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第1章

第30話

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ノアを抱きかかえ馬車から降りると
「お帰りなさい。あら、寝ちゃったのね?」
母上が待っていてくれた。
「あぁ疲れたんだろう。今日は4時間も勉強頑張ったからな」
「そう、でもご飯は?」
「まだ食べてないからもう少ししたら起こすよ」
「そうね。リハビリも頑張らなきゃいけないしね」
ノアをソファーに寝かせようとすると父上がやってきた。

「ノアは寝てるのか。今日はどうだった?」
「はい。図工の時間にノアが俺たち家族の絵を描いてくれたんですが、とても上手でみんなに褒めてもらったんですよ」
「そうか…ノアは絵を描くのが上手か」
「はい。それで来週の授業参観日にその絵を保護者のみんなにも見てもらうって言ってましたが父上は行けそうですか?」
「ノアの絵が見れるのか?行く、行くに決まってる。エアロン、何がなんでもノアの授業参観には行くからな。都合をつけておいてくれ」
「かしこまりました」
父上はとても嬉しそうに寝ているノアの頭を撫でながら、ノアありがとう。ノアの絵を見るのが楽しみだ。と言っていた。その父上に言うのは少し躊躇ったが、意を決して父上にノアが算数の問題がほぼできないことを伝えた。

「そうか…算数はこれからどんどん難しくなるからな。この段階でつまづいていたらこれからが大変になるな。せっかくノアの得意なことも分かったんだ。苦手なことも伸ばしてやらないとな。苦手意識を持つとこの先もっと大変になるが、どうしてやったらいいかな?」
父上と2人で悩んでいたらリアムに声をかけられた。

「あの、みんなでゲームとかしながら、まずは数字に慣れてもらうのはどうでしょう。例えば、クッキーを1枚ずつ並べて全部で何枚あるけど、そこからみんなが食べたらいくつ残るかとかして、あとは紙に計算式を書いて覚えるとか?それとノアは歌も好きそうでしたから、九九の歌を聞いてみんなで歌って覚えさすのもいいかと思いますがいかがでしょうか」

「リアム、お前もなかなか考えたな。よしノアが起きる前にみんなにも知らせておいてくれ。ノアには大変かと思うが少しの辛抱だ。きっとわかるようになれば算数も好きになるだろうからな」

「承知いたしました。周知しておきます」
こうしてノアの算数克服大作戦を決行することになった。
そろそろノアを起こそうとしたらノアの目がパチリと開いた。

「ノアおはよう。起きたか?」
「カイくんおはよう。ごめんなさい」
「んっ?なんで謝る?ノアは悪いことしてないぞ」
「僕…寝ちゃってた」
シュンっとした声で謝るノアを抱っこして膝の上に乗せた。

「ノア、久しぶりに学校に行って疲れたんだ。謝ることじゃないから心配しなくていいからな。じゃあお昼ごはんを食べようか。今日はなんだろうな」
抱っこしながら行くと父上と母上も席に着いていた。

「ノア今日は頑張ったみたいだな。ノアの絵が素晴らしかったって聞いたよ。来週の参観日には見に行くから。ノアの絵を見るのが今から楽しみだよ」
「本当ね。ノアが頑張ってる姿見るのママも楽しみよ」
そう言われてもノアは表情を固くしていた。

「ノア?どうした?」
父上が聞いてもただ下を向いていた。そして……

「僕ね。算数できなかったの…だから…」
目に涙を浮かべて小さな声で恥ずかしいから来なくていいです。と言い出した。それを聞くと父上が席を立ってノアの前にきた。

「ノア、おいで」
父上が手を広げるとノアは手を伸ばして父上に抱きついてその胸元に顔を埋めた。

「ノア、みんな誰でもできることとできないことがあるんだよ。ノアは絵が得意だろ?でもクラスの中には絵を描くのが苦手な子だっている。それと同じように算数が得意な子もいれば、ノアみたいに苦手な子もいる。みんなそれぞれ得意、不得意の個性があるんだよ。ノアは人間界で学校にも行けなかったんだからわからなくて当然だ。だから学校に行って苦手なことを勉強するし、得意なことは伸ばすんだよ。それにな、わが家にはたくさんの人が働いてるだろ?その中にはやっぱり掃除が得意な人、料理が得意な人、洗濯が得意な人、みんなそれぞれ得意な分野で働いてくれてるんだよ。だからできなくても恥ずかしがることは何もないから安心しなさい。ノアが算数が苦手だとしてもパパもママも学校には見に行くぞ。ノアが頑張ってる姿を見たいんだから」
ノアは父上の話を頷きながら聞いていた。

「お待たせいたしました」
そう言ってお昼ごはんを持ってきてくれた。

「わぁ~スパゲッティーミートソースだぁ」
ノアが目をキラキラさせてお皿の上を見ていた。

「ノアはミートソース好きか?」
「うん。お母さんが作ってくれたの」
「そうか。じゃあいっぱい食べような」
父上は嬉しそうにノアにミートソースを口に運んでいた。
食べ終わるとデザートにぶどうを持ってきてくれた。

「ノアこのぶどうはたくさんあるな。パパとゲームをしようか?」
「ゲーム?」
「うん。ゲームだ」
「ノア、お皿にぶどうを5つずつ入れてくれるか?」
そう言って2個の小皿にぶどうを5つずつ入れていった。

「ノア、パパとノアのお皿にぶどうが5個ずつ乗ったな。じゃあ両方足すとぶどうは何個ある?」
ノアはえーっと……と考えようとしてると
「ノア両手を広げてごらん。ノアの手の指は全部で何本ある?」
「10本だよ」
「そうだ。10本だ。右手は?」
「5本」
大きく手を広げて見せた。
「そうだな。じゃあこのパパのぶどうは何個?」
「5個……僕のも5個だから……全部で10個」
「そうだ。よくできたな」
そう言ってノアの頭を撫でるとノアは目を細めて笑ってくれた。
少しずつ少しずつ算数が数字が好きになるようにみんなでノアの算数克服大作戦をしよう。

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