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第1章

第24話

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「一体どういうことだ、何があったんだ?なんでそんなことに…とりあえず話は後で聞くから今から行く」
父上に用事があり執務室に行くと、どこからか連絡が入ってたようで怒鳴り声が聞こえてきた。俺の顔を見ながら電話を切ると
「ノアが倒れたそうだ。学校に迎えに行くが、お前はどうする?」
は?ノアが倒れたって……朝はあんなに学校を楽しみにしていたのに、何があったのだろう。一気に心配になった俺は父上と一緒に学校に向かった。
門の前ではリアムが待っていてくれた。

「国王、王子すみませんでした」
「リアム何があった?」
ノアのいる場所に足を進めながらリアムは答えた。

「それが、休み時間が終わり、みんなが体育の時間なので移動しようとしたんですがノアの顔色が悪くなったのでサイモン先生が声をかけたんです。ノアは大丈夫と言ってくれたのですが、グランドに移動中に車椅子から滑り落ちそうなのを咄嗟に抱き上げた時にはもう気を失っておられて」
「今、ノアは?」
「専用のベットが置いてある部屋で休ませております」
「サイモンはなんて?」
「久しぶりの学校で色んな人と会って緊張やストレスが原因で血圧が下がったことによる失神だろうと、多分もう意識は戻ってると思います」
そう話してる間に部屋に着いてドアを開けるとノアが目を開けて横になってる姿を見て駆け寄った。

「ノア疲れたか?気分は?大丈夫か?」
思わず矢継ぎ早に質問してしまったがノアはごめんなさい。と声を震わせて泣きながら謝ってきた。

「ノアが謝ることはないから泣かないでいいよ」
震える小さな身体を俺と対面になるように抱き上げ、そのまま背中をさすってやる。きっとせっかく来た学校で倒れてしまったからだろうが仕方がない。今までずっと家での生活だったんだから。
しばらく抱きしめていると少し落ち着いてきたので声をかけた。
「そういえばムーンには会えたか?」
「うん会えたよ。隣の席だった」
「そうかよかったな。他のクラスの子ともお話ししたの?」
「ううん。いっぱい質問されてどうやって答えていあかわからなかった」
「そうか…そんなに質問されたのか。人気者だったな。でも一気に言われると困るよな」
「僕みたいな人間はクラスにいないから…おかしいのかな?ねぇカイくん、僕…ここの学校に通っててもいいの?」
もしかして、倒れたのもそれが原因か?獣人ばかりで自分と同じ人間がいないことがストレスになったのか?思わず父上を仰ぎ見てしまった。
父上はノアの頭を撫でながら
「ノアが学校に行くのが嫌なら勉強を教えてくれる人に家に来てもらうこともできるが、他のお友達とも仲良くしてほしいとパパは思うぞ。きっとノアが珍しいんだよ。子どもは人間に会うことが少ないからな。でもきっとお友達になれるよ。大丈夫だ」

父上が声をかけてもノアの顔は晴れることはなく、また何か考えているようで俺の胸に顔を埋めていた。ちょうどチャイムの音が鳴ったので
「ノア今日はもう帰ろうか?頑張ったな」
そう声をかけるともう帰りたい。と小さい声で言ってくれた。俺はそのままノアを抱っこして部屋を出た。
「ノアみんなにさようなら言ってから帰ろうな」
本当は嫌かもしれないが黙って帰るよりはいいだろう。リアムに案内を頼み教室に行くとムーンが駆け寄ってきた。
「ノア帰っちゃうの?」
俺を見上げて声をかけてきた。
「体調が少し悪くなったから今日は帰るよ」
他の子どもたちも近寄ってきて抱っこされてるノアを見て

「わぁ~王子様だ」
「ねえノアなんで抱っこされてるの?」
「具合悪いの?」
「明日は来るの?」
「王子様と一緒に暮らしてるって本当?」
「一緒に遊べるの?」
「ノアのお父さんとお母さんは?」
色んな質問が教室内に響いていた。きっとノアもこんな状態だったのだろう。ノアを見ると目をギュッとつぶって俺の服を掴んでいた。俺はノアを抱えて教室を出ようとするとライナスが
「質問は1人1個、紙に書いてください。ノアは体調が悪いのでカイル王子が後でお返事を書いてくれるから質問がある人は書いてくれますか?」
そういうとみんなは一斉に自分の机に向かった。

「王子、ここは私に任せてノアを連れて帰ってください」
ライナスとリアムに任せて俺たちは家に帰った。

ノアをベットに寝かせるとサイモン先生がノアを診察してくれた。特に体調は悪くないようだが、念のため今日のリハビリは中止、お部屋で横になって過ごすことになった。ノアは帰ってきてから声を発することなく、ベットから見える外の景色をただ黙って見ていた。

料理長が昼食を持ってきてくれてもノアは食欲もなかった。あんなに楽しみにしていた学校が思った以上に辛い場所になってしまった。まだ行くのは早かっただろうか?ちゃんと歩けるようになってから通わせた方がよかっただろうか?するとライナスとリアムが帰ってきた。

「ノアただいま戻りました。これはノアにプレゼントです」
ライナスは大きな紙を渡してくれた。ノアに見えるように開いて見ると、そこにはみんなからのメッセージが書いてあった。
〝早く元気になってね〟
〝ここの学校のお昼ご飯は美味しいよ〟
〝保健室にいる先生は魔女なんだよ〟
〝みんなで遊ぼうね〟

「ノア、みんなが心配してくれてるね。よかったな」
きっとライナスがみんなに書いてもらったのだろう。他にも下手だがノアの似顔絵も書いてあった。なんとなくノアの顔がほころんだ気がした。ノアをリアムに頼み仕事を再開するためにライナスと執務室に向かった。
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