までに見たことがないくらいの絵本や児童書が玄関に溢れていた。

「うわぁ~カイくん本がいっぱいあるよ。どうして?」
「あぁ…ノアは本が好きだろ?だからリアムが用意してくれたんだよ」
「でもなんで玄関に?僕のお部屋広いから置けるのにな」
いや…きっと俺たちが帰って来るのが思ったよりも早くて部屋に運べなかったのだろう。それと、どこに置いていいかわからなかったのかもしれない。俺はノアに読みたい本を選んでもらって残りは部屋に運ぼうとお願いしようと考えていると父上がやってきた。 

「本はパパたちの寝室におこうか。そしたら寝る前にパパが読んであげれるからな」
そう言ってにこやかに笑っている父上に俺は反論した。
「父上、俺だってノアと寝たいんです。これからのことを考えたら俺の部屋に…」
すると父上は
「何言っているんだ。お前はちゃんと読み聞かせなんてできないだろう。それに一緒に寝るのは1週間に1回だ」
「そんな~せめて3日に1度…」
「無理だな」

「はいはい。もうごちゃごちゃうるさいわよ2人とも。誰と寝るかはノアが決めるんだから2人が決めることではないでしょ。はいみんな~仕方がないからこれ分けてくれる?1つは私達の寝室に、1つはカイルの部屋、もう1つはノアの部屋に適当でいいからよろしくね」

父上と俺が言い合ってるうちに母上が段取りよく玄関に溢れていた本を運ばせて何か言いたそうに俺の目を見ていたノアを連れて行ってしまった。気がついたら本がなくなった玄関に父上と2人残されていた。

「今日は俺がノアに読み聞かせてあげるんだから一緒に寝るからな。ノア~パパとなんの本読んで寝ようか」
と言いながらノアの元に言ってしまった。

ハァー…俺の運命の子なのに、父上はノアが可愛くて仕方がないのかもしれないが俺もノアの温もりを感じて寝たいと思うのはダメなのか?なんだ1週間に1回っておかしいだろ。1ヶ月に4回しか寝られないなんて。でも考えれば最低でもあと10年以上もこの状態で耐えなきゃいけないんだろう。流石に中等部に行っても父上とは寝ないとは思うからあと5年くらいか?そのあと俺と寝ることなんてしないだろうな。ああ~誰かノアを今すぐに成長させられる魔法でもなんでも使ってほしいと思ってしまう。まぁ現実に無理なのはわかってるが…ついため息ばかりが増えていった。

「カイル王子、ノアが……」
従事のライナスがやってきた。どのくらいの時間そこにいたのかわからないくらい俺は考えていたのか?考えてもどうしようもないことを、でもノアに何があったんだ?

「王子が戻ってこないので心配してます。もしかしたらカイくんはパパと僕が一緒に寝るのが嫌なのかな?ってだから今日からは僕1人で寝るって言ってるんです。国王がカイル王子のことは何にも気にしなくていい今日はパパと寝ような。本もいっぱい読んであげると言ったら王子に嫌われたくないから一緒に寝ないと言ってるです」
そう言った途端ノアの泣き声が聞こえてライナスと部屋に急いで戻るとノアはお気に入りになった狼のぬいぐるみを抱きしめて泣いていた。

「ノアどうした?何が悲しいんだ?」
何も答えないノアを膝に乗せようと抱っこをしようとしたら

「カイくん僕、1人で寝るからパパと仲良くしてね。僕わがまま言わない。みんな家族だからカイくんが嫌だと思うことはしないよ」
と言い出した。俺はノアが抱っこしているぬいぐるみを取り上げて向かい合わせに抱っこした。

「ノア俺の話を良く聞いて、俺と父上は喧嘩していたわけじゃない。俺も父上もノアが好きすぎて一緒に寝たくてちょっと言い合ってただけだよ」

するとノアは不安な顔で
「カイくん怒ってたからずっと玄関にいたんじゃないの?」
「いや違うよ。少し仕事のことで考え事をしてて……」

本当のことなど言えやしない。ノアを大人にしてくれる魔法がないかなんて馬鹿げたことを考えてるうちに時間が経っていたんだろう。それでノアを不安にさせてしまった。今日は病院に行ってそこでも泣いたから少し心が不安定になってるとわかっていたのに、俺はノアの頬についた涙を拭きながら

「父上も、母上も俺もみんなノアが好きだよ。だからノアと寝たいんだ。でもノアだって1人で寝たい時もあるかもしれないけど足のこともあるし、誰かと寝てくれる?そうだな3日に1回でいいから俺と寝ないか?ノアに面白い本も楽しい本も読んであげれるように練習するからさ」

「僕ね。今まで1人で寝てたの。狭くて暗いところで……だから誰かと一緒に眠れるの嬉しいんだ。それにね、パパとママの布団もカイくんの布団もふかふかでくっついてると暖かくて入るとすぐに眠くなっちゃうの。僕も……僕もみんなと一緒に寝るほうがいいよ」
そう言うとまた泣き出してしまった。今日は特に気持ちが不安定なのだろう。悲しかった人間時代を思い出させてしまったみたいだ。ノアの身体を抱きしめて背中を撫でてあげた。すると父上が近づいてきた。

「ノア、パパが悪かったね。たまにはカイルと寝ていいからそんなに泣かないで、ノアが泣いてるとパパも悲しくなってくるよ。ノア大好きだよ。本当にごめんね。ノアが謝らなくてもいいんだから、パパが全部悪かった」
滅多に人前では謝らないし、威厳もあって近寄りがたい雰囲気の国王もノアの前だとただの獣人に戻ってしまう。それだけ俺たち家族にとってノアは宝であり守るべき存在だ。こんな小さなことで父上と言い合いをしてノアを悲しませてしまったこと俺は反省をした。



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